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西城秀樹が遺したメッセージ「2度の脳梗塞には感謝している」 追悼・西城秀樹 生前語った「3度目の人生」 - 西城 秀樹

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歌手の西城秀樹さんが5月16日、急性心不全で亡くなりました。享年63。

【写真】1978年日本武道館で行われた東京音楽祭世界大会で熱唱する西城秀樹さん

西城さんは2度の脳梗塞を経験していました。48歳のときに倒れ、生活を改善して予防に努めたにもかかわらず、56歳で再発。2度とも言葉を発しにくい後遺症が出たため、「歌えないなら、死んだほうがましだ」と諦めかけた日もあったそうです。そんな中リハビリを続け、年間70回ものステージをこなしていた西城さんが残した手記を追悼とともに掲載します。

(出典:文藝春秋2016年12月号)

◆ ◆ ◆

そのときまでぼくは、最高に健康な男だと過信していました


西城秀樹さん©文藝春秋

最初に発作を起こしたのは、2003年6月。ディナーショーのために訪れていた韓国・済州島でのことです。猛烈にだるくて眠くて、翌朝目が覚めたら左の頬が右より下がっていました。ろれつも回りません。

東京の慶應病院に勤める知り合いの医師に電話で相談したら、「脳梗塞の疑いがありますね」。仕事を終えて翌日、急いで帰国して病院へ行くと、そのまま入院。「ラクナ梗塞」という病名を告げられました。脳内の細い血管が動脈硬化などで狭くなって血液の流れが悪くなる、脳血栓症のひとつだそうです。

そのときまでぼくは、最高に健康な男だと過信していました。若い頃からワインを毎晩2本、タバコを1日4箱という生活でしたが、46歳で結婚してから食生活に気を配るようになっていました。181センチ、68キロの体型を維持するため、ジムに通ってトレーニングも欠かしませんでした。

しかし倒れる前は、3週間で5キロの無茶なダイエット。運動中もそのあとのサウナでも、水分補給をしないほうが効果があると勘違いもしていた。そんなことが、血流を滞らせる原因になったんですね。

「ゆっくりと時間をかけて病気になったんだから、ゆっくり歩いて治していこうよ」

運動機能の後遺症は軽かったのですが、倒れた直後は、何かやろうとするたびに「こんなこともできないのか」と気づくショックがありました。脳梗塞という病気について知識がなく、症状も知らなかったからです。何より問題だったのは、脳内の言語を司る神経が塞がれたために「構音障害」という後遺症で言葉が出にくく、上手くしゃべることができなくなったこと。「水」という言葉が、思い浮かばないんです。

長女は1歳。妻のお腹には7カ月の長男がいました。もう人前で歌えないのなら、生きている価値があるのか。「歌手を引退しようか」と弱音も吐きました。思い直させてくれたのは、妻が言ってくれた、

「ゆっくりと時間をかけて病気になったんだから、ゆっくり歩いて治していこうよ」

という言葉です。専門の先生について口腔機能療法というリハビリを行ない、あごの筋トレや舌のストレッチ、風船を膨らませるといった訓練のおかげで、歌を取り戻すことができました。

脳梗塞を起こした人の多くが経験する、うつ状態

2度目に発症したのは、2011年の暮れです。身体がふらついたときは、風邪のせいかと思いました。前回と同じ慶應病院へ行ってMRIを撮ってもらっても、異常は見つかりません。しかし「念のため今日は泊まってください」と言われたのが幸い。朝には、病室のベッドから起き上がれなくなっていたんです。

ショックは何十倍でしたよ。再発を予防しようと生活に気をつけていただけに、なぜ?という思いが強かったんです。

前より症状が重いことも、じゅうぶん自覚できました。唇や舌が痺れてしゃべれないし、右手と右足が自由に動かせません。前回と違って、退院後はリハビリ専門の病院へ移る必要がありました。

リハビリ室ではほかの患者さんと一緒ですから、他人の目が気になって、さらし者になっているような屈辱感を味わいました。おはじきをしたり、並べた十円玉を指でつまむトレーニング内容に、「こんな幼稚園児みたいなことやってられるか」と思いながら、できない自分。昼間はそうやって苛立っているのに、夜になると生きているのが嫌になるほどの絶望感と自己嫌悪に襲われます。これは、脳梗塞を起こした人の多くが経験する、うつ状態だそうです。

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