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拉致を置き去りにさせない方法

訪米した安倍首相(左)とトランプ米大統領(右)2018年4月18日 出典 首相官邸 インスタグラム

島田洋一(福井県立大学教授)

【まとめ】

・北朝鮮の日本非難は単純に無視しておけばよい。

・米朝首脳会談で北朝鮮が拉致問題「解決」掲げ対日接近図る可能性あり。

・日米が核とミサイル廃棄を迫るほど、北朝鮮が拉致被害者を返す可能性高まる。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=40046でお読み下さい。】

北朝鮮情勢が大きく動く中、「拉致問題が置き去りにされるのではないか」という危惧の声をよく聴く。例えば北朝鮮の次のような声明が不安を掻き立てるようだ。朝鮮中央通信5月12日付論評は言う。

安倍政権は「すでに解決した拉致問題を再び持ち出し騒いでいる。……全世界が朝米首脳会談を歓迎しているときに、朝鮮半島の平和の流れを阻もうとする稚拙で愚かな醜態だ。……(過去の六者協議においても)日本は多国間外交の枠組みの中で拉致問題を持ち出し妨害した。……(日本は拉致問題で)国際社会から同情を集め過去の清算を回避しようとしている」。

まず第一に、この手の北朝鮮の日本非難は単純に無視しておけばよい。例えば、2002年9月17日の第一回日朝首脳会談(第一次小泉訪朝)の直前まで北朝鮮は、「あらゆるテロに反対するわが国が拉致をするなどあり得ない」との趣旨を繰り返していた。全面否定である。

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▲写真 第一回日朝首脳会談 出典:首相官邸

ところが首脳会談の場で一転して、金正日は拉致の事実を認めた。国内メディアを完全に統制し、都合の悪い政策転換は報じさせない独裁体制の場合、こうした豹変は何ら珍しくない。

ニューヨーク中心部とペンタゴンを襲った9.11同時多発テロ後、2002年1月29日の一般教書演説でブッシュ米大統領に「悪の枢軸」の一角と名指しされ、不安を募らせた北朝鮮が対日接近を試み、その中で拉致問題の「一件落着」を図ったわけである。

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▲写真 一般教書演説をするブッシュ米前大統領 出典:Executive Office of the President of the United States

もっともその対応は欺瞞に満ちたものであり、かえって日本世論の怒りに火を付けることになった事情は改めて繰り返すまでもない。

目下、トランプ政権は、北が「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」に応じない限り、日米中心に「最大圧力」戦略を維持するとの立場を変えていない。日本人拉致問題を首脳会談の場で持ち出すとも確約している。

日本としては、トランプ氏に次のように強調してもらえば必要十分である。「安倍首相が納得する形で拉致問題を解決せよ。安倍が納得できないという限り、アメリカも制裁を緩和しない」。

6月12日の米朝首脳会談を経て、今度はアメリカを騙せる展望はなく、日米の結束も強いと悟った場合、北朝鮮が、日米分断の思惑も込め、拉致問題の「解決」を掲げて対日接近を図ってくる可能性は充分ある。

ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)らが「非核化」の理想型として掲げるリビア・モデルが参考になる。軍事圧力と経済制裁で体制の危機を感じたリビアの独裁者カダフィが、明確かつ具体性を持った非核化に最終的に応じたのが2003年12月19日であった。ここで注目されるのは、その前の9月にまず「テロの清算」に応じた事実である。

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▲写真 ジョンボルトン大統領補佐官 出典:flickr photo by Michael Vadon

筆者は今年5月初旬に訪米した際、リビアとの詰めの交渉に当たったロバート・ジョゼフ氏(当時国家安全保障会議「拡散戦略」担当上級部長)と面談し、様々な経緯を聞いたが、リビア側は核とミサイルの放棄については最後まで誤魔化しを試みたという。

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▲写真 島田洋一氏(左)とロバート・ジョセフ氏(右)提供:島田洋一

しかし米側は一切妥協しなかった。そこで、リビアにとってより小さな問題、言い換えればより切りやすいカードである「テロの清算」(この場合、1988年のパンナム機爆破事件の犠牲者遺族に対する補償金支払い)にまず応じ、できる限りの制裁緩和を勝ち取ろうとしてきたわけである。

この経緯に照らせば、日米中心に強い姿勢で核とミサイルの廃棄を迫れば迫るほど、北としては、より切りやすいカード(例えば被害者を帰せばよいだけの拉致)をまず切ってくる可能性が高まると言えよう。

拉致問題解決のためにも、核・ミサイルで安易な妥協をしてはならない。

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