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米朝首脳会談にサプライズなし


バッシャール・アサド大統領(中央)とプーチン大統領(右)2015年 出典:President of Rossia

宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

【まとめ】

・日本の生存は東京からインド洋だけでなく湾岸地域までのシーレーン維持に依存。

・米朝首脳会談は中途半端の会談継続に合意する。

・アサド大統領が北朝鮮を訪問、金正恩党委員長と会談の意向。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=40340でお読み下さい。】

6月4・5日東京で開かれた国際会議で話す機会があった。詳細は今週の産経新聞コラムをお読み頂きたいが、主催は米シンクタンクCSISの太平洋フォーラム、多摩大学のルール形成戦略センターと在京米国大使館。参加した理由は同フォーラムとセンターの関係者が友人であり、テーマが「インド太平洋」であったことだ。

各国からアジアの専門家が数十人集まったが、日本人よりも米豪NZやASEAN諸国など外国人参加者の方が多く、モデレーターも米国人だったから、まるでハワイかサンフランシスコで会議しているような雰囲気だった。日本で開かれるこの種のシンポジウムとしては、実に多様性に富んでおり結構楽しめた。

「インド太平洋」なる概念は2017年11月、初のアジア歴訪中にトランプ氏が再三言及し、翌月には米国の国家安全保障戦略にも記載されるなど、同概念は今や米国の公式政策にもなっている。だが、その意味は、目的は、実現可能性は、などと皆で議論していくうちに、これらが意外に詰まっていないことが明らかになった。

誰が言い出したにせよ、近年「インド太平洋」なる概念が浮上した意味は、現状で米国が単独で、もしくは既存の同盟システムのみで、地球規模で拡大する中国の自己主張を抑止できなくなりつつあるということだ。だが、こうした「インド太平洋」なる概念は日本の安全保障にとって必ずしも十分なものではない。

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▲図 自由で開かれたインド太平洋戦略 出典:「平成29年度開発協力重点方針」外務省国際協力局

日本の生存は東京からインド洋だけでなく、湾岸地域までのシーレーンの維持に大きく依存している。ところが、アジア専門家の多くは中東に関心がなく、中東専門家はアジアに関する知識が乏しい。アジア専門家だけでインド太平洋地域などという地域際的問題を戦略的に考えることには限界があることを今回も痛感した次第だ。

一方、北朝鮮問題は最近ようやく方向性が見えてきた。要するにトランプ氏も正恩氏も、理由は完全に異なるが、シンガポールで首脳会談をやりたくて仕方がないのだ。そうであれば会談の結果も自ずから見えてくる。要するに、中途半端の会談継続に合意するのだろう。その意味で米朝に関する限りサプライズは減ったといえるだろう。

▲ドナルドトランプTwitter(5月29日)

その意味で今週最も驚いたのはシリア大統領北朝鮮訪問に関する北朝鮮国営メディア報道だ。バッシャール・アサド大統領が北朝鮮を訪問し金正恩党委員長と会談する意向を明らかにしたそうだ。実現すれば、金委員長が自国内で初めて開催する首脳会談になるというが、金正恩は何らかの高揚感に酔っているのではないか。

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▲写真 バッシャール・アサド大統領 出典:photo by Bashar_al-Assad.jpg

それにしても不思議だ。シリア大統領といえば米国が打倒を宣言した新「悪の枢軸」の頭目であり、自国民に対して化学兵器を使用した悪漢(昔は必ずしもそうではなかったのだが)でもある。北朝鮮とシリアは長年の友好国で、最近軍事協力関係を強化しているとはいえ、米朝首脳会談の前にこれを発表するとは良い度胸だ。

こうした金正恩の高揚感が吉と出るか、凶と出るかはわからない。事実は小説より奇なりという格言を地で行くような最近の国際情勢の新展開は実に興味深い。今こそ己の歴史の大局観を試す絶好の機会である。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

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