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風営法「再」改正論議の作法

さて、先のエントリにおいては最近何かと話題の亀石倫子弁護士による風営法解釈に関する間違いを指摘しました。この亀石倫子さん、先にご紹介した以外にも風営法関連で非常に微妙な発言を繰り返しておりまして、例えばこんなことも仰っているワケです。

ここでいうNOON裁判というのは、2016年に無罪が確定した大阪のクラブ業者を巡る裁判のこと。風営法無許可営業容疑で逮捕、起訴された同クラブ経営者の行っていた営業は、風営法が営業許可取得を求めている業態には「当たらない」と判断され無罪判決がなされたものです。

亀石倫子さん、実はこのNOON弁護団に参加する弁護士の一人であったワケですが、彼女はこのNOON判決を一般化し「クラブは風営法の許可を取らずに営業できるはずだった」との主張を展開しているワケです。

ただ、当時の判決を紐解いてみると(判決文)、実は裁判所は弁護人側が主張した風営法の違憲性に関しては全て否定をしており、旧風営法による旧風営3号規制そのものの違法性は否定しています。その上で、旧風営法が営業者による提供を規制しているダンスを「男女が組になり,かつ,身体を接触して踊ることを通常の形態とするダンス」と限定し、当時NOONで提供されていたダンスがこの要件に当たらなかったとして、そこに風営法違反(無許可営業)は存在しないと結論付けたワケであります。

亀石さんとしては、この大阪高裁による「男女が組になり,かつ,身体を接触して踊ることを通常の形態とするダンス」のみが風営法の規制対象なのだとする判断を一般化することで、シングルダンス(一人で踊ることを前提としたダンス)の提供が主流である殆どの現存するダンスクラブは「風営法の許可を取らずに営業できるはずだった」と主張しているのでありましょう。

このNOON判決は個別具体的な事案に対する犯罪の有無を判断したに過ぎないものではありますが、それに伴って裁判所が行った「男女が組になり,かつ,身体を接触して踊ることを通常の形態とするダンス」のみが風営法の規制対象なのだとする判断は判例として残るワケで、この亀石さんの主張は論法として間違っているとは言えない、とは思います。ただ、その後が宜しくない。

亀石さんは、改正風営法が「(ナイトクラブに)『特定遊興飲食店営業』の許可を取れ」と求めているなどとの主張を行っていますが、先のエントリでも解説したとおり現在の風営法下でナイトクラブを風営法上の許可取得を必要としない一般飲食店として営業することは「可能」なのであって、亀石さんのこの部分の主張は完全に間違いであるわけです。

では改正風営法において何故「特定遊興飲食店」という新たな営業許可の取得が必要となる営業種が創設されたのかというと、旧風営法はその第32条において一般飲食店における深夜遊興の提供を「全面禁止」していたから。

(深夜における飲食店営業の規制等)
第三二条 深夜において飲食店営業を営む者は、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 営業所の構造及び設備を、国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持すること。
二 深夜において客に遊興をさせないこと。

この規定がある限りにおいて、ダンスクラブが例え一般飲食店として運営可能となったとしても、深夜に「客にダンスをさせる行為」を含む遊興行為を提供することが出来ません。そこでこの部分も一定の条件下で解禁し、ダンスクラブを含む飲食店における深夜遊興の提供を可能にしましょう。そうやて出来たのが「特定遊興飲食店」という新たな許可営業種であったワケです。

即ち先の風営法改正によって、

1. シングルダンス、ペアダンスに限らず全ての「設備を設けて客にダンスをさせる営業」は一般飲食店として風営法上の許可取得の必要なく営業が可能となり、

2. 一方、一般飲食店において全面禁止とされていた「深夜遊興」の提供は一部解禁となり、一定の要件を満たす営業者は公安委員会の許可の元、その提供が可能となった。

更に言えば、先の風営法改正ではこれに加えて、

3. 許可営業種として残されたダンス営業以外の風俗営業種に関しても、各都道府県の条例による定めに基づいて深夜営業が解禁できるようにした

のであって「規制緩和が不足している」という主張は正当なものとしても(私もそう思っている)、亀石さんのいうような「(現状が)よくなってはない」なんて話では決してないワケです。

先のエントリでご紹介した論考も含めて、亀石倫子さんはどうも先の風営法改正を「悪意をもった改正」であったかの様に表現したがるワケですが、彼女のその辺の論調は事実誤認からくる間違ったものであって、実際は「非常に牛歩であるし、不格好でありながらも状況は少しずつ改善している」といったもの。

そして各関係者は現在政府が推し進めている「ナイトタイムエコノミー振興」という文脈の中で、風営法の「再」改正もしくは関連法規(含む地方条例)の改正による更なる規制緩和のムードを必死で醸成してきているワケですが、亀石さんのような間違った論調がそのムードに対して完全に「水をさす」格好になっているのが現状。

最近、世間から何かと注目されている亀石さんの「権力と戦う弁護士」としてのブランディングにはなっているのでしょうが、正直、彼女による風営法に纏わる一連の発言はあんまり生産的な結果は生んでないなぁと思っておるところ。もうちょっとポジティブな方向で論議しませんか?と申し上げたいのが本音であります。

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