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「弁明は虚偽」前監督&コーチを事実上”永久追放”!関東学生アメフト連盟の処分に公平性は



 アメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦で日大選手が関学大選手に悪質なタックルをして負傷させた問題。真相究明のため、被害選手側は警察へ被害届を提出、日大は第三者委員会を設置した。

 そんな中、関東学生アメリカンフットボール連盟が29日、都内で臨時理事会を開き、過度な反則行為は日大の内田正人前監督と井上奨前コーチの指示だったと認定、両名を最も重い「除名処分」とした。また、森琢ヘッドコーチは二番目に重い「資格の剥奪(登録の抹消)」処分を受けることになった。



 そして反則をした宮川泰介選手と日大アメフト部については、公式試合の2018年度シーズン終了までの出場資格を停止。宮川選手については、この件についての反省文を連盟に提出し、規律委員会との面談で再発の懸念が払拭されたことが確認でき、かつ連盟の理事会で承認されれば、処分が解除されるという。同様に、チームの処分も一定の条件を満たせば解除されるという。

■内田前監督、井上前コーチの証言を全面否定、根拠はあるか?

 内田前監督と井上前コーチが受けた除名処分は、事実上のアメリカンフットボール界からの"永久追放"という重いものだ。連盟側はこの処分について、会見での両氏の証言に嘘があったことを理由に挙げている。日大側は、宮川選手が反則行為をした背景には、指示に対する認識の乖離があったと主張していたが、連盟は「認識の乖離はなかった」と明言、日大側の主張を全面否定する格好になった。



 その根拠について、連盟の森本啓司専務理事は「思い切りプレーすることは当然であって、それをこの時期に3年のレギュラーである宮川選手に言うことは不自然」「"クオーターバックを潰せ"という指示や、"(相手選手は)友達じゃないだろ"と聞いたことは、友人にはとてもできないことをしてこいという意図が込められていた」「選手・審判・観客などから聞いた内容が宮川選手の話と一致。宮川選手の言っていることは真実と確信した」と説明した。その一方、「経験則から言ってありえない。おおよそすべてに信用性がない」などとするなど、日大側の主張を退けるに至った客観的な根拠が存在しているかどうかについては疑問の声もある。



 29日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演したスポーツ団体のガバナンスなどに詳しい境田正樹弁護士は「概ね妥当な判断だと思うが、もちろん連盟の処分には弁護士も入っているが、捜査機関ではなく、あくまでも民間団体による判断。最終確定というわけではない。また、連盟は内田前監督、井上前コーチの言っていることを全面否定したが、そう言い切るのは簡単なことではない。警戒していない選手に対し、後ろからタックルをして怪我をさせる、という具体的なところまで両氏が指示したのか、あるいは想定していたのか、そこは分からない。森本理事のいう"内田前監督が(反則行為を)見ていた"と言う指摘も、ぼーっと見ていたということはありあるし、嘘発見器などの客観的なデータがあればいいが、全部嘘だったと言い切るのは法律家の感覚からすると無理があるなと思う」と指摘。

 「様々な協会や競技団体で処分を受けた側が日本スポーツ仲裁機構などに不服申し立てをすることがあるが、実はこの十数年で46%が覆っている。両氏が不服申立てをする可能性はある。自分が内田前監督の立場だったら、場合によってはケガさせてもいいが、あのプレーまでは要求していないと思っていたと主張するだろう」。

■世間を納得させるためのもの?

 一方、元アメフト選手の秦英之氏は、(連盟側の主張の方が)アメフト業界の中では一本筋が通っているという認識。説明がクリアで、現場の視点もしっかり反映させながら対応したことが明確に伝わってきた」と話す。



 「"経験"という言葉の伝え方が難しい面はあるが、森本専務もおっしゃっていたとおり、前提として"潰し合い"とか"やってこい"という言葉は頻繁に使われている。ただ、今回の第1プレーは、あらゆる経験者が"ありえなかった"という意見で一致している。その上で、フェアプレーを前提としてやっている中で、なぜ暴走してしまったかということについて、一つ一つの根拠を繋げていくと辻褄が合う。宮川選手への処分は、選手の立場からすると非常に辛い。ただ、やはり"ありえないプレー"をしてしまった事実についての責任はあるだろう」。

 慶應大学特任准教授の若新雄純氏は「テレビ視聴者の中に、きっちり裁いてほしいという雰囲気がすごく強く、それが先行してしまっている気がする。連盟の判断・処分は、世間を納得させるためのものなのではないかと感じた」と話す。



 そして、「宮川選手が追い込まれてやらざるを得なかったという説明をするなら、30歳で未熟だった井上前コーチが、あのようにやっていかないと生きていけなかったという側面もあるはず。30歳でアメフト界に二度と戻れないという処分は重すぎるのではないか。また、宮川選手は日本代表にも選ばれるほどの選手。そんな選手が明らかに反則だとわかる行為をした。夢を持ち、人生をかけてやってきたからこその行動なのかもしれないが、刑事事件になった場合、成人男性が自覚した上でやったのであれば、当然罪に問われるはず。それなのに反省文を書けば許すというのは、軽い気がする。たとえば上司に言われたからといって横領しましたという社員を軽い処分にするだろうか。やはり連盟として、この騒動をうまく収めようという意図があったのではないか」と指摘した。

 最後に境田弁護士は「この問題は、日本大学という組織のナンバー2が事実上牛耳っているアメフト部という特殊な世界で作られたという側面もある。だからこそ、コーチも絶対に従わなくてはいけないという環境になっていた。それを私立大学の法人と一体となり、執行部が直接関わってきたという点は、単なる運動部の中だけの話にとどまらない。特殊な要因があった。教育基本法には生徒の学習権を守らなければならないという規定もあるし、2011年にできたスポーツ基本法では、選手がスポーツをする権利が明文化されている。ところが今回の事件でわかったのは、日大アメフト部で人権抑圧が恒常的に行われてきたということ。そういうことも含めて、本当の責任をもう一度考えないといけない」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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