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米朝トップ会談。成否は視聴率で決まる

米朝トップ会談が近づいてきました。さあ、どのようなテレビ・ショーが繰り広げられ、トランプ大統領はどこに着地点を置こうとしているのでしょうか。いずれにしても、この米朝会談は外交の常識を塗り替えるエンターテーメント・イベントになりそうです。シンガポール政府によると、これまで首脳会談を取材する2500人を超える記者が登録を済ませたといいます。世界の目がシンガポールに釘付けになります。

これといった理念をもたず、ひたすら米国の利益を追求するトランプ大統領の外交は、利益を最大化するための取引となってきます。同盟国間の絆ではなく、貿易問題は貿易問題として切り離し、駆け引きをゲーム化し、駆け引きの巧拙で結果が左右されるのです。

今回の米朝会談でトランプ大統領がなにを成果にしたいのかを考えると、照準は中間選挙だというのははっきりしてます。非核化でどの程度に着地させるかも、それで決まってきます。

「米国民の多くがテレビを見る時間帯に生中継を行うことも、合意が困難な非核化よりも会談そのものを強調し、自らの支持率を高めることが狙いかもしれない」と韓国の朝鮮日報が懸念するコラムを書いていますが、まさに狙いはそこにあるのでしょう。非核化が、現実的には一挙に行うことは困難とトランプ大統領が読めば、それだけ会談をショー化させ、会談そのもののインパクを大きく感じさせようとするに違いありません。

この米朝会談に文在寅大統領が加わることに消極的な姿勢を示しているのも、この会談の主役、焦点がボケてしまうからです。

【社説】文大統領のシンガポール入り巡る韓米間の不協和音- 朝鮮日報 :

つまりトランプ大統領にとっては、米朝トップ会談の成否は米国内の視聴率が決めるということなってきます。トランプ大統領が何かを求めるのではなく、金正恩に非核化の道筋を提案させ、内容がよければトランプ大統領が金正恩の肩を抱き、固い握手で、米国の主導のもとに米朝の新しい歴史が始まるというイメージを米国国民が感じとれば、会談は成功なのでしょう。

どこまでもアメリカ・ファーストのトランプ大統領と、同盟関係をより深め、米国の力を借りて問題を解決したい安倍総理の間には距離が感じられるようになってきています。『最大限の圧力』の維持を主張する安倍総理と、「『最大限の圧力』という用語をこれ以上使いたくない」とするトランプ大統領では思惑が違うのです。

いろいろ外交専門家を称する人たちも、憶測して論じているのですが、なにか現実味を感じないのも、従来の外交観から抜け出させないからでしょうか。朝ナマも同じ主張が繰り返されるばかりで迫力に欠けていました。政治の世界の評論家の人たちは「駆け引き」の専門家でもなく、また「駆け引き」の修羅場に臨んだ経験があまりないからかもしれません。

米朝トップ会談の事前協議を行うために、安倍総理はトランプ大統領との会談に臨みましたが、安倍内閣は、国内で支持率低下はぎりぎりのところで踏みとどまっているものの、森友・加計問題で自らと政権の信頼を失っており、どこまで成果を引き出せるのかも手放しでは期待できない状態になってきています。

安倍総理は拉致問題解決のために、あらゆることをするということですが、日本が独自に動くといっても、日本の経済での影響力は低下しており、また対米従属姿勢のツケで外交力も低下しているので、言葉よりは行動で示してもらわなければいけません。米国がどれだけ動くかは、対価次第ということになってきそうです。拉致問題を取り上げるとは約束はしてくれたようですが、それがトランプ流の取引です。
米大統領、金正恩氏の米国招請を示唆 安倍首相に拉致言及を確約 | ロイター :

トランプ大統領との付き合いの深い安倍総理が、トランプ大統領になにがなんでも制裁を続け、また拉致問題をトップ会談でテーマ化することを説得すべきだという主張は一見正論のようですが手放しでは期待できないのです。

日本の外交は長い間、米国に追随することが「国益」だという人たちの影響下に置かれていましたが、米国依存だけでは、日本の存在感や影響力をつくるのは難しい時代に入ってきています。

自由主義だ、民主主義だといっても、経済がグローバル化してしまった時代は、そうでない中国とも否が応でも相互依存の関係を切ることはできません。「保守」だという旗印のもとに日本がどのような立ち位置であるべきかという議論を封殺し、中国は警戒すべき仮想敵国と考える人々まで存在します。

その典型が2014年に亡くなられた安倍さんのブレーン、岡崎久彦さんだったのかもしれません。岡崎さんが、日本の外交を思考停止させてしまった罪は深いと思いますが、その結果、外交では、野党が反対を叫ぶだけ、また専門家も解説はしても、日本がなにをすべきかという話まで踏み込まない風潮が根付いてしまいました。
外交評論家の岡崎久彦氏が死去 安倍首相のブレーン 第11回正論大賞受賞(1/2ページ) - 産経ニュース :

そして、思想や理念で外交が動く時代でなくなると、状況がどうか、またどう変化してきたかを分析し、戦略を練ることが重要になってきます。重要なのは事実がなにかです。ビジネスの世界でも、CIAなどの情報機関の世界でもそれがあたりまえです。トランプ大統領が米朝会談に関しても、外交の専門家ではなく、ポンペオ元CIA長官をトップに交渉を任せたのも、そこがポイントだったのではないでしょうか。安倍総理にそういった外交に対応できる能力があるかどうかも今回の米朝トップ会談を通して見えてきそうです。

北朝鮮はこれまで時間稼ぎのために核を放棄したと見せかけ欺いてきた、だから圧力をかけ続けないけないというお話も多いのですが、素人でもわかっている話で、駆け引きのプロであるトランプ大統領がそれぐらいのことがわかっていないわけがありません。要求するよりも、非核化の計画をもってこさせる巧妙さ、むしろ金正恩との個人的な信頼関係を築き、懐に取り込んでしまうほうが、現実的には非核化が進むとトランプ大統領が考えていそうな感じがします。

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