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介護施設には"節約"だけではなく、人材やブランドなどの資源を生かす"経営"の発想が必要になっていく - 「賢人論。」第63回上山信一氏(後編)

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日本は総人口が減少する中で高齢化が急速に進み、「団塊の世代」が75歳を超えて後期高齢者となる2025年には国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という人口構成が確実になるとみられている。ご自身も2017年に還暦を迎えた上山氏に、さらなる高齢化へと向かう日本社会の未来について聞いてみた。

取材・文/ボブ内藤 撮影/小林浩一

日本人は悲観的すぎるが、それは現状打破の推進力と表裏一体

みんなの介護 上山さんはさらなる高齢化に向かう日本社会の未来をどのように見ていますか?

上山 日本がこれから経験しようとしている超高齢社会は人類がいまだ経験していないものだと言われ、悲観論も聞きますね。しかし、まだ誰も見たことのない社会を世界に先駆けて経験できるわけです。それに対応した新しい生き方や社会の仕組み、そして新しい産業を生み出すチャンスと捉えることもできるでしょう。

例えば車椅子に乗ったら歩くよりも早く道路を走ることができるとか、健常者以上の生産性を担保できるロボットスーツが開発できるかもしれない。

それから、がんを克服する薬品や治療法、再生医療の技術などが進んでいけば、誰もがピンピンコロリで死の瞬間まで健康を保てる未来がやってくるかもしれません。

みんなの介護 医療技術の進歩は、最先端の治療を受けられる人と、受けられない人の経済的格差を助長するという分析もあります。

上山 発想が後ろ向きすぎます。進歩した方が良いに決まっている。日本人は物事を楽観的に見ずに、悲観的に捉えすぎです。

例えば「ごみ処理場があと3年で満杯になる」という報道が新聞やテレビをにぎわせました。しかし、そろそろ30年が経とうとしています。「石油燃料は枯渇する」と叫ばれていたのはそれよりもっと前のことで、今は誰もそんなことを言わなくなりました。

みんなの介護 地震や台風などの天災の多い日本の風土が、そのような悲観主義を一般的にしたのかもしれませんね。

上山 そうですね。でも実を言うと、そうした悲観主義は、日本人の短所ではなく、むしろ長所だとすら思います。短所だと思うこと自体、それもまた悲観主義なのです。

「わが国は世界から遅れている。このままでは大変なことになる」という悲観的な見方は現状打破の推進力にもなります。政策決定を行うときにも最悪の事態を想定して安全策を考えておく。日本人特有の悲観主義が有効に働くこともある。

福祉や医療、教育が整う日本。ほとんどは「偶然」の産物

みんなの介護 「21世紀は都市の時代」と発言されている上山さんは、日本の都市をニューヨークやロンドン、パリ、上海といった海外の都市と比べてどのように評価していますか?

上山 私はこれまで111ヵ国を旅していろいろな都市を見てきましたが、日本の都市はとても魅力的で競争力を持っていると思います。

治安が良い、物価が安い、それからごはんが美味しい。エンターテインメント分野でも多くの目玉を持っています。近年、外国人観光客が急速に増えているのはそうした日本の特性が発見されたからだと思っています。

みんなの介護 日本の都市は、なぜそのような魅力を獲得できたのでしょうか?

上山 他のアジアの国々より早く近代化した。その結果もあって第二次世界大戦の敗戦を経験したが、結果的にそれで日本が経済的な繁栄を実現できた。

戦後、米ソの冷戦下で各国は軍事力を増強して国防政策を進めた。しかし日本は再軍備が禁じられ、一方で日米安保体制のもと、敵国である米国の傘下に入って平和を保てた。軍事費も費やさなくて済んだ。

戦後の自由貿易体制のもと、戦前のように食料や燃料を入手する苦労もなくなった。今のようにアジアの各国が発展するより前に輸出で稼いだ。そのお金を政府が補助金や公共事業で地方にまわし、国内で循環させた。

その結果として税金は安く、福祉や医療、教育が立派に整った国ができあがったのです。でも、これはほとんどが戦後の歴史の「偶然」をきっかけにして成立している。

みんなの介護 これまでの日本の繁栄が「偶然」によるものだとしたら、それが長続きしないことも明らかですよね。

上山 すでにその兆候があらゆるところで顕在化しています。  

かつて企業は社員を終身雇用制で雇い、企業年金や退職金で老後の面倒までみたけれど、そんなやり方は通用しなくなった。国の補助金や公共事業で経済をまわしてきた地方も、財政赤字が深刻化して立ち行かなくなっている。

このように、かつての成功モデルが時代に合わなくなっているのなら、新しいモデルに変えていかなくてはなりません。

みんなの介護 どのように変えるべきだと思いますか?

上山 会社にも行政にも介護施設にも、もっと経営上の工夫が必要です。特に、人材や不動産、特許、ブランドなどの資産の有効活用です。企業も自治体も過去20年をふり返ってみると、人や経営資源がサイズダウンしていく世の中に合わせて節約とコストダウンに追われてきた。

しかし、それでは縮小していくだけです。役所は数字のみにとらわれ過ぎている。特に予算の削減。削るといってもいずれ限界がくる。今後は、「節約」だけを意識するのではなく、持っている資産を有効に生かす高いレベルの「経営的発想」が必要になってきます。例えば、今まで寂しかった大阪城公園は今、古い建物がリノベーションされ、外国人観光客でにぎわっています。これは民間企業に20年の運営委託をした結果です。こうした発想で、眠れる資産を活用するべきです。

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