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日大記者会見問題とテレビ取材の在り方


トップ写真)イメージ/出典)Pixabay

安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・日大の記者会見で司会者とメディア側で衝突。

・日大は、テレビ局が番組毎に同じような質問をする、と指摘。

・テレビは局ごとの代表取材も考えてよいのではないか。

【この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイト でお読みください】

日大の記者会見が批判の嵐に晒されている。確かにクライシス・マネジメントの観点からは零点だろう。PRコンサルタントがついてないのではないか?と思うくらい稚拙な会見が続いている。

そして、大塚吉兵衛学長が会見をした。その時に大荒れにあれた内田正人前監督と井上奨前コーチの会見を仕切った広報部の米倉久邦氏の会見について質問が出た。「司会と記者のやり取り見て感想を聞かせてくれませんか?」というものだった。それに対して学長は「番組ごとに同じ会社が別な絵を撮りたがっている一社でまとまって来てくれればな、というような気持ちが強くてですね、同じ局なのに3つ4つも番組ごとにクルーが分かれていて同じ質問を自分の番組の絵にしたいというのが(米倉氏は)ちょっとイラついたのかな、と。(米倉氏は)『番組ごとに絵を撮ってんだよ。自分のところの質問者が質問している絵が欲しいんだ。』と説明していた。」と述べた。その上で米倉氏について「態度として良くなかった。」とした。

この会見を見ていて、私は米倉氏がなかなかテレビのことが分かっているな、と思った。氏は共同通信出身、つまり活字の人でテレビの事はあまりわからないのかと思ったがどうしてかなり詳しかった。正確に言うと「絵が欲しい」というより、「質問者が質問している音が欲しい」とうことなのだが。絵はあくまでおまけで「xxx(テレビ局名・番組名)のxxx(名前)です。お聞きしますが・・・・・」という音声で番組内に流れることが大事なのだ。その顔を撮ろうと思うともう1カメ、会見用とは別に手配しなければならないので、番組としては若干ハードルが高くなる。

それはさておき、最近の記者会見を見ている人は気づいているだろうが、テレビ局は番組ごとに取材クルーを出すことが多い。それは番組ごとの編集方針のもと、独自性を出したいからだ。各番組はキャスターやディレクターを現場に送って取材させるので、いきおい、同じ局で複数の人間が質問する、ということが起きるのだ。通常、番組ごとの連携はない。

米倉氏はそれをよくわかっていて、「自分のところの質問者が質問している絵を欲しいんだ。」という発言になったのだと思う。この、「テレビ局はしょせん『演出』として質問者を送り込んでいる」、という認識は正しい。視聴者は見ている番組のキャスターが舌鋒鋭く質問しているシーンに共感するだろう。番組制作者は、それにより、「番組の信頼度向上を期待しているのだ。それをもってテレビ局の「演出」と捉えることは間違ってはいない。米倉氏はテレビがそういう「演出」を行っていることを知っていた。同じような質問をキャスターもしくは番組のディレクターが次々としてくることにいら立っていたのだろう。同じように感じている視聴者も多いに違いない。

実はキャスターがスタジオから飛び出して現場で取材するようになったのは最近のことだ。こうしたスタイルを確立したのは、私は安藤優子氏ではないか、と思っている。フジテレビ系列の「FNNスーパーニュース」(1987年10月~1994年3月)で安藤氏は1991年湾岸戦争を現地で取材している。当時としてはキャスターが現地取材をすることは画期的だった。

写真)安藤優子氏
▲写真)安藤優子氏/出典)フジテレビ「直撃LIVE!グッデイ」

その後、1990年代に入り、報道番組のワイドショー化が進み、アナウンサーを現場に出してリポートさせることが徐々に増えていった。本来は現場で取材している記者がリポートするべきと筆者は思うが、ルックスや話し方のうまさなどで、「演出」上、キャスターという名のアナウンサーが現場に派遣されることが増えていった経緯がある。

安藤氏のように自分で取材をし、現場で五感を使って取材した内容を自分の言葉で視聴者に届けることは、ニュースを多面的に報道するという観点から評価すべきことだと思う。そして、多様な見方・分析を伝えることは視聴者の利益になると思われるので、番組ごとにキャスター・ディレクターが現場に出ることは良いことだと思う。したがって、各番組のキャスターが出てきて同じような質問をするな、という態度は視聴者の利益を無視していると感じる。

ただ、もし同じ局で複数のキャスター・ディレクターが同じような質問を繰り返したのだとしたら、それは批判されても仕方ないと思う。仮に同じ質問をしようと思っていたとしても、先の質問に対する取材対象者の回答を聞いたうえで、さらに突っ込んだ質問をすればよいだけの話だ。

日大宮川泰介選手の記者会見の時に誰もが知りたかったのは、「監督コーチはどのような指示をあなたにしたのですか?」、「その指示はボールを持っていない相手側の選手を不意打ちして怪我させろ、というような指示だったのですか?」、「『潰せ』と言われた時、あなたは何故その指示を、プレーしていない相手選手に怪我させて試合に出場できなくすることだと思ったのですか?」、「そのような指示は日常茶飯事だったのですか?」、「あなたが危険プレーをしてベンチに戻ってきたとき、監督・コーチはあなたになんと言いましたか?」、「試合後、何故あなたは泣いていたのですか?」、「代表を退け、と言われたり、直前の試合に出してもらえなかったりしたことは、監督・コーチからの指示に従うことにどう影響したのですか?」などの具体的なものであるべきだったろう。

写真)日大宮川泰介選手の記者会見 2018年5月22日
▲写真)日大宮川泰介選手の記者会見 2018年5月22日
出典)公益社団法人 日本記者クラブウェブサイト

1人のテレビの取材者が、「あなたにとってアメリカンフットボールとはどのようなものですか?」と聞いたときには「一体何を聞いてるの?」と思った人は多かったはずだ。

テレビの人間は、米倉氏の批判を受け止め、自分たちが何をすべきか考えた方が良い。1つには取材力・質問力の向上だろう。キャスター・ディレクターが現場に出ることは良いが、ちゃんと取材した上で質問するようにすべきである。もう一つは、局内でのプール取材の実施だ。プール取材というのは代表を決めて取材を行うことをいう。本来、取材する側から代表取材を持ち出すことはないが、局ごとに質問者を絞り、質問内容を重複しないようにする工夫はあってしかるべきだろう。事前の調整が面倒くさいというのはわかるが、今後取材される側から今回のような批判が出る可能性は大いにある。局内で議論の俎上に乗せてよいと思う。

世間の耳目を集めるようなニュースの場合、複数のインターネットメディアが生中継することはもはや当たり前のことになった。1個人ですらFacebookやLINEなどのアプリからライブ配信できる時代だ。取材するテレビ局の人間も、多くの一般視聴者の目にリアルタイムで晒されているという自覚が必要だ。

今回の日大広報の問題はテレビ局にも課題を突き付けていると言えよう。

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