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焦点:軍幹部にイエスマン、金正恩氏が「非核化」に布石か

Hyonhee Shin and Josh Smith

[ソウル 4日 ロイター] - 北朝鮮で新たに選ばれた軍幹部3人は、同国指導者の金正恩(キム・ジョンウン)氏に対し絶対的な忠誠心があることで知られ、トランプ米大統領と取引して大転換を迫られることになっても、それを受け入れるのに十分な柔軟性を備えていると、北朝鮮専門家たちは指摘する。

米高官と北朝鮮指導部を分析する韓国の専門家らによると、この3人は、最近解任されたより保守的で年配の幹部と交代した。

米国が交渉によって北朝鮮に核プログラムを放棄させようとする中、北朝鮮がこれまでの核兵器開発と敵対姿勢を完全に転換して、金正恩・朝鮮労働党委員長が米韓と交渉することについて、北朝鮮の軍内部で反発があったのではないかと米当局者はみている。解任された高官らが反発していた当事者であったかは明らかではない。

韓国聯合ニュースが情報当局者の話として伝えたところによると、国防トップにあたる人民武力相は朴永植(パク・ヨンシク)氏から努光鉄(ノ・グァンチョル)人民武力省第1次官に交代し、李明秀(リ・ミョンス)氏が務めていた軍総参謀長には李永吉(リ・ヨンギル)前総参謀部第1副総参謀長が返り咲いた。

国内最高位のポストの1つである軍総政治局長には、金正角(キム・ジョンガク)氏に代わって平壌市党委員長だった金秀吉(キム・スギル)氏が就任すると、北朝鮮メディアはこれより先に伝えていた。

これら人事刷新が12日にシンガポールで開催される米朝首脳会談を目前にしてまとめて行われたことは衝撃的である。

金委員長が、核政策に固執する年配の高官を、同首脳会談後にいかなる変化が起きても従う忠誠心の強い「イエスマン」とすげ替えていると一部の専門家は指摘する。

「米朝首脳会談では非核化に向けたロードマップが示されることになる。そうなれば金(正恩)氏にとって、核プログラムの放棄に激高しかねないタカ派を軍の要職に置いておくことは厄介なだけだ」と、韓国のシンクタンク、世宗(セジョン)研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)上級研究員は語った。

<不在時の保険>

トランプ大統領は、経済制裁の緩和と引き換えに「非核化」することを北朝鮮に求めている。北朝鮮政府は自国の核兵器開発について、生き残るためには不可欠なものと考えているが、金委員長は経済発展に注力すると明言している。

今回の人事交代は、重鎮らを粛清し、より若く信頼できる側近を党政治局や他の中心的な地位に起用することにより権力固めを続けてきた金委員長の数年がかりの努力と一致するものだ。

首脳会談出席のため金委員長が不在にする間に権力を掌握しようとする企みに対する保険の意味合いもあると専門家は指摘する。

「新たに起用された人物は皆、金正恩氏の側近だ。自身に忠実な信頼できる人たちを起用している」とジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮分析の専門家、マイケル・マッデン氏は語った。

忠誠心が強いだけでなく、新たに抜擢された3人は対外的な活動に従事した経験があり、こうした面もプラスポイントとみなされていると同氏は指摘。ただ、3人の中からシンガポールに向かう金委員長の同行者が出るかはまだ分からないという。

4つ星の大将である金秀吉氏(68)は金委員長が最も信頼する側近の1人で、さまざまな軍の視察や公的行事に同行している。

同氏は、2013年12月に行われた、金委員長のおじで実力者の張成沢(チャン・ソンテク)氏の粛清・処刑に関与した。その翌年初めに平壌市党委員長に抜擢されている。マッデン氏の言葉を借りれば、張氏の側近が多くいる運営組織を「大掃除」するために任された仕事だった。

秀吉氏の軍総政治局長への起用は、軍に対する党の支配を強化する金委員長の取り組みの一環であると、調査・分析を行う米非営利組織CNAの国際問題グループ責任者、ケン・ガウゼ氏は話した。

<お墨付き>

新たに起用された3人は皆60代ではあるものの、前任者よりは若い。

この3人はまた、2016年5月に最高意思決定機関である党政治局の局員代理に選ばれている。

専門家によれば、李永吉氏は2013─16年に軍総参謀長を務めたが、その後に短期間ではあったが失脚したと伝えられている。

同氏は2000年代初め、平壌を囲む一帯を防衛する軍部隊の司令官だった。ガウゼ氏いわく、北朝鮮の指導者によって「個人的に選ばれる」のが伝統である重要なポジションだという。

2013年3月、米戦略爆撃機が韓国上空を飛行後、ミサイル部隊に米韓軍事施設への攻撃「スタンバイ」を命じるため金委員長が深夜に召集した会議に同氏は出席していた。

2016年2月、同氏は一時的に第一副総参謀長に降格され、階級も1つ落とされた。その理由は明らかにされていない。韓国の情報当局者は当時、汚職と職権乱用の嫌疑で処刑されたとしていたが、それから3カ月後には党政治局員候補として主要な党の集会に姿を現した。

人民武力相に抜擢された努光鉄氏(62)は比較的知名度が低いが、かつてはミサイル・核プログラムを含む防衛装備品の製造を監督する第2経済委員会の委員長を務めていた。

「信頼できなければ当てられないポストだ」と、韓国政府系シンクタンク、韓国統一研究院(KINU)のホン・ミン北朝鮮研究室長は言う。

「金正恩氏の時代に有望で信頼できる側近として頭角を現した。彼が人民武力相になるのは全くおかしくない」

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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