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東大・京大生の"総合商社離れ"が進む理由

東大生、京大生の就職人気企業が変化している。新卒向けのリクルーティングサイト「外資就活ドットコム」が、この3年の変化を調べたところ、外資系投資銀行やコンサルティングファームの人気が高まっている一方で、総合商社離れが進み、直近ではトップ15社に三菱商事しか残っていないことがわかった。なにが変化の理由なのか――。

ハウテレビジョン代表の音成洋介です。われわれは2010年より新卒向けのリクルーティングサイト「外資就活ドットコム」を運営しています。現在は東京大学・一橋大学・慶應義塾大学の就職希望者の大学生の50%以上、京都大学の同じく40%以上の方々にご利用いただいています。今回は、東大生・京大生に焦点を絞って、ここ数年の新たな傾向についてお伝えできればと思います。

最上位校の学生は企業のマーケティング活動の多寡や一般的な知名度より、自らの能力を存分に発揮するため、国や企業の将来性や産業構造、自らの市場価値向上をシビアに見据えて、戦略的にキャリアを選ぶ特徴があります。この層にフォーカスすることで、若手優秀層の動向変化を明らかにできればと考え、今回は東大・京大の2校を取り上げます。

この時期、2020年卒業の大学3年生・大学院1年生は、早くも就職活動の前哨戦とも言える「サマーインターン」の選考に向けて準備を始めており、通年で登録可能な当サイトにも多くのユーザーが集まってきます。実は外資就活ドットコムでは、まだ就職活動の情報収集が十分でない20卒学生にも、イメージで志望企業を選んでいただいています。東大生・京大生に絞ってその結果を3年分比較してみたところ、面白い変遷が見えてきました。

■外資系コンサル人気は盤石。外銀はじわじわ復活?

第一に挙げられる特徴は、マッキンゼーやボストン コンサルティング グループ(BCG)、ベイン・アンド・カンパニーといった外資系戦略コンサルティングファームが、安定してランキングトップを維持していることです。BCGがゴールドマンに競り負け、ベインが1年前からトップ10内に入るなど多少の変動はありますが、東大生・京大生が目指す定番として盤石になったといっても過言ではありません。

では、日系コンサルティングファームはどうかといえば、最も学生から支持の高い野村総合研究所はじわじわとランキングを落としており、昨年圏内に入った三菱総合研究所は20年卒調査ではランク外に落ちてしまいました。

外資系投資銀行は年々順位を上げています。ゴールドマン・サックスは3位から2位へ、モルガン・スタンレーは2年前からランクを4つ上げて第5位。この躍進はニューヨーク証券取引所にて、モルガン・スタンレーがゴールドマンの時価総額を上回ったところにも起因するかもしれません。

JPモルガンは1年前からランクインして、今回は9位に入りました。国内リーグテーブル(投資銀行が取り扱った債券発行やM&Aの仲介などの案件数・案件金額ランキング)上はゴールドマン、モルスタ、野村に少し水を空けられていますが、世界ではナンバー1の売上を誇り、学生からの評価も高くなっています。また日系投資銀行として気を吐く野村証券は本年からトップ15入りを果たしました。

コンサルティング、投資銀行、いずれもタフな仕事で知られる両業界ですが、こういったプロフェッショナルファームに勤める若手社員から話を聞くと、ミスマッチは減りつつある印象です。また終身雇用ではない以上、「ネクストステップ」を視野に入れている大学生が多く、投資ファンド、国際機関、事業会社の経営企画、総合商社、ベンチャー、起業など、転職先の多様さも魅力的にうつるのかもしれません。

■三井物産・伊藤忠商事は圏外へ

一方、2年前にはトップ15位圏内に3社入っていた総合商社ですが、20年卒学生では第8位に三菱商事を残すだけとなりました。三菱商事も、2年前の4位から4つランクを落としています。三井物産と伊藤忠商事は1年前(19卒)から圏外となっています。数年前までは早期に内定を出す外資系投資銀行やコンサルティングファームを蹴って、総合商社にいく東大生・京大生を数多く見かけましたので、隔世の感があります。

そもそも2010年代前半ではサブプライムローン危機の余韻が残っており、外資系投資銀行の採用パワーも危機前に比べて、だいぶ冷え込んでいました。投資銀行についてネガティブなニュースも多い中、「投資事業をやるなら総合商社も面白いのではないか」と気づくようになり、金融機関を目指す学生が続々と総合商社志望に切り替えていきました。

もう1点、総合商社に有利に働いていたのが、選考の長期化です。長期化により、外資系企業から内々定を獲得した学生に対し、ある意味「後出しジャンケン」的にオファーをすることができます。当時、多くの日系企業は選考開始時期を遵守したため、外資内定者を後から囲い込んで、自社アピールをするのも容易でした。

ところが昨今の株価の変調はありながらも、米国景気が堅調に推移し、投資銀行業界が改めて活況を呈していること。さらに、ほかの日系大企業も選考を前倒しにすすめ、紳士協定が形骸化していることなどから、相対的に総合商社のアドバンテージがなくなりつつあるようです。

また「総合商社で働くとはどういうことか」といった情報が拡がり、学生の業界に対する理解がより進んだ結果、選別気質が強くなったことも影響しているのでしょう。

■ついに姿を消した国家公務員・広告代理店

東大・京大の文系学生は、これまで国家公務員を目指す傾向が強く、根強い人気を誇っていました。特に外資就活ドットコムにおいては、グローバルで働く環境を想定するため外務省・経産省が長らく志望上位にきており、外資系企業との併願も多く見られたのですが、20年卒では姿を消してしまっています。これはひとえに直近で起こった財務省など官庁を巡る不祥事とその一連のメディア報道の影響が強いものと考えます。

広告代理店も不祥事とその報道に強く影響を受けた業界の1つです。ちょうど1年前の2017年5月に厚生労働省が法人としての電通を、長時間労働の管理監督不備を理由に書類送検しました。長時間労働で自殺した新卒社員のニュースは衝撃的で、1年前のランキングでは競合である博報堂が12位となった一方、電通は圏外でした。そして本年は博報堂もランキングから姿を消しました。そうしたニュースの余韻がまだ残っているのではないでしょうか。

またコンサルティングファームが広告事業を展開し、高単価BtoB事業の垣根がなくなりつつあるところも、人気が落ち込みつつある要因といえるかもしれません。IBMやPwC、アクセンチュアは「デジタルサービス」といった名称でグローバルに広告事業を展開し、ブランドエージェンシーの買収も進めています。

電通もコンサルティング事業を強化しつつありますが、まだ旧来の代理店イメージを払拭できていません。今後この高単価BtoB事業のマーケットがどう変化していくのか。東大生・京大生が敏感に反応するところだと思います。

■プロフェッショナルファームへの流れは続きそう

ここまで早期にキャリアを考え始める東大生・京大生の就職活動について、志望企業の動向変化を見てきました。最上位校の学生では、投資銀行やコンサルティングファームなどのプロフェッショナルファームへの就職志望度がここ数年でさらに強まっており、文系職でも専門スキルを求める流れになりつつあります。

また外資系企業の働き方は高いプロフェッショナリズムにあって、年功序列・ジェネラリストという日系企業の人材育成とは対極であり、そこも魅力に映っているようです。いずれにせよ私はこの傾向は不可逆だと考えています。転職市場の流動性の上昇やプロフェッショナルファームの採用増が続けば、この傾向はさらに強まるでしょう。

産業の流れを俯瞰してみると、日本を代表する企業の多くが、国内需要の減少や人口減少社会を見据えて、デジタル化とグローバルM&Aにリソースを大きくシフトしています。この2点を加速化させてくれるノウハウを保有している、投資銀行・コンサルティングファームの必要性は年々じわじわと高まりつつあると考えます。

たかだか2年でありますが官公庁も含め、トップ15に占める日系組織が6から3に半減しており、大学生の印象は年々変化していることがわかりました。今後登録してくる学生がどういった志向を示していくのか、今後も追い続けていきたいと思います。

(ハウテレビジョン代表取締役社長 音成 洋介 写真=iStock.com)

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