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「加計学園」理事長の記者会見 不信感しか残らなかった原因とは? ~臨床心理士が分析する~- 岡村 美奈

さすが学校法人「加計学園」を西日本有数の学校法人グループへと成長させた人物と皮肉のひとつも言いたくなる。問題が報じられて以降、自分が初めて公の場に姿を現すには、今が絶好のタイミングだと読んだのだ。

【写真】2時間前に開催が通告され、地元メディアのみ取材が認められた記者会見

取材できたのは地元メディアのみ


会見に臨んだ加計孝太郎理事長 ©共同通信社

理事長である加計孝太郎氏が緊急会見を開いたのは、岡山にある加計学園本部。6月18日の朝に起きた大阪の地震にメディアはどこもかかりきり。せっかく大手メディアが駆けつけても、取材できたのは地元のメディアのみ。その会見も「校務があるから」と25分で切り上げられた。

内容はというと、愛媛県や今治市に虚偽の報告をした件について、当該職員と理事長について処分が決まったという報告。担当者が虚偽報告をしたと学園側が発表したのは5月26日。それから数週間経っているのに、今になってわざわざ緊急理事会を開き、緊急会見を行った。

どんなことでも、自分にプラスになるように利用する。このタイミングの緊急会見に誰もが、保身のためというより、これで問題に区切りをつけ、次へと進めるための策士的な計算を感じたのではないだろうか。それだけに、会見中の態度を見ても、真実を話そうという意識が感じられなかったのだ。

書面をもつ手が震えている

冒頭、やや緊張した面持ちで用意してきた書面を淡々と読み上げた加計理事長。続けて一緒に会見に立った岡山理科大学学長の柳澤康信学長が、獣医学部の今後の役割について書面を読み上げた。

人前で話すことなど馴れていると思うのだが、書面をもつ手が震えている。なぜそこまで学長が緊張しているのだろうと、少々訝しくなる。

もとより、これまでの経過から、加計理事長に対しては疑念や不信感を持っていた。そこにこのタイミングでの会見だ。いいイメージを持てるはずもない。

なのに質疑応答が始まると、加計理事長は記者に向って、やや斜に構えて顎を上げて立っていた。この姿勢は、相手を見下しているような印象を与える。理事長の立ち方の癖かもしれないが、いかにも尊大な権力者のイメージが強くなった。

質疑応答が始まると、加計理事長の顔には汗が吹き出し、瞬きが増えていく。見ている側は、そこに欺瞞のサインが表れていると感じるだろう。

嫌な質問には、答えながらもすっと視線を質問者から外していく。答える度に身体が大きく前後左右に揺れるのも、不安や動揺と捉えられやすい。

動揺すればそれだけ揺れは大きくなるが、人は嘘をつこうとする時、ついている時は、身体の動きは逆に小さく、少なくなると言われている。「事務局長が勝手にやったという認識か」と聞かれ、「はい、そうです」と答えた時は、逆に身体がほとんど揺れなかった。

その後も問題の核心に触れるような質問に答えている時は、身体の揺れが小さくなる。動きが多くなる方に目が向きがちだが、見ている側はそんな動きの変化を敏感に感じ取り、はっきりはわからないが何かがおかしいと思うものだ。

人は真実とは違うことを言おうとすると……

話し方や言葉使いからも、真実を話しているようには感じられない。

愛媛県への誤った情報について「担当者に伝えるよう何ら指示があったのか」と聞かれた加計理事長は、目を瞬かせると「担当者が」と言い、そのまま「あ~う~」と言い淀み、「そのような誤解を生むようなことを言ったことに」とさらに間を空けながら説明した。

このタイミングで記者会見を開いた理由について聞かれた時も同様だった。

人は真実とは違うことを言おうとすると、頭の中にある真実を抑制する必要がある。すると言い淀んだり、言い間違ったり、話の途中に不自然な間が空いたりする傾向が多くなるのだ。

「総理に対して獣医学部の話はしなかったか」など、答えたくない質問には、「はい」と短く返答をした加計理事長。真実を話そうとする人は、それを証明しようと詳しく細かく説明をしようとするものだ。同じ質問を繰り返されれば、前とは違う情報をそこに少しでも加えていこうとする。

だがそうでなければ、同じ質問をしても、短く答えるか、同じことを繰り返すだけだ。「覚えていません」「ありません」「思いませんでした」など、短く同じ答えを繰り返している様子は、下手に説明して辻褄が合わないことを言わないようにしようとしか、聞こえない。

「獣医学部新設も加計ありきだったのでは」と問われると、淡々とした表情で国家戦略特区へと話をすり替えていく。

自分たちを、虚偽の報告を行って国会を停滞させた側ではなく、「申請者側」と答えた時も、自分たちを弱い立場へ方向づけ、そうせざるを得なかった的なイメージへとすり替えてしまう。この論法も、真実を話していないのではと思わせる要因だ。

国会を停滞させたことについて「申し訳ない」と言いながら、表情は変わらない。この会見中、何度も申し訳ないという言葉を口にしたが、声の調子も変わらず抑揚がないため、その発言に感情がこもっていないことがわかる。だから言葉に合わせて、きっちり頭を下げることがない。

冒頭、頭を下げた時も表情を変えることもなく、口先だけの実にあっさりしたもの。頭を下げながら記者たちを見続け、その反応を伺っている形だけの謝罪でしかない。

左目だけ一瞬、微妙に引きつったように瞬き

だが、そんな加計理事長の表情がひときわ強張ったのは、「安倍首相に獣医学部の話をしたのはいつ?」と聞かれた時だ。目の表情が暗くなり、口元にも力が入る。さらに突っ込まれて、仲の良さを質問されると、左目だけ一瞬、微妙に引きつったように瞬きをした。

疑われていると感じたのか、何度も視線を反らす。安倍首相との関係については、やはり気を使っているのだ。

それなのに、部下が首相の名前を使って虚偽報告をしても「虚偽発言と言えば虚偽の発言なんだろうが、前に進めるために」と悪びれる様子もなく平然と答えていた。やったもの勝ちの不遜さとでもいおうか、巧妙な経営者のイメージがついてくる。

安倍首相の「(虚偽報告をした加計学園に)抗議する必要がない」という参院予算委員会での答弁を聞いていても、虚偽報告をしたという加計学園の事務局長が、今治市に1人で謝罪に行き、「つい言った」「言ったんだと思う」とへらへらしながら説明していたのを見ても、安倍首相と加計理事長、二人の間に何もなかったと言われて、それを鵜呑みにするのは難しい。

会見を早く終わらせようと、最後にはいい加減な生返事を繰り返し、「もう、もう」と何度も司会の方を向いていた加計理事長。虚偽報告について「指示はしていない」と言うが、タイミングを計ったかのように記者会見した経営者が、首相の名前を利用しない訳がないと思うのは、果たして私だけだろうか。

(岡村 美奈)

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