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行政改革は主張の決意とやる気次第。コンサルタントはそのビタミン剤です。 - 「賢人論。」第63回上山信一氏(前編)

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慶應義塾大学総合政策学部教授で、経営コンサルタントの上山信一氏は、企業のコンサルティングのみならず、政府機関や地方自治体の行政改革プロジェクトを数多く手がけ、日本に「行政経営」や「政策評価」の概念を広めた改革プロデューサーである。元大阪市長の橋下徹氏のブレーンとして、問題の多かった大阪府市の行政の体質改善をなし遂げたことは記憶に新しいが、この3月末まで約1年半「都民ファースト」を掲げる小池百合子知事がひきいる東京都庁の特別顧問としても活躍されてきた。日本の行政の問題点とは何なのか?さまざまな話を上山氏に聞いた。

取材・文/ボブ内藤 撮影/小林浩一

行政の費用対効果をチェックすると「目からうろこが落ちた」と言われた

みんなの介護 上山さんが「行政評価」「行政経営」という言葉を日本に広め、民間企業の経営手法を行政に導入するようになったのは、最初に旧運輸省で社会人としてのキャリアをスタートさせたことが大きいのでしょうか?

上山 旧運輸省に入ったのは、旅が好きで鉄道ファンだったからです。別に政治家志望などではなかった。6年経ってマッキンゼーの経営コンサルタントに転職しましたが、自分自身の”民営化”と民間のいろんな会社の仕事を見てみたいと思ったからでした。

みんなの介護 そんな上山さんが行政評価に関わることになったのは、今から20年前マッキンゼーの共同経営者をしていた1997年頃からだそうですね。どんなきっかけがあったんですか?

上山 当時は橋本龍太郎さんの第2次橋本内閣が「行政改革会議」を設置して、省庁再編や公共事業の見直しなどに取り組み始めた頃です。官僚や改革派議員の人たちに招かれて経営についての勉強会をやったのが最初ですね。

あの頃の官庁には、企業では当たり前の業績評価、すなわち、「投入した予算(インプット)と整備水準(アウトプット)を測定する手法」がまだ浸透していなかった。受け手の利便性や満足度などの成果(アウトカム)を指標とする手法もなかった。これらを紹介したら、「目からうろこが落ちた」とか「こういうことをやるべきだった」と喜ばれたのです。

みんなの介護 1998年に上山さんが上梓した『「行政評価」の時代(NTT出版)』は大きな反響を呼びますが、批判もあったそうですね。

上山 当時は経営=金儲け。役所には関係がないとか、神聖な行政の現場にお金の話は持ち込まないで欲しいといった意見が結構あった。出版社の人でさえ、最初は「“お上”のやることを評価するというのは違和感がありますね」と言っていたくらいです。

なぜそういう状態だったかというと、1990年代は財政赤字が今ほど深刻ではなかったから。数字にしにくい行政の費用対効果をチェックしようなんて言い出す人も役人や市民団体にはあまりいなかった。政治家や納税者も今みたいにうるさくなかった。

そんな中、本を出した同じ年に大蔵省接待汚職事件、別名「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」が起こって官僚たちと業界の癒着体質があらわになった。そして社会のあちこちで役人批判が強まっていった。

おりしもバブルが崩壊し、政治家も官僚も国と地方の借金が膨れあがっていくことへの危機感が高まった。そこで事業の成果をメリハリつけて見直す「行政評価」の考え方が全国に普及します。特に三重県などが注目される。さらに2000年には政策評価が国の法律でも義務づけられるようになって現在に至る。そんな感じでしょうか。

自治体改革をお引き受けすることは少ない

みんなの介護 上山さんは90年代後半に神奈川県逗子市のアドバイザー(顧問)を務めたのを皮切りに、福岡市、大阪市、愛知県、奈良県、新潟市、東京都など、数多くの自治体の改革にたずさわってこられました。しかし、いまだに改革できずに問題を抱えた自治体が多いのはどうしてですか?

上山 私はいろいろな自治体から「行政改革に手を貸してほしい」と相談されますが、すべて引き受けるわけではありません。お断りすることも、もちろんあるんです。

そもそもボランティアに近い安い委員報酬でやっているし、外部委員やコンサルタントというのは一種のビタミン剤のようなものでしかない。明らかに「無理」な改革に手を貸すことはありません。

みんなの介護 なぜ改革が「無理」だとわかるのですか?

上山 わりとすぐにわかります。トップである首長に決意とやる気があるかどうか。やる気があっても、議会の多数派と対立して首長の力が弱すぎる場合は途中で失敗する。なので、自治体改革はお引き受けするよりお断りするほうが多いです。

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