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ついに法律用語となった「霊感」商法。「霊感商法」を規制する消費者契約法改正案が成立

2018年6月8日(金)は、霊感商法の救済に長年携わる者として、忘れられない日となった。

実は、日本の法律に、史上初めて、「霊感」という文字が入り、「霊感」がついに法律用語となった。

6月8日の参議院で、前回一致で可決され成立した消費者契約法の改正案がそれで、消費者契約法4条3項に追加する形で、

「当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。」(以降も含めて、下線はすべて紀藤)

という条文が加えられた。

マスコミでは、今回の消費者契約法の改正で、霊感商法の問題はほとんど報じられず、もっぱら「デート商法契約の取り消しが可能に」、という文脈で大きく報道されていることもあり、今回、僕の方で、「霊感」という文字が加えられた経過について、簡単ではあるが、解説を加えることにした。

参考※デート商法の契約、取り消し可に 改正消費者契約法成立=朝日新聞 2018年6月9日14時16分

従来の消費者契約法4条3項は、

「消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。」としつつも、次の2つの類型以外の困惑取り消しを認めてこなかった。

「一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。

二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。」

つまり「1 出て行ってくれない業者」、「2 消費者を軟禁状態にする業者」という乱暴な業者に対する規制である。


今回これに、当初の政府提案の法律案では、消費者契約法4条3項に、次の4類型が加えられることになった。

「同条第3項に次の四号を加える。

三 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。

 イ 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項

 ロ 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項

四 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。

五 当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約を締結したならば負うこととなる義務の内容の全部又は一部を実施し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること。

六 前号に掲げるもののほか、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該事業者が調査、情報の提供、物品の調達その他の当該消費者契約の締結を目指した事業活動を実施した場合において、当該事業活動が当該消費者からの特別の求めに応じたものであったことその他の取引上の社会通念に照らして正当な理由がある場合でないのに、当該事業活動が当該消費者のために特に実施したものである旨及び当該事業活動の実施により生じた損失の補償を請求する旨を告げること。」

以上の条文は、難しい条文なので、本来は解説が必要だが、この稿は、「霊感」に対する解説であることもあり、政府提案として、所轄官庁の消費者庁が、そのHPに、解説図(=PDF)を公開しているので、こちらを見て頂きたいと思う。

ところが、この政府提案の「社会生活上の経験が乏しいことから」という文言が、「それでは高齢者は該当しない可能性がある」ということが問題となり、僕が所属している日本弁護士連合会や多くの消費者団体では削除を求める意見が多数提出される事態となり、大きな批判を受けることになった。

→※「消費者契約法の一部を改正する法律案の骨子」についての会長声明=2018年(平成30年)2月22日 日本弁護士連合会 会長 中本 和洋

この指摘を受けて、国会の質疑の中で、高齢者対策の一貫として、衆議院において議案の修正がなされ、「次のように修正する。」とし、「第四条第三項に四号を加える改正規定中「四号」を「六号」に改め、第六号を第八号とし、第五号を第七号とし、第四号の次に次の二号を加える」として、次の二つの類型が加えられることになった。

この修正により、日本の法律史上初めて、「霊感」という言葉が、ついに、法律用語になったのである。

「五 当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。」

「六 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。」

[参考]

衆議院HPより

提出回次:第196回議案
種類:閣法 31号
議案名:消費者契約法の一部を改正する法律案

議案審議経過

提出時法律案

修正案1:第196回提出(可決)

提案理由:「消費者契約に関する消費者と事業者との間の交渉力等の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図るため、事業者の行為により消費者が困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる類型として、社会生活上の経験が乏しい消費者の不安をあおり、契約の目的となるものがその願望の実現に必要である旨を告げること等を追加する等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」(下線は紀藤)

参議院HPより

Reikan20180608

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