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ゲーム障害がやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!

「ゲーム障害」という言葉をご存知だろうか?

WHOが次に改定される国際疾病分類に「ゲーム障害」を加える見通しであるということから、今年はじめから徐々に話題に登っている。(*1)

医者からすれば、疾病としてコードを与えられれば、研究費などが落ちやすいという利益があり、ゲーム大国(と日本人には思われている)日本でも小難しい顔をしてゲーム障害の研究をする医者も増えるのだろう。昨今では医者のタレント化も激しく、テレビにとって都合のいい偏見を披露してくれる医者が出てくるに違いない。かつての「ゲーム脳」みたいなことになるかと思うと、とても憂鬱である。

さて、ゲーム障害と言っても、ではゲームで起きる障害とは何が考えられるか。それはゲームの種類によって異なってくるだろう。

オフラインのゲームでは時間の浪費。スマホゲーのガチャではお金の浪費が問題になる。一方でMMORPGなどのオンラインゲームでは、上記の問題に加えて、人間関係の問題が発生する。

「ゲーム=人間関係が希薄」という偏見を持つ人達も多いが、他人との協力が必要不可欠なオンラインゲームでは、各個人のプレイスキルが、ゲームの結果すなわち全員の利害に反映されるために、ミスや準備不足に対する批難は強くなりがちで、現実よりも人間関係が厳しくなることも少なくない。

それが楽しいうちはいいが、そのうちにプレイスキルの底上げと日課の徹底が、それこそ仕事のように課されていく感覚に陥っていく人もいると聞く。

確かに、そうした状態になったときにすら、そのゲーム自体のプレイを止めるという決断ができないとすれば、それは立派な障害であるとは思う。しかし一方で、それこそ「仕事のように」と書いたように、仕事であればゲーム障害のような事例は日常茶飯事ではないか。

神戸新聞の記事に「WHOが示すゲーム障害の基準案」というものが掲載されている(*2)が、これをちょっと改変すれば、仕事でも同じことが言えてしまう。

・インフルエンザでも出勤する衝動が止められない
・他の興味や日常生活よりも仕事を優先させる
・良くない結果が出ているのにプロジェクトを継続したり、残業時間を増やしたりする
・個人や家族、社会、学習などで深刻な支障が起きている

と変えてみても、それほど違和感がない。

特に「仕事があるから」と、子供との約束を反故にして仕事をするお父さんというのは、世間一般では「仕事に一生懸命でちょっと周囲に目が向いていないお父さん」とされるのだろうが、僕は病気だと思う。家族を養うために仕事をしているのに、その家族をないがしろにしているってのは、どう考えても間違っている。その間違いに気づかないのは病気である。

先日、NHKハートネットでもゲーム障害の特集(*3)がされていた。内容的にはブラック企業に勤め、毎日自殺を考えていたような男性がゲームにハマったという話だ。ならばその原因はゲームではなく企業の方だろう。むしろゲームはその男性の命を救ったのである。

では、なぜ現実社会で傷ついた人が、ゲームで癒やしを得るのか。それは単純にどのような類のゲームにおいても、それなりの成功が約束されているからだ。

一人でプレイするゲームでも、みんなで遊ぶオンラインゲームでも、基本的にはプレイすればするほど自身のプレイスキルは成長する。ガチャであれば、回し続ければいずれは大当たりが出る。その点においてゲームは私達にある程度、平等に成功体験をもたらしてくれる。

一方で仕事はクソゲーである。一生懸命に働いても評価されないのはもちろん、自分の成果を何の関係もない上司が持って行き、下っ端は休みも取れないのに、上の人間は海外旅行でダラダラと過ごしている。八方美人の同僚はあちこちでサボっているのに評価され、自分はその同僚の分まで働いているのに、鼻つまみ者扱い。そんな話は掃いて捨てるほどそのへんに転がっている。

石川啄木は「はたらけどはたらけど なお我が暮らし楽にならざり ぢっと手を見る」と詠んだが、いまならゲームでもしまくるのが自然だろう。

ただ、ゲームが命を救ったとはいえ、その後の人生においてゲームが重荷になってしまうようなら、それは確かに問題である。本人が「ゲームを辞めたいのに辞められない」ということを強く思っているのであれば、ゲーム障害に対する治療も必要であろう。

一方で、それこそビットコインあたりですでに10億円くらい儲けてしまい、あとは一生ゲームで遊んで暮らそうと考えている人が寝食以外は延々と楽しんでゲームをしていたとして、それがなにか問題になるだろうか?

世の中にはゲームのやりすぎで死んだ人というのは、たしかにいる。(*4)

しかし仕事による過労死で毎日一人以上死んでいる(*5)ことに比べれば微々たる数だ。長時間ゲームをしている人の多くは、それなりに適切に休んでいるし、食事もしている。何より疲れ果ててボーッとした頭では仲間たちを納得させられるプレイもできないのである。

ゲーム障害とはあくまでも現実社会がままならないが故の依存であり、依存に対する対策は対処療法としては評価できても、決して根管治療ではない。お金の分配機能を仕事に任せた結果、雇い主が労働者の生殺与奪を自由にできてしまう。結果、分配がうまく行かずに仕事という社会から排除される個人が生まれてしまうという社会構造こそが、問題の根幹なのである。

この先、実際に国際疾病分類が改定され、ゲーム障害が疾病とみなされると、これを話題にゲームに対する偏見を振りまく人も増えるだろう。そうしたときにちゃんと反論できるだけの論拠を、ゲーム好きとしては持っておく必要があるだろう。

*1:やめられない「ゲーム障害」は疾病 WHOが定義へ(日本経済新聞)
*2:スマホ依存外来、神大病院に開設 脳画像で進行度判定(神戸新聞NEXT)
*3:ハートネットTV シリーズ ゲーム障害 第1回▽わたしって“病気”ですか…?(NHK)
*4:86時間続け…「ネトゲ廃人」死者も 韓国、国挙げ対策(朝日新聞デジタル)
*5:過労死で毎日1人以上の労働者の命を奪い続けている日本、電通過労自死事件は氷山の一角(国家公務員一般労働組合 BLOGOS)

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