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自衛官の国会議員罵倒の本質はクーデター(阿部岳)

自衛官が対外的によく使う言葉に「現場の私たちが一番戦争に反対ですよ」というものがある。戦争になれば身が危ない。日ごろ、厳しい訓練を通じて死と生について考える機会も多い。一面の真実である。

そこで語られないもう一面の真実は、自衛隊という組織が個人の思いなど一切考慮しないこと。そして、組織防衛と拡大のために緊張を必要としていること。

そういう性格を持つ軍隊同士が緊張を高め合った末に、ほんの小さな発火が大爆発を起こす。だから、軍隊は膨張するという前提に立って統制しなければならない。

職業軍人以外が指揮するシビリアンコントロール(文民統制)の仕組みは知恵の一つ。ところが、災害派遣や海外派遣を通じて発言力を増してきた自衛隊は、自らを縛るその鎖を少しずつほどいてきた。安倍政権になると、防衛省内で官僚が自衛官の優位に立つ仕組みも撤廃された。

さらに安保法制が成立した。自衛隊は米軍と日常的に連携し、有事の共同計画を立案するようになった。米軍の指揮下に組み込まれ、もはや日本政治の統制が届かない所へ行こうとしているのではないか。一体、誰がどう止めるのか。深刻な疑問が生じている。

そこへ起きたのが、自衛隊の中枢、統合幕僚監部の幹部自衛官が国会議員を「お前は国民の敵だ」とののしる事件である。30代の3等空佐が4月16日、国会近くをランニング中に民進党の小西洋之参院議員を見かけ、「小西だな」と確認した上で繰り返し罵倒した。

1932年の5・15事件で犬養毅首相を射殺した青年将校たちも同様に、政党と財閥を「国民の敵」と攻撃した。国民の不満を味方につけ、減刑の嘆願書が殺到したこともあって、全員が死刑を免れた。甘い処分は次の2・26事件を招き、軍部独裁の強化、日米開戦へとつながっていく。

今、小野寺五典防衛相は3佐の暴言について「小西議員に不快な思いをさせたのであれば申し訳ない」という言い方で陳謝している。問題は一人のおかしな人物が他者に不快感を与えたことではない。自衛官が、国民の代表であり、統制の一端を担う政治家を公然と攻撃した。それが突発的な単独行動で実力行使を伴わなくても、本質的にはクーデターの試みである。対応に、自衛隊だけでなく日本の民主主義そのものが問われる。

少なくとも3佐を懲戒免職にした上で、小野寺氏と自衛官トップの河野克俊統合幕僚長は辞任する必要がある。責任を明らかにしなければ同様の事件が繰り返され、歴史も繰り返される。いや、今回の事件はすでに再発だとも言える。河野氏自身が昨年、憲法9条に自衛隊を書き込む安倍晋三首相の提案を「非常にありがたい」と発言している。ここでも憲法擁護義務に正面から反旗を翻しながら、何ら処分されなかった。

自衛隊を律する意思も見せない安倍政権下では、発言だけでなく行動も抑制がきかなくなっている。2016年、沖縄県の東村高江。地元住民が反対する米軍ヘリパッド建設に、陸上自衛隊の輸送ヘリが動員された。まともな法的根拠はなかった。機外に工事車両をつり下げ、抗議する市民の頭上を圧して飛び越えていくのを、道路から見上げた。暗い予感を抱かせる機影であった。

(あべ たかし・『沖縄タイムス』記者。2018年4月27日号)

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