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はやく誠意を示さないと、日大の「不死鳥」は奈落に堕ちる

日大の選手の危険タックルが問題視され、メディアにも騒動が広がっています。長年アメフトをウォッチしてきた目で見ると、あのタックルは、反則というレベルではなく、故意に行った傷害事件の可能性すら感じさせます。

そのシーンを繰り返し見ましたが、ぞっとします。関東学生アメフットボール協会はすぐさま遺憾の声明を出し、当該選手の出場停止処分を発表しましたが、監督が雲隠れしたままというのも酷い話です。

誤解のないように書いておきますが、アメフトは危険なプレイ、あるいは選手が怪我をする可能性があるプレイに対してはルール改正があるたびに厳しく制限が加えられてきました。流れは安全重視でした。

とくにパスを投げた直後のクオーターバックへのタックルやパントを蹴った直後のキッカーへは接触すら禁止されています。今回の場合はパスを投げた「直後」どころか、プレイが一区切りした後、しかも背後からのタックルで、ゲームに紛れ込んで意図的に相手クオーターバックを負傷させる目的で行った疑いが濃厚です。

真剣にぶつかりあうスポーツなので、勢いあまって接触してしまうことはありますが、それでも罰則は重く、あのようにクォーターバックがプレイを終えて力を抜いたタイミングでのタックルはありえないというか、見たこともない危険な行為です。その後もラフプレイを繰り返し、退場になったということは、チームとしてそういったラフプレイを推奨していたとしか考えられません。

「選手も必死。あれぐらいやっていかないと勝てない。やらせている私の責任」と内田監督が語ったようですが、それを物語っています。「ルール内でハードなプレイをする」と「ルールを逸脱して危険な行為をする」のでは根本的に違います。具体的な指示をしたかどうかはわかりませんが、日大アメフト部がその違いを選手に指導しなかったことは事実でしょう。

そして、とくに関学は、かつて名クオータバックだった猿木選手が、今回のような反則プレイではありませんでしたが、近大戦で激しいタックルを受けて脊椎を損傷し、スター選手から一転して車椅子生活を余儀なくされた歴史を背負っています。

そのシーンをテレビで見ていましたが、今でも脳裏に焼き付いています。関学側が、日大に激しく抗議したのは当然でしょう。

その猿木さんをモデルにしてNHKがドラマ化したのが「妹」ですが、猿木さんは、その後税理士事務所を構えられ、またよくスタジアムに車椅子で観戦に来られた姿を幾度もお見受けしました。

日大アメフト部は、栄光と失敗の歴史を背負っているように感じます。かつては学生アメフトチャンピオンを決める甲子園ボウルの常勝チームで、それを率いていたのが篠竹監督でした。名物監督でしたが、いわゆる「根性」アメフトで、選手の身体能力と精神力で勝つという指導スタイルでしたが、アメフトの高度化につれてチームの低迷が続きます。

甲子園ボウルで京大が日大に初めて勝ったゲームを見ましたが、パスを投げようとしてもレシーバーがすべてカバーされ、為す術がないという感じでした。「根性」と「運動能力」に頼るアメフトが、「システムの進化」に敗北した瞬間でした。

そして、その後低迷してきた日大アメフトは、チーム名「フェニックス(不死鳥)」の名のように、この数年、復活の兆しが見え、昨年はついに関学を破り27年ぶりに甲子園ボウルを制しました。

選手の出身校を見れば、結構関西のアメフト強豪高からの選手も目立っています。推薦入学枠を増やし、また選手のスカウトを強化したのでしょうか。おそらく大学あげてアメフト部の復活を目指したのだと思われます。

だからなにがなんでも日本一となり、大学の広告塔としての役割を果たさなければならないというプレッシャーが働いたのかもしれません。とくに関学はこの冬には再び甲子園ボウルで闘う可能性が高く、ゲームのキーとなるクオーターバックを心理的にも潰しておきたいと悪魔が囁いたのでしょうか。

監督が危険タックルを指示したのか、選手が過剰反応してやってしまったかはわかりませんが、監督はとうぜん負傷した関学の選手を見舞うなり、関学側に謝罪すべきところを、それが未だに行なわれていないというのはいただけません。

法政大、東京大、立教大から要望を受け、関東学生アメリカンフットボール連盟は春季オープン戦で予定されていた日大の3試合を中止するようですが、アメフトそのもののイメージ悪化にもつながりかねず、恐らく、秋のシーズンも相当厳しい処分が下されるのではないでしょうか。

今回の失敗は、選手を育てるというよりは、チームが勝つことだけを追い求め、手段を選ばなかったことが生んだのでしょう。そして、スポーツマンシップどころかモラルが損なわれたことで、チームの存続をも脅かす事態となりましたが、監督や大学側がすぐさま会見をするなり、関学に謝罪するなりの誠意を示さなかったことが事態をさらに悪化させてしまいました。スポーツだけでなく、危機対応もスピードが重要だということです。

日大側には、もはや日大アメフト部だけの問題を超え、日大そのもののイメージ、またアメリカンフットボールのイメージにも波及しかねない問題だけに、できるだけはやく関学側に誠意を示し、また謝罪会見をおこなうことを願いたいところです。

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