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連続出場が止まった鳥谷は引退して指導者になれ<日本野球よ、それは間違っている!> - 広岡 達朗

 阪神・鳥谷敬(36歳)の連続出場記録が止まった。1939試合は、衣笠祥雄に続く歴代2位である。

 私は、鳥谷が早稲田大学時代に内野守備の基本を教えた。当時は同じOBの徳武定祐(とくたけ・さだゆき)とともに毎週、ボランティアで球場に通った。

 埼玉・聖望学園出身の鳥谷は口数が少なく、朴訥(ぼくとつ)な青年だった。

 早大の主砲として1年から正遊撃手を務め、東京六大学野球で首位打者2度と三冠王。阪神に入団後、1年目の2004年9月から15年間にわたった連続出場が、5月29日、セ・パ交流戦のソフトバンク戦で途切れたのだ。

 鳥谷は阪神でもオープンスタンスの独特なフォームで巧打を飛ばし、堅実な守備で名門のショートを守った。

 私が巨人のショートだった現役時代、阪神には吉田義男という天才的なライバルがいた。鳥谷の守備には吉田のような華麗さはなかったが、堅実なプレーはプロでも合格点のレベルだった。

 しかし年俸4億円(推定)の5年契約を結んだ2015年から巧打にも陰りが出はじめ、昨年は北條史也など若手の台頭で三塁に移った。それでも通算2000本安打を達成し、打率.293と意地を見せたものの、今季は2年目・大山悠輔の三塁抜擢で二塁に再転向。

 金本阪神の若返り方針に押し出された鳥谷は代打生活の日々を過ごし、大記録が止まった日は打率が.143まで落ちていた。

記録中断の監督判断は当然だ

 私も長年監督を務めたのでよくわかるが、監督が体を張って守っているのは選手の記録ではなく、チームの勝利である。

 阪神も、金本監督が鳥谷の入団以来15年にわたった連続出場記録に苦渋の決断を下したのは当然である。

 闘志が表に出るタイプではない鳥谷は、三振したときの表情が無気力にさえ見える。闘将・金本と相性がいいはずはないが、代打で三振や凡退を繰り返す後輩を見ると、三塁転向を命じられたとき、鳥谷は「俺の本業はショートだ」という誇りをもって引退するべきだったと思う。

 私はそのころ、阪神球団の首脳に「鳥谷が使えないなら、もうやめさせたらいいではないか」と進言したことがある。するとそのとき「そうはいっても5年契約がまだ残っているからね~」という反応だった。解雇すれば残りの年俸は全額支払うことになるから、球団は踏ん切りがつかないのだ。

 私はかねて、日本の球界が大リーグの悪しき慣例の複数年契約を模倣することに反対してきた。例を挙げればキリがないが、代表的なのは松坂大輔、和田毅、藤川球児など、アメリカでトミー・ジョン手術を受けたUターン投手を高額な複数年契約で迎え入れるケースである。

 こういえば、私がいかにも非情な人間のように思われるかもしれない。しかし、舞台は巨額な年俸が舞うプロ野球である。資金力が豊富だからといって、こうした担保も保証もない高額の複数年契約は、野球経営として間違っている。

 それより、選手の契約は1年を原則とし、一定の水準以上の成績をあげたら何億円でも高額なボーナスを支払う「出来高優先契約」にすべきだ。

選手は誇りを忘れるな

 一方、選手たち自身が出処進退の決断を誤る原因も、この複数年契約だ。これまで長年活躍を続けたスター選手が、屈辱のベンチスタートや代打生活に甘んじるのも、巨額の年俸を保証される複数年契約を、自ら放棄する気になれないのだろう。

 しかしもう一つ忘れてはならないのが、長年ファンに夢と希望を与えてきた人気選手としての誇りである。

 私が現役時代、巨人の大黒柱だった赤バットの川上哲治さんも、長嶋茂雄も王貞治も、全国のファンに惜しまれつつ自らバットを置いたのは、「巨人軍の四番」という誇りがそうさせたのに間違いない。

 いま鳥谷とともに頭に浮かぶのは、巨人の阿部慎之助である。巨人待望の後継者・岡本和真の成長で代打に回った阿部は6月7日現在、打率.200、ホームラン3本である。そして年俸は2億1000万円(推定)だ。

 来年も億単位の年俸が保証されるとすれば自ら引退する気にはなれないだろうが、鳥谷も阿部も、もうベンチから後輩たちのプレーを見守る生活はやめたほうがいい。これからは指導者として、名門・巨人と阪神の伝統を引き継ぐ「第二の阿部」「第二の鳥谷」を育てろ。

*  *  *

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