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特集:貿易から見た「受け身の日本経済」

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しばらく国際情勢モノが続いたので、本号では久しぶりに経済を取り上げてみます。

2018年の年初には、「ひどい政治と好調な経済」(FT/マーティン・ウルフ)などと言われていたものです。ところが1-3月期の世界経済は今ひとつで、日本などは9四半期ぶりのマイナス成長でした。つくづく海外が悪いと日本も悪くなる。いつの間にか日本経済は外需の影響を受けやすい「受け身形」になっていて、その傾向はどんどん強まっているように思われます。

こんな経済が「通商戦争」に直面したら、ひとたまりもないかもしれません。貿易統計を手掛かりに、日本経済の現状を考えてみました。

●1-3月期の日本経済はひと休み

今週発表された月例経済報告では、基調判断は据え置きとなった。「景気は緩やかに回復している」という文言は、今年1月に上方修正されて以来5カ月連続で変化がない。個人消費、設備投資などの「各論」部分も、先月とまったく変化がなかった。

真面目な話、基調判断が変わるのは、近年ではほぼ「半年に1回」のペースである。いつものように、上方修正を+1、下方修正を▲1として表したものが次ページのグラフである。日本経済全体としては、2012年末からずっと景気拡大が続いていることになっている。ただし細かく見れば、2016年に短い「景気の底」があったように見える。そこから丸2年もかけて、基調判断の変更はようやく3回だけ、しかも2014年の消費増税直後の水準にやっと戻って来たに過ぎない、と考えるといかにも徒労感がある。



ところが1-3月期は、久々のマイナス成長(年率▲0.6%)であった。このところ順調に伸びていた名目GDPも減っている。ちょうど5年前の2013年1-3月期と比較すると、名目GDPは年平均+2.0%成長、実質GDPは年平均+1.2%という渋めの数字になる。アベノミクスの5年間はそこそこの成功とも言えるが、物足りないとも言えよう。



それではこの1-3月期のマイナス成長は、ごく一時的な調整なのか、それとも本格的な景気腰折れの怖れがあるのだろうか。

実は今年1~3月の間に、わが国の就業者数は141万人も増えている。いつも指摘している通り、人口減少が続く中でも高齢者や女性を中心に働き手が増え続けているのである。5月の月例報告「関係閣僚会議資料」によれば、第1四半期の名目総雇用者所得は前期比3.5%も増えている。ところが、それがほとんど個人消費には反映されず、前期比で▲0.0%に終わっている。それくらい将来不安が強いということなのだろうか。

●日本経済は輸出(モノづくり)が命

つくづくこの国の内需には期待し難い。確かに個人消費という面では、期待できるのはインバウンド=外国人観光客くらいだったりする。そこで外需(輸出)に注目しなければならないのだが、5月21日に公表された4月の貿易統計が朗報であった。

通関統計は月次によるバラつきがあるので(左図)、前年同月比の変化率で見る方が分かりやすい(右図)。これで見ると輸出は2016年には沈滞し、17年が好調であった。そして18年の1~3月は落ち込んだけれども、4月の輸出は前年同期比+7.8%と再び反転している。内訳は数量が4.6%増、価格が3.1%増で、数量が先行しているのもいい形である(通常、数量が増えれば、金額も後を追って増える)。



これくらいであれば、来週5月31日に発表される4月の鉱工業生産もそう悪くない結果が出るだろう。過去に何度も指摘している通り、日本のモノづくりは輸出次第である1。貿易依存度は25%程度と低いのに、なぜか昔から鉱工業生産は輸出の実額とそっくりなグラフを描く。輸出と鉱工業生産が4月以降にちゃんと伸びてくれるようなら、4-6月期のGDPは再び上昇軌道に乗るだろう。1-3月期のマイナス成長は、天候などの理由による特殊要因と位置付けることができる。

察するに普通の経済では、供給力が一定であって需要の増減によって景気サイクルが起きる。ところが日本経済は供給力に比して需要が弱過ぎる。そこで輸出が強いときだけ好況感が生じるのだが、いざとなれば外需は断ることもできるので、景気が過熱することが少ない。結果として、景気サイクル(物価の上昇など!)が起きにくくなっている。

●外需に振り回される「受け身の経済」

最近の日本経済は、「輸出と外国人観光客」という対外要因に依存するところが大きくなっている。いわば「受け身の経済」であるわけで、実際に為替や原油価格に揺さぶられやすい体質である。もっともこのことは、1980年代の「バブル経済」が崩壊して以降、ずっと続いていることかもしれないが。

そこであらためて貿易の中身を調べてみると、輸出の上位10品目は2005年当時と2017年ではほとんど変わっていない。わずかに、「半導体等製造装置」が新たに加わっただけである。ちなみに2017年(暦年、以下同)、半導体等製造装置の輸出は2.6兆円(前年比31.7%)と絶好調であった。AIやビッグデータの世界的ブーム到来により、アジアを中心にデータセンターなどの建設が加速しているからであろう。



輸入では「通信機」と「医薬品」が伸びた。2017年実績は、それぞれ3.1兆円(+14.2%)と2.6兆円(-4.9%)である。通信機と言えば、1990年代には輸出の花形品目のひとつだったのだが、それはファクシミリが売れていた頃のことである。今では通信機といえばもちろんスマホであり、実に2.3兆円分が中国からの輸入である。

これらの変化はいずれも外来のものであって、日本発の画期的な新製品、新技術が需要を開拓したわけではない。つまり中身的にも「受け身」なのである。それでも日本の製造業には、一定のクオリティの製品を作る能力があるし、改善もあるから一気に競争力を失うということもない。かくして輸出78.3兆円のうち、ざっくり6割を機械機器が占めている。それもB2B(産業向け)製品に強みを有している。

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