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「中東・中国・北朝鮮、外交の神髄を心得たトランプ大統領」―日本も棍棒を使う根性を持て!― - 屋山太郎

 「棍棒片手に猫なで声で対話する」のが外交の神髄だと言われるが、トランプ米大統領はこの手で見事に諸懸案の解消に乗り出している。17年4月、中国の習近平国家主席が訪米した際、会談の最中に「いまシリアの軍事施設にミサイル59発を撃ち込んだところだ」と報告した。これはトランプ氏が「オレはオバマとは違って、武力を使うよ」との姿勢を披歴したのだろう。

 この姿勢は中東問題の解決にとどまらない。北朝鮮は核の小型化と長距離ミサイルの開発を公言し、軍のパレードでは武器を見せびらかし、日本海に何発もミサイルを撃ち込んだ。金正恩委員長は、完成すれば米国と北朝鮮は同格になれると思い込んでいたようだ。こういうバカな考え方に至ったのは、歴代米大統領がただ猫なで声で、棍棒を使う根性を忘れてしまったからだ。トランプ氏はいきなり「棍棒を使う」ことをシリアで実践してみせた。いきがる金正恩氏を北京に呼びつけて「強気で行くつもりなら助けないぞ」と引導を渡したのだろう。一方で北朝鮮への経済制裁は効き始め、これに中国も加わっている。進退窮まった頃に助け舟を出したのが韓国の文在寅大統領だろう。

 6月12日シンガポールでの米朝首脳会談が決まったということは、核廃絶に至る手順や監視体制、ミサイル廃棄の方法など、大よその方法が煮詰まったということだろう。リビア方式は生物化学兵器など、あらゆる武器を米国に持って行って処理するやり方だが、北朝鮮のは規模が大きすぎて適用できないという。金正恩氏はもはや元に戻れない時点に来ているから、米外交の大成功は間近だ。ここまできたのはいつでも棍棒を使うぞという脅しが効いたからだ。

 朝鮮半島情勢はこれを契機に様変わりするだろう。南北分断は変わらないが、南が北に限りなく吸い込まれ、共に反日の旗を振るようになるだろう。かといって南北が統一して独立国家にはなれない。中国の属国として、中国依存の国家になるのではないか。かつて朝鮮は李王朝を名乗ったが、明の属国にとどまり続けた。日本から韓国が5億ドルもの経済協力資金を分捕った件に倣い、北は日本に国家建設の資金をたかりに来るだろう。資金を出す国は日本しかいないからだ。その時、日本は「拉致問題解決なしには一銭も出さない」ことを公言すべきだ。日本は自由、民主主義とともに基本的人権を尊重する国だということを彼等に改めて知らしむべきだ。

 朝鮮半島は日清戦争前夜のような様相になる。その中で中国は清朝時代並みの領土復帰を目指している。その中には尖閣、沖縄も入ると豪語している。これまで自由主義市場経済のルールを利用して、中国は儲け放題、盗み放題で超大国を目指してきた。トランプ氏がその中国に鉄槌を下して、経済的損失を取り返そうとしているのは当然だ。日本も見倣うべきだ。

(平成30年5月16日付静岡新聞『論壇』より転載)

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屋山 太郎(ややま たろう)
1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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