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アルゴリズムとの会話で心は癒されますか?現時点で、AIに介護は不可能です。 - 「賢人論。」第64回竹内薫氏(前編)

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科学技術は「人生100年時代」の到来をもたらし、人口知能(AI)の技術は将棋や囲碁などで一流のプロを打ち負かしている。サイエンス作家の竹内薫氏に、そんな現代の世はどのように見えているのだろうか?寿命を延ばす研究をはじめ、AIの可能性などについてその考えを語ってもらった。

取材・文/ボブ内藤 撮影/公家勇人

がんや糖尿病のリスクを減らすためには、「身体機能」を犠牲にしなければならない

みんなの介護 現代は「人生100年時代」だと言われます。人間の寿命がここまで延びたのは科学技術の進歩に依るところが大きいと思いますが、技術がさらに進めば人間の寿命はもっと延びると思いますか?

竹内 当然、そうなっていくでしょうね。私がナビゲーターを務めた科学番組『サイエンスZERO』(NHK Eテレ)では、世界記録を持つ超長寿マウスを紹介したことがあります。  

2003年にイギリスで行われた、マウスの長寿を競う「メトセラ・マウス・コンペティション」で優勝したマウスなんですが、普通のマウスの寿命が2年なのに対して、そのマウスは5年も生きたのです。人間でいうと200歳くらいで、この記録はまだ破られていません。

普通の実験用マウスの大半は、がんで死んでしまうのですが、超長寿マウスは非常にがんになりにくく、なったとしてもかなり遅い時期になるために寿命が延びたのです。

みんなの介護 がんに強いマウスを生んだのはどんな技術なのでしょう?

竹内 人為的に遺伝子を壊した実験用のマウスを「ノックアウト・マウス」と言いますが、超長寿マウスもそうで、成長ホルモンのレセプター(受容体)遺伝子が壊れています。  

細胞分裂を促したり細胞が死ににくくする成長ホルモンの中には肝臓で作られるインスリン様成長因子(IGF-1)というホルモンがあります。超長寿マウスはこのIGF-1が働かないので普通のマウスより身体が小さい代わりにがん細胞の発生も抑制され、がんにかかりにくくなるのです。  

成長ホルモンが働かないとがんになりにくくなるという仮説の裏付けになる例が、エクアドルに多く住むラロン型低身長症(ラロン症候群)の人たちです。この人たちは超長寿マウスと同じで、遺伝子の変異によって成長ホルモンが働きません。いわゆる小人症で、平均身長は120cmしかないのです。  

ところが、同じ地域に住む人たちのがんの発症率がおよそ17%であるのに比べて、ラロン症候群の人たちはわずか1%。また、この人たちはインスリンの感受性が高く、糖尿病になる割合も非常に小さいことがわかっています。

みんなの介護 がんや糖尿病は日本人の死因の上位を占める病気で、これを克服できるとすれば素晴らしいことですね。

竹内 ただし、ラロン症候群の人たちの平均寿命を調べてみると、特別に長いわけではないのです。彼らの死因で最も多いのは、事故や飲酒だといいます。事故は、単に生活環境の問題かもしれませんが、飲酒で亡くなってしまうほど彼らの肝臓の機能は低いのかもしれません。  

つまり、成長ホルモンの働きをなくせば、がんや糖尿病のリスクは減る一方で「身体の成長」を犠牲にしなければならないし、他のさまざまな部分に問題が起こってしまうわけです。

心を持った人同士が手をたずさえて生きていく。人間の大事な営みです

みんなの介護 寿命を延ばす技術と同様、介護の分野でもさまざまな科学技術が貢献してくれるのではないかと期待がかかっています。竹内さんはどんな技術に注目していますか?

竹内 さまざまなモノがインターネットに接続され、相互に情報交換できる「IoT(モノのインターネット)」の技術には大きな可能性があると思っています。病気の兆候などをセンサーがリアルタイムで検知して対処することができれば、突然死や孤独死などの問題は解決されていくでしょう。

みんなの介護 その一方で、人口知能(AI)などのテクノロジーの進歩によって、「なくなる仕事」が増えていくという説もあります。介護福祉士の仕事は駆逐されるでしょうか?

竹内 テクノロジーによってなくなるのは、パターン化したルーティンワークからでしょう。介護の現場でも、役所に提出する膨大な書類の事務手続きとか施設の清掃、衣類の洗濯といった仕事は自動化され、便利になっていくはずです。  

しかし、高齢者と直接向き合っている介護福祉士の方たちの仕事は、そのように簡単に自動化できるものではありません。  

例えば、人間と上手に会話ができるAIの技術が開発されていますが、そのようなAIと会話をして、心が癒されるという人がいるでしょうか。現時点でAIの言葉は、ある種のアルゴリズムによってプログラムされたもので、人間のように自分の頭で考えて発言している言葉とは種類が違います。痛みや寂しさを感じている人をいたわるような発言ができたからといって、本当の意味で共感しているわけではないからです。

みんなの介護 以前、このコーナーで羽生善治さんに登場していただいたとき、「AIには接待将棋ができない」という話が出ました。「勝負が常に拮抗して、ちょうどいいところで負けてくれるソフトを開発しても面白くないので接待として機能しない」とのことでした。

竹内 私もおっしゃる通りだと思います。互いに心を持った人同士が交流し、影響を受け合い、手をたずさえて生きていくのが人間の大事な営みですからね。

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