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夫の海外赴任に帯同する妻は本当に恵まれているのか? ~置き去りにされている家族の心~ - 女性が日常で感じているモヤモヤ⑤

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私が運営しているカエルチカラ・プロジェクト(目の前の課題を変えるための一歩を踏み出せる人を増やすことを目指す)言語化塾(https://www.facebook.com/kaeruchikara/)では、女性たちに日頃感じているモヤモヤを言葉にして整理してもらっている。また、私自身、2017年春から駐在妻としてシンガポールで過ごしており、アイデンティティクライシスを経験して試行錯誤してきた。

今回は、私が運営している海外×キャリア×ママサロン(https://lounge.dmm.com/detail/293/)の参加者でもあり、言語化塾の参加者でもある奈々さん(ペンネーム、40歳)の作文から。日本でバリバリ働いていた女性が駐在妻になったときに感じる苦悩とその解決策とは――。家族の支えを前提にするような駐在員の働き方にも課題はあるものの、帯同する配偶者にも企業からの支援や本人の心構えで解決できる部分があると奈々さんは考える。

駐在妻に憧れる女性は多い?

「夫の海外赴任が決まり駐在妻になります」と聞くと、あなたはどんな風に感じますか?そもそも、あなたは「駐在妻」にどんなイメージを持っていますか?

よく持たれがちなイメージは“華やか”“贅沢”、ではないでしょうか。広い豪華なマンションに住み、習いごとをして、頻繁にホームパーティをしている、地域によってはメイドさんがいて、お抱えの運転手がいてなんでもやってくれる、そんな風にイメージされる方も多いかと思います。そういったイメージから、「羨ましい」「憧れる」とポジティブな面ばかりフォーカスされる駐在妻。確かに、そういった環境の方もいるでしょうし、華やかな生活を楽しんでいる方もいるでしょうから、憧れる側面があるのは事実です。

でも、そうではない側面については、あまり光が当てられていないような気がします。夫の海外赴任に伴い、17年間働いた会社を退職して帯同した私の経験から、駐在妻が陥りやすい心の問題について、お話しします。

元ワーママ駐在妻が直面した問題

私は、大学卒業後、大手IT企業に入社し、システム開発、法人営業の仕事をしてきました。長時間労働が日常のIT業界。女性であろうと容赦なく、深夜残業や休日出勤をこなし、1日のほとんどを会社で過ごすような20代でした。

当時は就職氷河期で女性の内定取得はかなり厳しく、花形であったIT業界は特に狭き門でしたので、入社後は誇りをもって仕事に臨みました。社会に役に立つシステムを構築するという使命を感じ、女性だからと軽視されることもなく責任のある立場を任されることにやりがいを感じ、仕事に没頭しました。

30代は2回の育児休暇を取得し、短時間勤務で復職したため、いわゆる“マミートラック”にはまりました。それまでの責任ある仕事に比べると、誰かのサポート役というポジションを不本意に感じ、悩むことも多かったです。

それでも、自宅で子供とだけ過ごす生活は自分の性に合っておらず、両立生活は充実感とメリハリがあったと感じます。2人目がもう少し手が離れたら、前線の仕事に戻れるのではないかと、将来のキャリア設計を自分なりに立てて、今できることをやろうとモチベーションを保っていました。

そんな時に、夫に海外赴任の辞令が・・・。同じ会社の海外部門に所属していた夫にとって、その可能性はいつも隣り合わせではあったし、本人もいつかは海外で働きたいという希望を持っていました。頭では理解し、覚悟していたつもりですが、実際に決まったときは頭が真っ白に。

自分が仕事を続けるために子供達と自分だけで日本に残る選択肢も考えましたが、両実家とも遠方に住んでおり頼れる親戚も近くにおらず、夫と協力してなんとか共働きを継続していたので、数年間それを続けるのは難しいと感じました。

まだ子供も小さく、父親との時間を大切にしたい、家族一緒に暮らしたい、という強い思いもあり、帯同するしかないと決意はしたものの、残念ながら会社には海外赴任に伴う休職制度はありません。「私が退職しなければいけない」という事実を、まるで他人事のようにぼんやりと認識し、なかなか受け入れることができませんでした。「同じ会社なのに、どうして私だけが辞めなきゃいけないのか」と、かなりモヤモヤ・・・。眠れない日々が続きました。

人生最大の暗い闇

悩みぬいた結果、「家族が一緒に暮らすためには自分が退職するしかない」と決断しました。そして、辞令が出てから4カ月後、会社を退職し、2人の子供とともに初めての海外生活をスタート。私にとってそこからの半年は、人生最大の暗い闇を経験することになりました。

2か月経過した頃には、外に出るのも億劫になり、他のママと顔を合わせるのも面倒になり、家にいても何もする気になれない状態に陥りました。子供や夫の言動にイライラして、必要以上に怒鳴ってしまったり、現実から目を背けたい気持ちで部屋に引きこもって鍵を閉めてしまったりする日もありました。いわゆる「プチうつ状態」だったと思います。

それには4つの理由がありました。

①ワーママ時代との家事・育児のギャップ

初めての海外生活、しかも子供がいる状況で、安全で美味しい食事を作ることに四苦八苦しました。結婚後もハードワークで外食が多く、ワーママ生活では時短家事を追求していたので、一から料理をすることがあまりなかった私にとって、日本と同様の食材が思うように手に入らない海外で、3食料理をし、子供の弁当を毎日作ることはかなりハードルが高いことでした。

子育てにおいても同様で、日本では平日は10時間保育園に預けていたので、子供と向き合って過ごす時間は寝かしつけ時の絵本の読み聞かせ程度。平日の作り置きのための買い出しと料理、たまった洗濯・掃除に追われて終わる週末。それが一転、2歳の子供と一日中家で過ごし、小学生は3時頃に早々に帰宅する生活になり、有り余る時間を、子供とどう接して、どう向き合ったらいいかがわからず、息苦しさを感じてしまいました。子供の言動についイライラして怒鳴ってしまい自己嫌悪に。できないことの多い自分に自分自身でダメ出しをして、自信を失い落ち込みました。

②専業主婦となった自分のアイデンティティロス

17年間会社員としてキャリアを積み上げてきて、そこに自分のアイディンティティがあると認識していました。そこから突然、家事・買物・育児が中心の生活に変わったことで、仕事をしていない自分、肩書のない自分は、一体何者なのだろうと、不安に襲われました。妻として母親として家族を支えることも立派な役割であると頭では理解しているつもりでも、自分は何も生み出していない、社会に貢献できていない・・・そんな風に感じてしまいました。「私」ではなく、「○○さんの奥さん」、「○○ちゃんのママ」という肩書しかなくなったことで、自分らしい行動指針、自分の軸みたいなものさえ見失ってしまいました。

これまでは、会社員として働いている自分が土台にあり、その上に妻、母親業が成り立っていたので、その土台が取り払われてしまったことで、心のバランスを失い、足元がふらついてしまったわけです。キャリアが中断されてしまったことへの不安、帰国後にまた働けるのだろうかという焦燥感も、私の心をざわつかせました。

③経済的自立がないことの負い目

同じ年齢、同じ会社で働く夫と結婚をし、結婚・出産後も変わらずに働き続けていた私は、夫とは常に対等の立場で過ごしてきました。復職する際には、家事と育児のタスクを一覧化し、夫婦で話し合って分担を決めて、日々協力しながら復職後の生活を乗り切ってきました。

でも、対等だったはずの関係性は、“夫の赴任のために、私が仕事を辞めてついてきた”という構図ができ上がった生活の中では、家計の金銭面を支えるのが夫、家事・育児を担うのが私、という分担に必然的に変化していきました。、夫に対して引け目を感じ、あまり意見や家事分担のお願いをできなくなってしまいました。お金を使う際も、自分が仕事をして得たお金ではないと思うと、使うこと自体に申し訳なさを感じ、経済的自立がない自分はダメだと卑下してしまう気持ちに。収入を得ていない分、家事も育児もきちんとやらなければならないと、必要以上に自分で自分を苦しめて負のループに陥りました。

④相談できる人がいない孤独

上記のような状況で、精神的にモヤモヤ、ぐるぐると悩む毎日。でも、それらを相談する、吐き出す場がないことが、その苦しさに拍車をかけました。右も左も“初めまして”の環境で、ゼロから人間関係を構築するのはかなりのパワーがいりましたし、子供関連で知り合った駐在妻さんは日本でも専業主婦だった方が多かったため、知り合ってすぐにキャリアの悩みを打ち明けることは憚られて、誰にも相談できないと感じてしまいました。

自分が感じた理不尽さや違和感などに共感してもらえる人は近くにおらず、当たり障りないお付き合いとなり、本音をますます心に溜め込んでしまいました。夫は夫で、初めての海外勤務、人間関係や新しい役割に苦労し、自分のことで精一杯で、とても私のことをフォローする余裕がないことが手に取るように分かったので、私は誰に対してもその胸の内を吐き出すことができませんでした。

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