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富士フィルムのゼロックス買収失敗の教訓

時々お伝えしていた富士フィルムのゼロックス社買収状況ですが、ゼロックス側から「破棄」されてしました。この縁談、終わったと断言してよいかと思います。富士フィルムの古森重隆会長には日経ビジネスの「敗軍の将、兵を語る」に出て頂くことになりそうです。ニュースでは富士フィルム側がまだ、相手方にちょっかいを出しているようですが、これ以上追っかけるとストーカーのようなものですからさっさと手じまいすべきでしょう。

前回、企業買収とは結婚と同じ、だけど、今回の場合、花嫁の父親が結婚に猛反対している中で果たしてうまくいくのかという趣旨のコメントさせていただいたと思います。もう一点、その「父親」があの著名なアクティビスト、カール アイカーン氏という点を古森会長は甘く見ていたこと、また、古森氏とゼロックス側のジェイコブソンCEOが意気投合し合う関係にあったことが富士フィルム側の買収チームの緊張感を削いでしまったということを述べたと思います。

今回の報道を読んでみるとNYの裁判所の暫定的買収差し止め判決となった背景が富士フィルム側とゼロックス側経営陣の親密な関係が株主などの利害関係を無視した不当な経営判断を想起した可能性と報じられています。これには私もうーん、と唸ってしまうほどアイカーン氏の戦略勝ちと言えそうです。

企業買収において経営陣が握手をすればなんでも一緒になるとはとんでもない間違いです。ご承知の通り、企業の主体は経営陣、従業員、株主が直接的にかかわり、更に金融機関や取引先が間接的にかかわります。日本の場合には金融機関はより主体的にかかわるといってよいでしょう。つまり、企業統合において最も重要なのはそれぞれの主体のインタレストをどれだけ満足させられるか、にあります。

日本に於いて会社は誰のもの、という議論に対して従業員のものという発想を比較的重視しますが、欧米では株主のもの、という考えが定着しています。それに対して経営陣は何か、と言われれば株主に代わって会社をドライブする運転手であり、あくまでも株主の承認がなければその運転席には絶対に座ることはできません。

北米の上場企業の株主総会の案内をみるととにかく、取締役選任にかかる情報開示が大変詳細になされています。日本の比ではありません。つまり、経営側は株主に対して如何に自分たちが有能なドライバーであり、アウトバーンで300キロ出せるほどの運転技量を持っているかを示すことで高い報酬を確保するという仕組みになっています。よく北米の経営者の視点は短期的経営思考だと称されますが、それは上場会社である以上、成果を出せねばあまりにも簡単にクビを斬られることが自明の理であるのです。

古森氏は若干、自分のドライブテクニックを過信したきらいはあります。どれだけテクニックがあったとしても運転ルールは守らねばならないという平易な表現が今回はぴったりくるのかもしれません。

ところで富士フィルムがなぜゼロックスをそこまでして買収したいのか、という根本的疑問はもともと存在していました。ゼロックス=紙媒体をビジネスとする会社です。今、世の中から急速に紙が減っています。私だって会社でのコピー機の使用量はかつての何十分の一になっています。特にページ数が多いものほど全てネット管理です。

富士フィルムはフィルムが消える時代を先取りして事業転換を図り、会社消滅の危機を逃れました。そこからすれば今回のゼロックスの買収はやや時代に逆行する気がしたのは多くの外の人の目が感じたことかと思います。個人的にはこの買収失敗は富士フィルムの会社にとっては結果オーライだったと思います。

では今日はこのぐらいで。

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