赤木智弘の眼光紙背:第209回
Twitter上で「3月11日に行われる反原発デモ」が話題になっている。
話題の発端となったのは、社民党党首である福島みずほによる、3月11日の反原発デモに参加するためのバスツアーを紹介したツイートだ。(*1)
これに対して「反原発派が、被災地に乗り込んで騒ぎ立てようとしている!」と反発した人たちが、「3月11日は追悼を行う日だ!反原発デモをするな!」と主張し、同じく3月11日にデモを計画している人たちに対して「3月11日に行う必要があるのか」などと批判をしているようだ。
私はこれまでも原発事故の問題に何度か触れているが、ハッキリ言って反原発の立場には全く賛同できない。
徐々に自然エネルギー重視の発電体制に切り替えて行くべきだという主張であれば、私もそのとおりだと考える。
しかし、反原発派の人たちの中には、説明するのも馬鹿馬鹿しいような低俗なデマをふれ回る人たちも少なくない。特に被災地の瓦礫に対して、放射性物質で汚染されているという誤った認識を振りかざし、瓦礫処理のために受け入れをしようとする人たちを罵倒し、さも自分たちは正しいことをしているかのような態度の連中(*2)は、一度ぶん殴ってやりたいくらいに腹立たしい。この文章を書くのですら、色々と悪口を書いて、何度か消して、見苦しくない程度の文面を何とか保っているのだ。なんであんな低俗な連中のために、被災地が苦しめられ続けなければならないのか。
苛立ちはさておき、ここまで反原発派の自分勝手な活動に腹が立っている私ではあるが、今回の3月11日のデモに対する批判については、全くといっていいほど賛同できない。
3月11日は、確かに多くの人たちが地震と津波でお亡くなりになった日ではあるが、同時に福島第一原発の事故が発生した日である。中には「水素爆発が起きたのは12日なのだから12日にしろ」と主張する人もいるが、事故の直接原因は地震であって、水素爆発はその結果に過ぎない。
「震災の死者を政治運動の糧にするなんてとんでもない」という意見もあるようだが、それは批判ではなく、恥ずべき人格攻撃であろう。だいいち「3月11日にデモをするな!」という批判も、政治運動に他ならない。「私は3月11日は静かに追悼する」であれば政治的ではないが、「3月11日は、みんなが静かに黙祷をする日にするべきだ」と広く賛同を求めたり、「3月11日は追悼だけをするべきだ、デモをするな!」と、他人の活動にクチを出すことは、れっきとした政治運動である。政治運動をすることを批判する政治運動など、論理矛盾もいいところである。
東日本大震災は、あくまでも地震が起こり、それによって津波と原発事故を始めとする様々な問題が発生したという、一連の複合災害である。これを「地震と津波のみ」で理解することも「原発事故のみ」で理解するのも、十分とは言えない。
現在は「東日本大震災」と呼ばれているが、震災直後、この震災は「東北地方太平洋沖地震」と呼ばれていた。その結果、茨城や千葉といった関東での被災、また各所で起きた液状化現象や地盤変動、そして翌日に起きた長野での深度6強の地震といった、東北以外での被害が軽視されたり、忘れられがちになることもあり、範囲を広げて「東日本大震災」とした経緯がある。
津波に巻き込まれた人たちも被災者なら、液状化に悩まされる人も被災者、地震を経験し、少し仕事が減っただけの私だって被災者である。更には関西や九州でも、取引先の会社が被災地にあって、経済的に損失を負った会社や人もいるだろう。東日本大震災はそれだけ多くの人の利害が関わっているのであり、単に多くの方が亡くなったという話ではないはずだ。
「3月11日は、地震と津波で死んだ人だけの日だ」とする、反・反原発デモ側の主張は、そうした「死」以外の数多くの人たちの被災や利害を無視するものであると私には考えられる。これは、とてもではないが許容できるものではない。
私としては、3月11日は、あらためてこの震災が日本に残したあらゆる爪痕をたどる日であればいいなと思う。黙祷は地震発生時や、津波の発生時刻にとどめ、各自が受けた個人的な影響を、ネットなどで表明してほしいと考えている。そのことによって、これまで認識されていなかった問題が浮かび上がることもあるだろう。
そうして、いろんな問題を洗い出すことが、社会を少しでもより良くしていくことに繋がることは言うまでもない。3月11日は、お亡くなりになった人だけではなく、これから生きていく私達にとっても重要な日なのだ。
*1:
脱原発をめざす女たちの会では3月11日の福島集会バスツアーを企画しています。(Twitter/福島みずほ)
*2:
震災がれき受け入れ、黒岩知事の協力要請に「帰れ」コールも/横須賀(神奈川新聞社)
プロフィール
赤木智弘(あかぎ・ともひろ)
1975年生まれ。自身のウェブサイト「
深夜のシマネコ」や週刊誌等で、フリーター・ニート政策を始めとする社会問題に関して積極的な発言を行っている。著書に「
若者を見殺しにする国 (朝日文庫)」など。
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