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留学生の高額治療と感染症の対策を急げ 日本に来て割安な価格で治療を受けられる「抜け穴」 - 堀成美 (国立国際医療研究センター 感染症対策専門職)

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  もっと深刻なのは、周囲に感染する病気を持った人が留学生として入国した場合だ。例えば、勉強とアルバイトでの睡眠不足、低栄養や異文化でのストレスなどから結核を発症し、日本語学校で集団感染となる事例も各地でおきている。麻疹(はしか)や風疹が持ち込まれ地域に拡大するリスクも常にある。これらは留学ビザを取得する際に事前に病気の有無を証明する診断書を提出させ、ワクチンの接種確認などを義務付ければある程度防げることだ。結果として感染拡大を防ぎ、対策・治療にかかる費用も減らすことができる。

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こうした初歩的なことすらできていないというのが日本の現状なのである。専門団体の意見や現場からの声を受けて、結核に関しては、厚生労働省・外務省がアジア6カ国に対して、入国前に健康診断を受けるよう動き始めたところだ。

 では、諸外国ではどのような対応をとっているのか。例えば、オーストラリアでは留学ビザ希望者に対して、政府が指定した医療機関での健康診断を義務付けている。検査結果は、クラウド上に置かれ、オーストラリアの担当医師もチェックするという体制になっている。そのうえで、留学生には「留学生保険」への加入が義務付けられている。この保険は急な体調不良等の医療はカバーするが、美容の治療や出産、そして出国前から把握されている高額な医療費のかかる慢性疾患(がんやHIV感染症)等については適用されない。慢性の病気を患った人であっても留学は可能であるが、治療薬は母国から持参する仕組みになっている。

 このような話をすると、「だから外国人を受け入れるべきではない」と主張する人が必ず出てくるが、それは本質的な解決策ではない。人口減少が続くなかで、今まで以上に外国人と共生していくことは不可欠だ。問題なのは、オーストラリアの事例を見れば分かるように、事前の健診、留学生専用の医療保険など、手当てできる対策をとっていないことだ。

 16年から東京、神奈川などで、家事代行サービスの受け入れが特区として認められることになった。開始前に、私は受け入れ業者にそれぞれ電話をかけて「健診とワクチン接種の証明をするように」とお願いした。訓練され、就労意欲のある労働者が感染源となって、赤ちゃんや子どもが病気になれば、外国人バッシングにつながるリスクがあると考えたからだ。きちんと事前にチェックしさえすれば、このような問題が起こらずに済む。

簡単に扶養に入れる 協会けんぽ

 もう一つ、外国人の皆保険制度加入に関する問題があることを指摘しておきたい。日本の国民皆保険は、前出の自営業者などが加入する「国保」のほか、主に中小企業に勤める人が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」、主に大企業に勤める人が加入する「組合健保」がある。企業が自主運営する組合健保は、扶養者を加入させる場合、扶養者が同居していることや、扶養している証明(一定額の送金履歴)などの提出が求められるなど、厳しいチェックが入る。

 一方で、都道府県が運営主体である国保や協会けんぽは、加入や扶養の認定の加入ハードルが低いというのが、現場での実感だ。というのも、旅行中に病気となった外国人旅行者が、体調不良で受診し、急遽入院したために高額な医療費が請求された際に、「日本で働いている子どもの扶養に入れてもらう」ということになった。驚いたことに、保険証はすぐに発行された。

 外国人労働者の扶養加入といったことは、経営者が親切心で行っているということもあるだろう。しかし、健保組合も運営が厳しくなっており、組合を解散して協会けんぽに加入するといった動きもみられるようになってきた昨今、協会けんぽは、こうした実態を認識して扶養加入の審査体制を見直す必要がある。

 医療機関や医療者にできることは何か。保険のない外国人の医療費が未収金になるよりマシではないかという声も聞くし、患者が減るより増える方がいいという切実な事情を抱える人たちもいるだろう。しかし、この問題は放置すれば、財政的なことだけでなく、保険や年金という信頼で守られる制度がダメージを受けること、実際にはごく一部の人たちの行いであるのに、外国人全体に批判の目が向けられかねないリスクをも孕んでいる。

 勉強会に集まる医療者の多くはこのことを危惧しているが、今後、不適切と知りながら収益のために事実とは異なる書類の作成や制度利用に加担するような医療機関の存在が明るみに出れば、現行医療制度そのものの信頼を失いかねないのではないだろうか。各領域でできることはあるので、ぜひご検討いただきたい。

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