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90年代前半の空気感そのものだった森田童子

2018-06-09 17.29.45

森田童子さんがこの4月に亡くなっていたことが明らかになった。驚いた。

なんといっても、私のような中年にとっては1993年1月から放送された『高校教師』の「主題歌の人」だった。同ドラマは、高校教師と教え子の禁断の愛、近親相姦など、衝撃的な内容が話題となっていたが、森田童子さんの「僕たちの失敗」がこれまた絶妙にフィットしており。

1976年発売のシングルに光があたり、採用されたわけだが。まるで90年代前半、その時代のリアルタイムの曲のようだった。まさに、私たちのために存在するかのような詩の世界観、空気感だった。思わず、シングルだけでなく、当時、リリースされたアルバム(ベスト盤を中心に聴いたのだが)も入手したが、ますますその想いを強くした。

何度も講演や著書で触れていることなのだけど。1993年の3月。大学に合格し、春休みに母と一緒に上京しアパートを探していたときに、サングラスにパンチパーマといういかにもな不動産屋さんは営業車の中でこう言った。「お母さん、息子さんが一橋大学に入るだなんて、レールに乗ったようなもんだね」と。志望校に合格した喜び、憧れの東京での一人暮らしが始まることなどに胸を膨らませていたことなどから、照れつつもワクワクしたが、「そんなわけないだろ」と胸の中では思っていた。実際、1年後には「就職氷河期」が流行語大賞の部門賞を受賞した(言葉自体は1992年に生まれていた)。

よく「震災とオウムの年」である1995年が、何かの始まりや終わりと捉えられるのだけど、その前の93年、94年は大いなる模索の年であり。55年体制の崩壊など、政治においても変化があり。一方、渋谷系が話題になり始めたのもこの頃であり。なんというか、どこにもいられないような、でも何かが始まるような、妙な感じがあった。

森田童子の素朴な歌い方と、優しく語りかけるようで、でも本質をついた歌詞はこの時代の空気感と極めて合っており。ダビングしたテープを何度も聴き返したのを覚えている。思わず、歌詞に登場する高橋和巳の『孤立無援の思想』を書店で探して、読んだり。

「僕たちの失敗」や「たとえば僕が死んだら」を久々に聴きたくなった。きっと、2018年の空気にもますます合っていることだろう。社会は模索の連続なのだから。

合掌。

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