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薬とグレープフルーツジュースの話

doramao

2012年01月27日 15:48

日常口にする食品の中には薬と相互作用をおこし、体にとって良くない影響をもたらすことがあります。今回はグレープフルーツジュースとお薬についてどらねこの思っている事を書いてみようと思います。

■ワーファリンと納豆

薬と食品の相互作用の話で有名なのはワーファリンではないでしょうか。ワーファリン*1と謂う薬を飲んでいる人は納豆やいわゆる健康食品のクロレラを食べてはいけないと服薬指導がなされます。

このワーファリンと納豆の他にも薬を飲むときに注意しなければならない食品がいくつかあります。今回はその中からグレープフルーツ類と相互作用をおこす薬について気になることや思いつくことなどを書いてみようと思います。

■グレープフルーツと薬

グレープフルーツに近い仲間の柑橘類にはフラノクマリン*2と謂う成分が含まれているのですが、この成分が薬物を代謝する酵素CYP3A4の働きを阻害することで、悪影響をおこすと考えられております。おおまかに謂うと、納豆とワーファリンの場合は薬の作用を弱めてしまう相互作用でしたが、グレープフルーツに含まれるフラノクマリンは薬物代謝を阻害することで薬の効果を強めてしまう事が心配されます。

この薬物代謝酵素により代謝される薬はいくつもありますので、納豆とワーファリンの場合と違い、グレープフルーツの場合はいろいろな薬への影響も考えなければなりません。ここが気をつけなければならないところかも知れません。

■グレープフルーツジュース

とは謂え、フラノクマリンが含まれている食品だからとそれだけで、相互作用をおこす薬と一緒に食べてはダメだとなるわけではありません。含まれている量が代謝に影響を与える量以上に入っていれば問題になりますが、それよりも明らかに少ない量が含まれていたとしたらさほど気にする必要はないはずです。この量の概念はとても大事なところです。薬との相互作用は含まれている量や食べる量、食べ方などによっても変わってくることでしょう。例えば、グレープフルーツを食べるのと、グレープフルーツをジュースにして薬と一緒に飲む場合を比べてみたらどうでしょう?フラノクマリンの体内に入る量や消化吸収のされかたに違いがでてもおかしくありません。

実際に薬の代謝に与える影響が違うことなどから、薬の添付文書にはグレープフルーツを禁止するものではなく、グレープフルーツジュースを併用しないように注意がかかれていたりします。どらねこは高齢者の食事などについて関わる事が多いのですが、「薬を飲んでいるので病院でグレープフルーツを食べないようにいわれた」と謂う方とお話しする機会がたまにあります。中には本当はグレープフルーツが好きなのに我慢している方もいるようです。そんな場合は状況をよく確かめてから大丈夫そうなら、グレープフルーツジュースはやめてほしいけど、グレープフルーツを食べるのを我慢しなくても良いですよ、とアドバイスをしたりします*3。もちろん、食べ過ぎないでねとは謂いますけど。

■カルシウム拮抗剤の添付文書を比較してみる

前述のように酵素CYP3A4によって代謝される薬は種類が多く、それらはグレープフルーツジュースとの食べ合わせが心配されております。しかし、同じように代謝される薬であっても、薬の種類や投与方法によって現れる影響も様々であるようです。添付文書ではレープフルーツジュースとの服用について書かれておりますが、薬によりニュアンスが異なりおもしろいなぁと思いました。幾つか紹介してみます。まずはカルシウム拮抗剤*4から。*5

アムロジピン錠「サワイ」 2010年8月改訂(第6版)より

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等:グレープフルーツジュース

臨床症状・措置方法:本剤の降圧作用が増強されるおそれがある。同時服用しないように注意すること。

同時服用に注意する旨が書かれています。


アダラートCR錠 2011年6月改訂(第13版)より

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等:グレープフルーツジュース

臨床症状・措置方法:本剤の血中濃度が上昇し、作用が増強されることがある。患者の状態を注意深く観察し、過度の血圧低下等の症状が認められた場合、本剤を減量するなど適切な処置を行う。またグレープフルーツジュースとの同時服用をしないように注意する。

いろいろと丁寧に書かれておりました。アムロジピンよりも注意が必要なのかもしれません。


ニカルジピン塩酸塩錠 2011年5月改訂より

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等:グレープフルーツジュース

臨床症状・措置方法:本剤の降圧作用が増強されるおそれがある。

ところが、同じ成分を含む薬でも注射液の添付文書にはグレープフルーツジュースの記載はみられません。経口摂取時の小腸CYP3A4による代謝が関連しているから静脈からの投与*6では影響がないからでしょう。また同じカルシウム拮抗剤でもベンゾチアゼピン系の塩酸ジルチアゼム錠の添付文書にはグレープフルーツジュースの記載はありませんでした。

■他の薬の添付文書も見てみる

グレープフルーツジュースとの相互作用が心配されるのは降圧薬だけではありません。他の用途の薬でも気をつけなければならないものがあるようです。


オーラップ錠 2011年3月改訂(第13版)より

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等:グレープフルーツジュース

臨床症状・措置方法:QT延長、心室性不整脈等の重篤な副作用を起こすおそれがあるので、グレープフルーツジュースとの同時服用をしないように注意する。

統合失調症に用いられる薬ですが、なかなか怖い説明ですね。


アトルバスタチン錠「KN」 2011年11月改訂(第2版)より

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等:グレープフルーツジュース

臨床症状・措置方法:グレープフルーツジュース1.2L/日との併用により、本剤のAUC 0→72hrが約2.5倍に上昇したとの報告がある。

高コレステロール血症に用いられる薬です。1.2リットルのグレープフルーツジュースではそうかもしれないけれど、一般に飲むような量ではどうなんでしょうね?どらねこはちょっと無理。


シクロスポリンカプセル「マイラン」 2011年12月改訂(第19版)より

併用注意(併用に注意すること)

薬剤名等:グレープフルーツジュース

臨床症状・措置方法:本剤の血中濃度が上昇することがあるので、本剤服用時は飲食を避けることが望ましい

これは臓器移植後の免疫反応を抑制する薬です。

■何が大事なんだろう

いろいろと難しい事(自分にとって)を述べてきましたが、添付文書を見て思ったのはどれも強い言葉で書かれていないことでしょうか。禁忌ではなくて、注意なんですね。もちろん、注意が必要なものについては避ける事が賢明であるのは間違いありません。しかしながら、いろいろな病気を持ち治療をしている人では食べられる食品も少なくなりますし、病院暮らしでは選択肢も制限されてしまいます。そんな状況で更に禁止までしなくてもよい食品までもしかしたらと大事をとって禁止してしまうと謂うのは、どらねこ個人の意見ですがやり過ぎなような気がするんですね。指示が行き届かない事を懸念して一律の対応だとしたら、このあたりについては栄養士がもう少し働きかける事で解決することもあるんじゃないかな、なんて思ったりもするのです。逆に、グレープフルーツジュースがダメとしか書いていないのだから、スウィーティジュースなら飲んでOKだとスルーするようなのは論外ですけどね。まぁ、グレープフルーツジュース薬を飲まないで下さいは広くいっちゃっても良いような気がするけどね。

一つの問題にとらわれ過ぎるのではなく、相手がなるべく本人らしい生活で、良い状態を維持できるようなサービスを提供することが大事なんじゃないかなと、どらねこは思うのでした。




*1:ワルファリン:肝臓におけるビタミンK 依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第?、第?、第?因子)の生合成を抑制することで血液凝固作用を低下させる薬。ビタミンK由来の血液凝固因子の生成を抑える薬を飲んでいる状況で大量のビタミンKを体内に入れる事で薬の作用が低下してしまう為、ビタミンKが豊富な食品や体内でビタミンKを大量に合成する細菌を取り入れる事は望ましくない。

*2:グレープフルーツではBergamottinがこの作用を持つGirennavar B, Poulose SM, Jayaprakasha GK, Bhat NG, Patil BS.Furocoumarins from grapefruit juice and their effect on human CYP 3A4 and CYP 1B1 isoenzymes.Bioorg Med Chem. 2006 Apr 15;14(8):2606-12. Epub 2005 Dec 9ようだ。富良野クマリンだったらなんかかわいい

*3:余談なのでこちらに書くけど、薬の処方が止まったあとも禁止食だけが残ったり、もう食べて大丈夫だよと謂う話をされないままで、本人は食べると体に悪いと恐怖心があり手をつけなくなるなんて事もみられたりします。ワーファリンだと緑黄色野菜も食べちゃダメと理解してしまった高齢者も居ます。それってどうなの?このあたりの栄養士の介入が今後今以上に求められるんじゃないかな?

*4:カルシウムチャネルを遮断し、カルシウムイオンの血管平滑筋や心筋の細胞への流入抑制により降圧効果を得る薬剤。なので脳への血流低下が懸念される病気の方にも処方されるみたい。

*5:引用文中の強調等の表現はどらねこによる

*6:ワソランの添付文書でも同様でした

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