記事

従業員の同意がない転勤を禁止してほしいです──サイボウズ青野慶久、連合の会長に働き方について意見してみた

1/2
001-rengo__1796-1220_mini.jpg

私たちは何のために日々働くのでしょうか。その理由はさまざまでも、「不幸せになるために働いている」という人はいないでしょう。

でも現実には、ライフステージにあわせた働き方ができなかったり、組織の中で息苦しさを感じてしまったり。理想はなかなか遠いように感じます。

「会社が何のためにあるのかを、私たち一人ひとりがもう一度ゼロから考えなければいけません」

そう話すのは、連合(日本労働組合総連合会)会長の神津里季生さん。「働く人の幸せ」を追求する労働組合の中心的存在です。カイシャのために働くことは正しいのか? サイボウズ代表取締役社長の青野慶久と話します。

「一生懸命打ち込んで働く」こと自体が目的化。それじゃあ幸せになれるはずがない


神津 サイボウズさんは新しい制度をどんどん打ち出し、人が安心して働き続けられる風土や環境を目指していると感じます。

一方で、なかなかそうはいかない会社も多いのが現状です。そういった会社で働くことに幸せを見いだせず、苦しんでいる人も多い。

青野 ええ。

神津 日本人の働き方は世界的に見ても特殊です。「一生懸命打ち込んで働く」こと自体が目的化してしまいがちです。何のために一生懸命になっているのか分からず、とにかく言われたことをやり続ける。

青野 そんな状態では、「働く=幸せ」になるはずがありませんよね。

神津 はい。内閣府の調査で、働く人に「会社に不満があったら転職するか」と問いかけたものがあります。20代だと、「転職する」と答えた人は15%にも満たないんです。

青野 つまり日本人の20代の多くは、会社に不満があっても我慢をすると。

神津 はい。この「我慢しちゃう」という部分が、相当悪さをしていると思うんですよ。

社会に出て働くと、「こんなはずじゃなかった」と思うこともあります。そんな時に「せっかく正社員になれたんだから辞めるのはもったいない。今は非正規で働く人も多いから辞めるのは不安だ」と我慢してしまう。

我慢の限界を超えると、積極的に新しい仕事に挑戦するのではなく、最終的には辞めてしまうことになりかねません。

002-rengo_1727_mini.jpg
神津 里季生(こうづ・りきお)さん。日本労働組合総連合会(連合)会長。1956年東京都生まれ。東京大学教養学部卒業後、新日本製鐵株式会社入社。日本鉄鋼産業労働組合連合会(鉄鋼労連)特別本部員在任中の1990年4月より3年間、在タイ日本国大使館派遣。1998年、新日本製鐵労働組合連合会(新日鐵労連)書記長に就任。2002年、同会長。2006年、日本基幹産業労働組合連合会(基幹労連)事務局長、2010年、同中央執行委員長、2013年、日本労働組合総連合会(連合)事務局長などを経て2015年、連合会長に就任。著書に『神津式労働問題のレッスン』(毎日新聞出版)。

青野 確かにそうかもしれません。そうだ、サイボウズでは今、会社を辞めるときの背中を押す制度を運用していますよ。

神津 辞めるときの背中を押す?

青野 はい。辞めてからも6年間はいつでもサイボウズに戻れる「育自分休暇制度」を作りました。

友だちのベンチャーを手伝いたいとか、もっとおもしろそうな会社に行ってみたいと考えたときに、「やってみてダメなら戻ってきていいよ」という制度があれば心強いですよね。

これを活用して外の世界に飛び出していく社員は、社外の知識を獲得したり人脈を広げたりして戻ってきてくれるので、会社にとってもプラスになるんですよ。

神津 そうしたセーフティネットがあれば、ポジティブな意味で人材を流動化させることができますね。

従業員よりも経営者の力が強くなりがちな「メンバーシップ型雇用」のままでいいの?


青野 神津さんに、お聞きしたかったことがあるんです。

神津 なんでしょう?

青野 日本の多くの企業では、従業員よりも経営者の力が強いですよね。

その理由の1つは、そもそも従業員の権限が弱いことです。例えば、上司が部下の仕事内容や勤務地を決められる──いわゆる「メンバーシップ型雇用」の問題点です。

メンバーシップ型雇用:仕事内容や勤務地などの条件を限定せずに結ばれる雇用契約。部署異動や転勤の可能性もある。日本企業では終身雇用を前提として、入社後の育成を通じて配置を決定することが多い。「総合職」とも表現される。

神津 そうですね。

青野 欧米の「ジョブ型雇用」であれば、これはあり得ないんですよね。

上司はそんな権限を持っていないですし、もし東京に住んでいるのに「来月から勤務地は大阪ね」なんて言われたら、「その代わりに給料を上げろ」と堂々と言い返せるわけです。

ジョブ型雇用:仕事内容や勤務地などの条件を明確に定めて結ばれる雇用契約。こうした条件や、働く人のスキル・専門性をもとにした「ジョブ・ディスクリプション」(職務記述書)を労使間で交わすことが多い。

青野 こうした根本的な権限委譲が進まないと、労働者は経営者に立ち向かえないと思いませんか?

003-rengo_1727_mini.jpg
青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を行い、2011年からは、事業のクラウド化を推進。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)。『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)など。

神津 よくわかります。メンバーシップ型とジョブ型にはそれぞれ一長一短がありますが、高度成長期に育まれた伝統的な日本企業のスタイルを引きずっている部分はありますね。

青野 まさに。

神津 日本は全体的に「経営者に物を言う」風土が弱いと思います。

従業員の代表がきちっと経営に対して声を上げられているか、本当に機能できているかをしっかり見ていく必要があります。

青野 そうですね。

神津 青野さんのように、経営者が従業員のことをさまざまな側面から考えていればいいのですが、現実はそうではありません。残念ながら、ブラック企業も存在します。

今、全国の労働組合の組織率は17.1%まで下がってしまっているんですよね。

青野 そんなに低いんですか。

神津 はい。これは大きな問題だと感じています。今は立派な経営者が良い制度や風土を作っていたとしても、後継者が同じであるとは限らないじゃないですか?

青野 たしかに(笑)。

神津 だから本来は、良い気風や制度をちゃんと受け継ぐように、労働組合が活動しなければいけないんです。

本人の同意もなく、勝手に「転勤しろ」と命じるのはおかしくないですか?


青野 前職のときに、労働組合に毎月お金を払っていました。でも「この人たちは従業員のためにどこまで本気で働いているんだろうか」と疑問だったんですよ。

神津 疑問ですか。

青野 ええ。「ベースアップのために闘う」のが組合であり、戦後日本の伝統のようになっていますよね。

それはもちろん重要なんだけど、今闘わなければいけないことがたくさんあるなと思います。労働組合の組織率を高めて、もっともっと声を上げてほしいんですよ。

神津 はい。

青野 例えば、転勤制度の改革はすぐに進めたほうがいいと思います。もっというと、従業員の同意がない転勤を禁止してほしいです。

004-rengo__1744jpg_mini.jpg

青野 本人の同意もなしに勝手に「転勤しろ」と命じるなんて、おかしいですよね。それを2週間前に急に告げるような組織もあるわけで。

夫が転勤になったら、妻は仕事を辞めなければいけなくなる場合もある。これは人権侵害もいいところですよ。

神津 おっしゃるところは、とてもよくわかります。

あわせて読みたい

「働き方改革」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    加計理事長のドサクサ会見は卑劣

    宮崎タケシ

  2. 2

    ZOZO田端氏の残業代ゼロ論は呪い

    国家公務員一般労働組合

  3. 3

    香川が名乗り 仲間も予想外のPK

    文春オンライン

  4. 4

    米朝会談で断たれた北の逃げ道

    MAG2 NEWS

  5. 5

    朝日の信頼度が5大紙で最下位に

    島田範正

  6. 6

    楽しい食事をダメにする残念な人

    内藤忍

  7. 7

    W杯 日本代表がコロンビアに勝利

    MAG2 NEWS

  8. 8

    キンコン西野 大阪地震でSNS炎上

    女性自身

  9. 9

    怠慢でAmazonに潰される商店街

    後藤文俊

  10. 10

    国煽り最悪の刑務所入った堀江氏

    PRESIDENT Online

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。