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企業等不祥事における第三者委員会ガイドラインの解説

Daisanhakaisetu 皆様、テレビや新聞で御承知のとおり、八百長相撲に関する特別調査委員会の調査報告について、「クロ」と認定された力士や親方よりブーイングの声が上がっております。親方衆の処分見直しの要請を、最後は理事会がタンカを切って思いとどめさせたことが報じられておりますが、「到底、調査委員会の裁定には納得ができない。訴訟も辞さない」と堂々とインタビューで答えておられる力士の方もいらっしゃいます。私自身も、別件の現在進行形の調査委員の業務におきまして、認定内容を支持する方々からは評価されるものの、その内容に不満の方々からは「あの弁護士はなんだ!」「ちょっと個人的にもう一度再考するよう面談を申し込みたい」「名誉毀損ではないか」など、いろいろとプレッシャーをかけられております。プロとして公正、独立の立場をもって不正調査を行う業務をご理解いただく範囲では、丁寧にご説明を差し上げておりますが。



企業の皆様方におかれましても、大相撲特別委員会の調査結果に対する関係者のコメントなどをご覧いただければ、企業不祥事が発生した際の第三者委員会は「けっこうしんどい作業」に従事するものであることをご理解いただけるのではないでしょうか。当ブログでも時々ご紹介しております日弁連「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」でありますが、このほど商事法務さんから、本ガイドライン作成に携わった方々によるガイドラインの解説書が発売されました。企業の不祥事だけでなく、大阪弁護士会が取り組みました学校法人における不祥事調査などにも活用されるため「企業等」とされております。



企業等不祥事における第三者委員会ガイドラインの解説(日弁連 弁護士業務改革委員会 編 商事法務 2400円税別)

土曜日にご紹介いたしました書籍同様、こちらも本業に関連するものゆえ、早速全てに目を通しました。こういった解説本が出る・・・ということは以前から聞いておりました。「どうせ解説といっても、ガイドラインの内容をなぞった程度だろう」と予想しておりましたが、いえいえ、本当にガイドラインの内容を深堀りした解説となっております。おそらく、本解説書の内容を公表するについても、あらためて各執筆者間での調整が必要だったものと推測されます。逐条解説の内容も詳しく、また参考判例や文献などの引用もあり、第三者委員や事実調査関与弁護士等に就任希望の方々には必読の一冊であります。さらに、各企業さんにとっても、平時の常備薬として、一社に一冊、ご購入されますことをお勧めいたします(巻末に、第三者委員会と企業との業務契約書ひな形も添付されております)。個人的にお勧めの箇所は、私自身も3月29日の社団法人企業研究会(麹町)のセミナーにて詳細に解説させていただきました「第三者委員会ガイドラインによる第三者調査を見据えた社内調査の在り方」であります。これはガイドラインではほとんど触れられていなかったところであり、この解説書では第5章で危機管理で著名な弁護士の方による解説が施されております。ここが一番、不祥事発生(発生の疑いのある)企業さんにとって知っていただきたいところかと。

少し気がかりな点は、日弁連ガイドラインと日本監査役協会さんの監査役監査基準第24条との関係ですね。この3月に改訂された監査役監査基準では、第三者委員会と監査役との関係について、新たに1条を設けております(公開草案に比べて、正式な条項では相当に変更されております)。監査役会と第三者委員会とのコミュニケーション、独立社外監査役は第三者委員会の委員に就任できるか等、実務上整理しておくべき課題が少しばかり残っているように思われます。果たしてこのガイドラインは現実企業における監査役(または監査役会)を、「理想の姿」で受け止めるのか、それとも「現実の姿」で受け止めるのか、今後の課題であります。また(これは本書に書かれているものではございませんが)、なにゆえ元高検検事長といった方々が第三者委員会の委員長として就任されるケースが多いのか、それは単に事実認定の巧拙や事件の組み立てに長けている、ということだけからなのか、といったあたりを「ぶっちゃけ」のホンネで考える良い機会にもなるのではないか・・・・などと考えたりもしておりました。

「本ガイドラインを策定するにあたっての最大の論点」(26頁)とされた、「第三者委員会は誰が依頼者なのか」という問題につきまして、ぜひ本書をお読みになって、読者ご自身の理解を深めていただければ、と思います。私自身も、本解説書を拝読し、勉強させていただきました。ただ、一抹の不安もございます。ステークホルダー、ひいては第三者委員会に期待する社会総体こそ真の依頼者である、という論調は、どこかで聞いたフレーズであります。忘れもしない 2003年のRCC(整理回収機構)の詐欺告発事件。弁護士が普段手にしたことがない権力を手にしたことによって、その濫用が問題となり、明治生命さんから告発を受け、東京地検特捜部が動き、優秀な弁護士の方々が懲戒処分となり、最後は元日弁連会長さんが弁護士廃業届を出して終結した事件であります。我々弁護士は、報酬をいただく依頼者のために全力を尽くすことには慣れておりますが、社会の公器として権限を行使することには不慣れであります。たとえ「行き過ぎ」があったとしても、社会のため、国民のため、という正当化根拠によって判断が曇ってしまう現実を、当時私は(問題となった当該事件の)RCCの相手方代理人として目の当たりにしてまいりました(そういえば、あの事件はきちんと検証されないままだと思われます)。「弁護士が社会の公器として、その権力を行使するにあたっては、謙抑的でなければならない」ということは何度かこのブログでも申し上げましたが、これは当時私が体験した事件の教訓によるものであります。

広くステークホルダーのために第三者委員会が活動することは大いに賛同するところでありますが、その活動方法については、今後の委員会の実務経験を通じて、さらに検討していくべきところではないか、と考えています。

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