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ラスベガスで勃発?反ロボット、AIストライキ - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

AIやロボット技術の発達と共に、近い将来人間の仕事の8割はオートメーションによって置き換えられる、という予想がある。こうした事態に備え、例えばテスラのイーロン・マスク氏などは以前から「人間が仕事によって収入を得られなくなる時代には政府によるユニバーサルインカムのようなシステムが必要」と主張していた。しかし大部分の人は「そうした事態が起こるのはまだまだ先の話」と考えているだろう。

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ところが、今年6月1日以降、米国ラスベガスで大規模な従業員ストが起こる可能性があるという。その内容は「ロボットやAIによって職場を奪われない」ことを雇用主に対して求める、というものだ。ストを計画しているのはラスベガスの調理従業員組合。ホテル、カジノが立ち並び世界中のグルメが味わえる場所としても有名なラスベガスにはおよそ5万人のレストラン関係従事者が存在する。

組合はラスベガスのカジノホテルとの契約を締結しているが、それが今年5月末で満了となり、再契約の必要がある。その際に「オートメーション化により従業員の削減などを行わない」ことが最大の争点となり、雇用側がこれを契約に盛り込まない場合、大規模ストライキに突入する可能性があるのだという。

AIを組み込んだロボット技術は今やあらゆる産業に浸透してきているが、調理業界もその例外ではない。日本ではソフトクリームを作ってくれるロボット、安川電機の「やすかわくん」が有名だが、米国ではボストンのSpyce (https://www.spyce.com)など、機械が複雑な調理をこなすレストランがすでに存在する。英国ロンドンのLe Petit Chefでは、なんと3D技術を組み込みきれいなデザートまで仕上げるロボットが話題となった。

その他にもカプチーノを入れるコーヒーロボット、ハンバーガーを焼くバーガーロボットなど、調理ロボットはどんどん市場に投入されている。もちろんサーバーにも同様にロボット技術が取り入れられ、マクドナルドはすでに複数の店舗に注文キオスクを導入してカウンターでの注文、支払いを廃止しているところがあるし、自動走行のロボットが客の注文をテーブルに運ぶシステムも普及しつつある。日本の回転ずしがいち早く取り入れた、注文されたテーブルにベルトを使って品物を運ぶ、というシステムなどはこうした技術の草分けとも言える。

IBMワトソンもメニュー考案

しかも、一流シェフにとっても脅威と言えるのが、「世界中の最高のグルメのレシピを考案するAI」の存在だ。IBMワトソンが現在この分野にも注力しており、今年開かれたフェスティバルでは「ベトナム風アップルカバブ」「ベルギー風ベーコンプディング」といった料理を披露した。どちらも耳慣れない料理だが、これこそワトソンが世界中のレシピを分析し、考案した料理なのだという。

つまりAIは「創作料理を生み出す」ことにまで成功しており、もはや調理、レストランサービスという分野でロボットに置き換えられない業務はない、という段階に来ている。もちろん高級レストランを選択する人は味気ないロボットではなく人間による丁寧な接客を望むのかもしれないが、それも近い将来非常に限られた贅沢な選択になるかもしれない。

一方でAIが飲食業界を活性化している、というデータもある。その最大のものがスマホアプリによるオーダー、宅配サービスだ。米国でもっとも成功している電子マネーはアップルペイでもグーグルウォレットでもサムスンペイでもなく、スターバックスマネーだと言われる。アプリにより注文、支払いができることでスターバックスの業績は確実に伸びている。

それでも今回のラスベガスの組合とカジノホテルとの交渉は、今後の飲食業界の未来を占うイベントになりそうだ。オートメ化による合理化を追求するのか、現時点では雇用を守る方向に合意するのか、雇用側の対応には全米の飲食業界の注目が集まることになる。

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