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トランプ大統領VS.金正恩委員長、なんとなく会って握手をするの巻 ~世界政治のバラエティーショー化がどんどん進んでいる話~ - 山本 一郎

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 世界が固唾をのんで見守ったドナルド・トランプ米大統領と、北朝鮮の金正恩委員長、なんかこう、東西対決というか、変な父と変わった感じの息子というか、凸凹コンビというか、不思議な取り合わせであります。それに先んじて、4月27日に韓国・文在寅大統領と手を繋いでキャッキャウフフしてた対談と並んで、緊張感の滾る熱湯のうえに敷いた氷の板の上で楽しくダンスしているかのような心象風景に繋がるものがあります。

トランプさんはあんまり細かいことに興味ないんだと思うんですよ

 米朝の共同声明に両国のサインこそすれ、具体的な中身はゼロで、強調していたCVID(アメリカが6カ国協議で言ってた完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)が入らず、非核化のスケジュールも、北朝鮮・金正恩体制の安全の保証についての具体的措置もないという。なんかでっかいノボリに「朝鮮半島の非核化へ努力する」ってだけの内容で、お前ら本当にそれでいいのかと部外者として心配になります。これから具体的な交渉があったり、何か付帯文書でもあるのかと期待せざるを得ないんですが、逆に言えば「まあ、トランプさんと金正恩さんだからなあ……」って感じです。

 たぶん、トランプさんはあんまり細かいことに興味ないんだと思うんですよ。先日、G7サミットで身を乗り出して説得するドイツのメルケル首相にふんぞり返って腕組みするトランプ大統領という構図の報道写真が乱舞しましたが、どいつもこいつもキャラが濃い。アベンジャーズかよ。めっちゃ力を入れて握手をするトランプ大統領に負けることなく全力で握手し返したフランスのマクロン大統領とか。基本的な構図は、アメリカと欧州のあいだの経済的、政治的な緊張関係の悪化でFacebook以下多くのアメリカ企業の個人データの取り扱いを巡る争いが話題になり、トランプ大統領は「アメリカファースト」の姿勢を崩さないので、むしろアメリカの同盟国や友好国のほうが、中国・習近平さんやロシア・プーチンさんといったキャラの濃い独裁者と仲が良いように見えてしまうわけであります。

 そのアメリカと欧州の対立において仲介者的な役割に、なぜかなっている我らがモリカケ安倍晋三総理。重要な役割を占めているはずの安倍ちゃんが、日本人的な価値観からすれば「国際社会では軽い存在にされている」ように見えます。トランプさんが北朝鮮に囚われたアメリカ人をあっさり開放させたのを見て、やっぱり核ミサイルをたくさん配備している奴が力でものを言わせるのが国際政治なんだ、核軍備できていない日本には拉致被害者が帰ってこないんだって思っちゃう瞬間です。一方、政治家としてのキャリアの乏しいトランプ大統領からは絶大な信頼を得て「シンゾウの意見が聞きたい。あなたの意見なら従う」とまで言われてしまう優れたセールスマンぶりを発揮しておるわけです。細かいことが嫌いな不動産屋が懇意の不動産鑑定士に「お前、細々してるとこまとめといて」って頼むような雰囲気で。

あたかも強盗の棟梁が改心でもしたかのような錯覚

 もうね、国際政治がバラエティー番組みたいな状況になってるんじゃないかと思うぐらい、指導者が極彩色のようなどぎついキャラばっかりで、目がチカチカするんです。いま起きていることが面白すぎて、そもそもその前いろんなこと起きていたのすっかり忘れるじゃないですか。まるで『24』とかパニック映画観てるような。目の前が危機過ぎて、それまでいっぱい人死んでたの忘れちゃう的な。

 だって、つい去年ですよ、金正男さんがマレーシアで暗殺されたの。その遠因となった、金正恩さんの叔父である張成沢さんが、国家反逆だといって圧倒的な火力の対空砲で銃殺されたのが5年前。いままで何度北朝鮮がアメリカほかと合意した、その内容が反故にされてきたことか。もちろん、日本人の価値観や社会常識で北朝鮮の独裁者・金王朝の行動の是非善悪を判断するほどナンセンスなことはありません。でも、スイスで教育を受けてきた孤独な若き独裁者が為してきたことは日本のみならず国際社会からして理解しがたく、その理解しがたい北朝鮮がミサイルの発射実験をし、核実験を繰り返してきた、それが我が日本の隣国であり、日本人を多数拉致し、いまだ返還してこなかったわけですね。

 ところが、実際にいまの日本のメディアで起きていることは、小太りのチャーミングな北朝鮮の指導者というイメージで繰り返し報道しているようにも見えます。いや、彼は独裁者ですから。それも、かなりヤバいことをやってきた。彼の本来の性格やいま考えていることは分かりませんが、ギリギリまで緊張感を高めてからパッと開放外交路線に転換したことで、あたかも強盗の棟梁が改心でもしたかのような錯覚に陥って悪行の数々を容認してしまいかねない、実に見事なトリックにハマっているかのようです。

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