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園子温が語る「日本の女性たちが自由を使いこなすために必要なこと」-「文春オンライン」編集部

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『愛のむきだし』をはじめ、鮮烈なヒロイン像で熱狂的な支持を集めてきた園子温監督が3年ぶりのエッセイ集『獣でなぜ悪い』(文藝春秋)を上梓した。吉高由里子や満島ひかりらとともに現場でもがいた苦闘の日々や現代日本の閉塞と向き合った、女性論にして自由論だ。

監督を務めるハリウッド進出作『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド/Prisoners of the Ghostland(原題)』の製作発表もされた現在の思いを語った、野性味あふれる特別インタビュー。

女性の商品化に異議申し立てをしたい


『獣でなぜ悪い』(園子温 著)

――園監督はこれまで数々の作品において、観客の度肝を抜くような新鮮なヒロイン像を打ち出してこられました。女性の人物造形の豊かさ・奥深さは、園子温映画における重要な要素ですが、今回なぜ女性をテーマに本を書いたのでしょうか。

 これまでは自分の来歴や映画について書いたエッセイが多かったんだけど、今回は女性たち、女優たちについて正面きって取り組んでみたかったんです。なぜなら、自分の人生の大半は女性によって支えられていたし、女性が主人公の映画を撮ることで面白いものが生まれ、そこから大きなパワーをもらってきたから。

しばらく前に『アンチポルノ』(2017年1月公開)という映画を撮りましたが、最初「ポルノ映画をとれ」という指示がきて、でも僕は絶対ポルノ映画は作りたくなかった。

だから“アンチ”ポルノ映画にしようと、女性をセックスの商品として扱うことが、ある種の市民権を得ている日本の状況に対して、僕なりの異議申し立てをしたいと準備を進めていた時にちょうどこの本の話がきました。女性たちについて深く考えるのは面白そうだったから引き受けたんだけど、あとから考えたら大変なテーマでしたね(笑)。

MeToo運動と日本の女性とのあいだにある溝 

 当時、映画の脚本に「この国の女は誰ひとり、自由を使いこなせていない」と書いたんだけど、日本の女性たちは全体に抑圧されているように思う。

以前、ある映画をみていたら羊たちの群れが、柵を開けられて逃げるよう促されても、怯えて出てこないシーンがありました。羊たちは震えていて、身を寄せあったまま出てこない。その姿がふと日本の女性たちに重なってね。もっと自由になっていいんだと言われても、安全な柵の中から飛び出せない。

かたや欧米の女性たちは、MeToo運動に代表されるように、社会の中で声を上げて、権利や居場所を勝ち取ってゆき、自由への道へと歩いていっている。先日アメリカのアカデミー賞の授賞式を見ていたら、MeToo運動の余波で、男女の受賞グループが出てくると「男4人とグレタ・ガーウィグさんです」とか、名前を呼ぶのは女性だけ(笑)。

ここまでやると男に対して逆差別だし、だいぶ顰蹙を買って視聴率はガタ落ちだったみたいだけど、やりすぎてしまうくらいのパワーは頼もしい。日本の女性たちには、もっと自由に、自らの足で歩いていく獣のようであってほしいと思う。

四畳半風呂なしの生活からやり直してもいい覚悟

――「安全な柵の中から飛び出せない」傾向というのは、互いの顔色を窺って抑圧的にふるまう国民性が根強くあるのかもしれませんね。監督が映画界の異端児として、ある意味、日本的な「空気」は読まずに、自由に作品を作ってこれた原動力は何でしょうか。

 ひとことで言うのは難しいんだけど、僕の根っこには「危険は正しい」という感覚があります。17歳の時に家出をして、東京に飛び出してきた時の感覚をいまもつねに持っていて。「いまやらないと絶対にいつまでもやれないな」、「重力に逆らえないと思った瞬間に二度とチャンスはない」――そう思って飛び出した時めちゃくちゃに面白かった。

いま、日本で監督をやっていく安定よりも世界の映画のマーケットの中に飛び込んでいっているのも、17歳の時の感覚と同じで、とにかく面白いから。リスクは高いけれどあえてやっていくことが自由を獲得する源泉になります。成功すればより多くの自由を手にいれられる。

僕にとっては、17歳の感覚がなくなるのが逆に恐怖。大げさに言えば、全財産を妻にあげて裸一貫で再スタートしてもいいと思っています。僕は40過ぎまで大半が四畳半風呂なし・トイレなし生活だったけど、あの生活からもう一度やり直したとしても全く恐怖は感じない。むしろわくわくする。なるべく人生で執着するものを持たず、守りに入らないようずっと訓練してきましたから。

実力を試すにはハリウッドに行かないと

――リスクをとって、海外の現場でも勝負に挑んでいくわけですね。今回、ニコラス・ケイジ主演の『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド/Prisoners of  the Ghostland(原題)』の製作発表がなされ、話題を呼んでいます。

 ハリウッドで映画を撮りたい気持ちはずいぶん前からあって、実は『愛のむきだし』の頃から現地にプレゼンに行ったりしていたんです。なかなか実現できなかったんだけど、3年くらい前からにわかにアメリカでも僕の名前が浸透して、映画関係者の間で評判になって、実現の道筋がついた。

ニコラス・ケイジも『地獄でなぜ悪い』とか『TOKYO TRIBE』が大好きで(笑)。借金を返し終わってもう自由の身になって、「これからはギャラじゃなくて出たい映画に出る、その第1号が園子温映画だ」と出演を決めてくれたんです。

僕は小さい頃から洋画が染み付いていて、大好きなのはイングリッド・バーグマンやジョン・ウェインだったから、やっぱりハリウッドには特別な思いがある。ちょうど野球選手がメジャーにいきたがるように、本当に実力を試すにはハリウッドに行かないと気がすまないというか。とにかくど派手な作品になりそうだけど、映画はダイナミズムに満ちていないと面白くないからね(笑)。

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