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生きづらさを感じる人々16 訴えにくい男性の性被害

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性暴力というと、被害者は女性をイメージする人が多いだろう。しかし、男性の被害者も存在する。例えば、法務省法務総合研究所の「性犯罪に関する総合的研究」(2016年)によると、05年〜14年までの、強制わいせつの被害発生率(10万人あたりの認知件数)は、女性が10.0〜13.0の間を推移しているが、男性でも、0.2〜0.3の間で発生している。

「性犯罪に関する総合的研究」第2章性犯罪の動向 p13ページ

また、内閣府の「男女間における暴力に関する調査」(2014年)によると、配偶者からの「身体的暴行」や「精神的な嫌がらせや恐怖を感じるような脅迫」「生活費を渡さない経済的圧迫」「性的な行為の強要」について「何度もあった」は女性が9.7%、男性が3.5%。「1、2度あった」は女性が14.0%、男性は13.1%。こちらも、男性も被害者になることがあると示している。

「男女共同参画白書」(概要版)平成28年版

17年の刑法改正によって、強姦罪(強制性交等罪)の被害者に男性も含まれることになった。16年までは強姦の男性被害者は「法的に」存在しなかったが、今後は、男性被害者も認知される。ところが、男性は女性よりも性被害を訴えにくいとも言われている。中部地方出身の、浅田悠二(仮名、30代後半)もその1人だ。浅田の被害は幼少期のものだ。

「当時は性虐待とは思っていなかった」女の子が目の前で裸に…

「一時期、記憶は完全になかったのですが、今では、だいたいは覚えています。当時は性虐待にあたるとは思わなかったため、気にしないで生きていました。しかし、恐怖体験であり、逃げたいと思うようなこと。ただ、男性なので、被害だと思いにくいのです」

浅田が小学校4年生の頃、近所の年上の女の子と遊んでいた。女の子と浅田は仲がよかったといい、今でも実家に帰れば会うことがある。そんな女の子にある日、自宅の一室に呼び出され、室内で女の子は浅田の目の前で裸になった。そして「女の子の体に触りたいの?」と言ってきた。

「一気に裸になったのか、だんだん裸になったのかは定かではないのですが、ただ、突然の出来事で、フリーズしました。どうしたらいいかわからない。『うん』と返事を曖昧にしました。そう言ったほうがいい雰囲気だったからです。『触ってみて』とも言われたが、触りませんでした。それで終わったのですが、女の子には『このことは言ったらダメ』と言われたのです」

幼いころに受けた性暴力の被害体験を語る浅田さん

性暴力被害の取材をしていると、被害者が相手に口止めをされたという話をよく聞く。浅田も同じだった。

数日後に再度呼び出し。「胸を触ってごらん」

そして数日後、また呼び出しがかかる。今度は女の子の家だった。女の子は呼び出しを自然に感じさせるために、「面談をする」という形式をとった。他にも親類の子どもが一緒にいたからだ。浅田の順番になった。親類の子から「来い、って言っているよ」と伝言された。嫌な予感がしたので、親類と一緒に行った。

「自分1人では嫌だったんです。女の子の部屋に行くと、すでに上半身裸になっていました。でも、1人じゃなかったので、びっくりしていました。女の子には『1人で来い』と言われ、嫌だなと思いながら行くと、再び、上半身裸になっていました。横に座らされたのですが、そのときもフリーズしたんです。何を話したのか忘れましたが、何かを注意されました。そして『胸を触ってごらん』と言われたのです。自分の手を誘導されて、胸を触らせたのか、自分で触ったのか。それは定かでないが、ずっと固まっていました。会話にならないこともあり、しばらくして解放されたのです」

しばらくすると、女の子がまた自宅に来た。居間にあった大きめのコタツの中に入って来て、女の子は「中に入れ」と言ってきたという。

「真っ暗なのでよく見えませんでしたが、コタツの中で、また女の子は裸でした。『触りたいんだったら、触ってごらん』と言われました。そのときも嫌な感じでした。怖いと感じていたんです。固まっていると、女の子は「揉め、揉め」と言ってきて、1回、揉んだ記憶があります。そのあと、手を引っ張られて、どこか触らされました。おそらく股間だったと思います。知識がなかったので、よっくわからないまま、『気持ち悪いもの』を触らされました。動かすように言われたのですが、わかないので、固まったままでした。そのため、女の子はやめたのです」

浅田が覚えているのはこの3回だ。それ以降はなくなった。なぜ女の子はやめたのだろうか。

忘れていた出来事を大学生の頃に思い出す。「自分を否定していた」

浅田はこのことをずっと忘れていたが、大学生のときに思い出した。なぜなら、精神的に不安定で、気分障害になったからだ。

「すぐに死にたいと思うようになった。ちょっとした失敗でも自分を否定していました」

考えてみれば、小学生の頃の浅田はよく寝ていた。頻度は曖昧だが、授業中も現実逃避のように寝たふりをしていた。先生に保健室へ連れて行かれることもあった。他にも、運動会で自分の順番を待っている最中に寝たふりをする。教室で椅子を引っ張られ、床に倒されるようないたずらもされたが、それでも寝たふりをしていた。一方で、夜は眠れなかった。

中学のときは朝起きれなくなった。集団登校をしていたが、迎えが来ても、隠れていた。そのため、だんだんに学校に行かなくなる。「熱がある」などと嘘をついて学校を休むようにもなる。

「両親は共働きなので、学校へ行ったりふりをして、自宅に帰りました。この頃は性被害のことは忘れていたし、言わないように言われていたので、誰にも言わずにいました。そんな状態で、睡眠障害になっていたのです。不登校の理由は、性被害だったのではないかと、大学生のときに思いました」

学校に行かないことで父親からの仕打ち

ある時、ズル休みしていたことを父親に怒られた。学校に行ったふりをして屋根裏部屋にいたのがバレてしまったのだ。

父「学校へ行ったのか?」
浅田「行きました」
母「正直に言ったほうがいい」

結局、浅田はその日の夜に、本当のことを言った。すると父親はさらに激昂した。

浅田「すいません。間違ったことを言いいました」
父「なんで嘘をついた」

この日は雨だったが、浅田は父親に引きづられ、外に出された。裸にされて、顔をビンタされた。近所の女の子から性的被害を受けて、心理的ダメージを引きずっている中で、さらなる仕打ちをされた。それが大きなトラウマとして心に残るようになったのではないか。ただ、その後も、学校に行けるようにはならなかった。別の日、両親が仕事に行ったときに、学校へ行けず、裏山に逃げた。そのときも父親に見つかり、連れて帰られた。ただ、このときは父親は怒らなかった。

「この頃は周囲の期待にそって動いていました。復学したら学校を休んじゃいけないとも思っていたんです」

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