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【韓国】政権批判の言論封じが目的か――圧倒的人気を誇る候補者を収監

 韓国で、辛口の政権批判が人気を集めているポッドキャスト(インターネットを使った音声の配信システム)の番組をめぐり、出演していた野党の元国会議員が公職選挙法違反で収監され、番組ファンなどから「言論弾圧だ」との批判が沸き起こっている。

 公職選挙法に問われたのは、番組の出演者で元民主党国会議員の鄭鳳株氏(五一歳)。昨年一二月二二日に大法院(最高裁)で上告棄却となり、判決は確定。鄭氏は同月二六日、支持者たちに見送られながらソウル地検に出頭し、収監された。

 これに対し、番組ファンのほか野党からも一斉に反発の声が上がった。韓国では今年四月に総選挙が実施され、鄭氏も有力な候補者として立候補が取り沙汰されていた。だが、収監によって立候補は不可能になる。一二月には大統領選も行なわれるが、李明博大統領の支持が低迷し「死に体」の様相を呈していることから、民主化運動を経験した四〇歳代以上から高い人気を得ている鄭氏が政権批判の活動を強めることに、ストップをかける狙いがあったのではないかとも言われている。

 番組は「ナヌン・コムスダ(私はけちくさい奴)」とのタイトルで、昨年四月二七日に放送を開始。「私」とは李大統領を指す。元国会議員やジャーナリストら四人が出演し、李政権を批判する議論を展開。番組では軍事独裁政権時代に大統領に対して使われた呼称の「閣下」をあえて用い、李大統領を「カッカ」と言い換えて、徹底的にこき下ろす。韓国政治の問題点を指摘しながら「カッカはそんなことをする方ではありません」と皮肉るシニカルな内容で、放送開始直後から話題を集め、二〇歳代から四〇歳代にかけてファンが急増。「ナコムス」との略称で、広く知られるようになった。

 毎週一回更新される番組のダウンロード数は、約二〇〇万にのぼる。昨年八月からはitunesのポッドキャストで、ダウンロード数の一位を記録し続けている。

 鄭氏は二〇〇七年の大統領選で、当時ハンナラ党の候補者だった李大統領が、株価操作と横領に関わっていたと発言。虚偽の事実を流して選挙活動を妨害したといして公選法違反などの罪で起訴され、〇八年に一、二審で懲役一年の実刑判決を受けた(株価操作などの問題は、検察は李大統領の関与なしと結論)。

 番組に出演する雑誌『時事イン』の記者、朱真吁さん(三八歳)は、鄭氏の収監について「政権批判の言論封じが目的なのは明らかだ」と語気を強めた。

 実際に、番組が実際の政治に大きな影響を与えている。昨年一〇月に行なわれたソウル市長選挙で、野党統一候補の朴元淳氏が当選を果たした背景には、番組が積極的な支援に回ったことも要素として挙げられている。

 朴市長は当選後、番組が開いた公開イベントに姿を見せ、支持に感謝を表し、会場から熱狂的な声援を浴びていた。また、世論調査機関「リアルメーター」が、市長選挙当日に番組の認知度を調査したところ、約六割が知っていると回答。市長選では、二〇歳代から四〇歳代の「反保守」の動きが朴氏当選のカギとなったとされ、民主党関係者は「反保守のムード作りに、ナコムスは絶大な威力を発揮した」と評価する。

 一方、こうした動きに政権側は敏感な反応を示している。政府関係者は「(番組によって)若者層を中心に反政権の雰囲気が醸成されたのは確か。これが(大統領選の)一二月まで続く可能性もある」と、危機感を露わにする。

 番組では、朱記者による李大統領の不正土地取得疑惑のスクープを紹介し、李大統領が批判を浴びて取引を撤回する事態に発展。政権側にとって「無視できない存在」(与党ハンナラ党関係者)となり、ソウル市長選前には同党の洪準杓代表が番組に出演し、政権や与党への批判に直接答えた。

 鄭氏の収監後も番組は続けられ、野党の重鎮らが次々と番組に出演。人気も勢いが衰えていない。朱記者は「これからも国民の知りたいことを伝えていく」と話している。

(北方農夫人・ジャーナリスト、1月13日号)

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