記事

参議院選挙制度改革 自民党の党利党略案 定数増が問題なのではない

 参議院定数不均衡問題で、合区解消を憲法改悪によって実現しようとした自民党ですが、来年の参議院選挙に間に合わないとみるや、選挙制度をいじることによって当初の目的を達成しようとしています。

 自民党は、全国一区の比例区に非拘束式を導入しました。もともとは拘束式であり、政党名の投票でしたが、これに個人名でも投票できるようにしたのです。
 今また一部に拘束式を導入しようというのは、合区から漏れた候補者を拘束式名簿に登載することによって当選を保障しようというもので、自民党のためだけの改革案です。
 そのためには比例区の定数を増やし、さらにはこれ以上合区は増やせないので有権者の多い埼玉県などの定員を増やすというものです。計6の定数を増やす案です。

 ここで問題なのは定数を増やすこと自体は問題ではないということです。国会議員にも痛みを伴う改革が必要だとかいって、定数を減らせということが判を押したように言われることがありますが、定数を削減することの一番の問題点は少数政党の議席を減らすことに直結していることです。国会議員の痛みではなく、少数政党(会派)の切り捨てです。

 例外は合区によって定数を削減する場合です。この場合は自民党が直撃を受けます。
 定数不均衡是正も自民党の議席減に直結しています。
 だからいびつな今回の自民党案のようなものになるのです。

 定数増自体を否定するだけでなく、それ以上に定数削減を強調することは明らかに民主主義に反することになります。民主主義を維持するためのコストは一定必要なのですから、これを削減せよというのは慎重でなければなりません。

 さて、自民党がどれだけ自己中心的なのかを改めて振り返ってみましょう。
 もともと参議院の全国区に拘束式比例代表制が導入されたのは、それまでの全国区が非常にロスも大きく知名度だけで当選してしまうということもありました。そこで全国一区の比例区の導入ということになったわけですが、そのときはあくまで拘束式であり政党名を記入するという制度でした。

 しかし、その本音は、共産党の議席を減らすことになりました。まだ東西冷戦下にありましたが、個人名で投票するこれまでの投票では有権者が日本共産党の公認候補に投票できても有権者が直接「共産党」とは書けず大幅に得票数を減らすだろうという期待です。
 ところが実際にはその効果は表れませんでした。
 1983年 416万票
 1986年 543万票
 1989年 395万票(中国で天安門事件が起きた年)

前回の新潟県知事選挙、やり方がえげつない

民共合作ビラ

新潟県庁に赤旗が立つ

 こうなってくると自民党にとっての利はなく、むしろ個人を売り込める非拘束式の方が都合が良く、他の野党の反対を押し切って非拘束式に移行させます。
 非拘束式は、個人的に集票力のある著名人を候補に入れることで全体のかさ上げが狙うわけです。
 その象徴がこの今井絵理子さんです。沖縄出身を強調していましたが、沖縄問題は何1つわからない(勉強していない)で議員になった強者です。

今井絵理子氏の当選は、やはり日本の民主主義の劣化の象徴だった

今井絵理子氏の公約

 こうした議員を見てしまうから与党側がいう議員定数を減らせということに国民がなびいてしまうのかもしれません。自分たちの生活の苦しさが最初に頭をよぎってしまうからなのかもしれません。しかし、基本的には議員定数の削減は与党を利するものです。
(合区によって地方の選挙区の定数を削減する場合には自民党が不利になります。だから今回のような党利党略案が出てくるのは前述したとおりです。)

 都道府県に1人は最低でも定数を割り当てたければ、他の不均衡となっている選挙区の定数を増やすしか方法はありません。それをしたくないのは、定数増を批判されるのが嫌だからということではなく、野党の議席が増えてしまうからです。特に共産党、社民党にも議席が回ってきてしまうということは何としても阻止しなければならない、こういった動機があります。少数政党であろうと得票数に応じた議席が与えられるのは民主主義からは当然のことです。

 なので、定数増自体が問題なのではありません。
 今回の党利党略案が自民党から出てきただけのものです。
 このような自民党のためだけの党利党略案が通ってしまうようなことがあれば日本の民主主義は終わりです。

あわせて読みたい

「選挙制度改革」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ナンパの聖地 コリドー街に驚き

    内藤忍

  2. 2

    よしのり氏 禁煙巡るヤジ許せぬ

    小林よしのり

  3. 3

    世界称賛 必見の和製ゾンビ映画

    松田健次

  4. 4

    舛添氏 国会ヤジ問題で党に苦言

    舛添要一

  5. 5

    思い出のブロック塀が安全を阻む

    赤木智弘

  6. 6

    「医師に拳銃を持たせて」の真意

    中村ゆきつぐ

  7. 7

    「万引き家族」ストーリーに疑問

    (チェコ好き)

  8. 8

    問題解決能力のない国会に改革を

    玉木雄一郎

  9. 9

    新AppleWatch 物理ボタン廃止か

    フォーブス ジャパン

  10. 10

    仮想通貨取引所を規制で潰す日本

    Hayato Ikeda

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。