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トヨタがアップルになる日 世界はインターネット革命の第三の波に入った - 川手恭輔 (コンセプトデザイン・サイエンティスト)

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 情報技術産業は世界経済の2倍の速さで成長し、あらゆる種類の産業を変革している。経済価値の数兆ドルは、情報技術産業によって創出されており、その大半はスタートアップ(革新的なベンチャー企業)によるものだ。そして、直近のイノベーションは、ほぼすべてがインターネットの上に構築されている。

 これらのイノベーションによってもたらされる価値は、シリコンバレーによってほぼ独占されてきた。しかし、その潮目を大きく変えることが可能な時期にさしかかっている。

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 4月17日にイスタンブールで開催された世界起業家会議で、スタートアップゲノムなどによる『グローバルスタートアップエコシステムレポート2018』が公開された。スタートアップゲノムのCEOで共同創業者のJF・ゴーチエは、そのプレスリリースで「世界はインターネット革命の第三の波に入った」と述べた。

 人々をインターネットにつなげ、人と人とをつなげるインフラと土台を築いた第一の波を経て、すべての消費者がスマートフォンを持ち、Eコマースやソーシャルネットを利用する現在は第二の波の段階だ。第二の波に乗ったアマゾンやフェイスブックやグーグルは、あらゆる産業を横断的にネットワーク化した、水平型のハブ構造のビジネスモデルで大きく成長した。 

 例えばアマゾンは、メーカーが製造した製品を人々に届ける「小売」というハブをプラットフォーム化することによって、書籍から始めて生鮮食品にまで、取り扱う商品を拡大することに成功した。

 インターネット革命の第三の波では、特定の産業にフォーカスしたスタートアップが、新たなプラットフォームを構築しようとしている。すでに、ウーバーはモビリティ産業、エアービーアンドビーはホスピタリティ産業にイノベーションを起こしている。

 例えば、ウーバーは、ハイヤーの配車サービスから始め、UberXというライドシェアサービス(解りやすく言えば白タク)で急成長し、そのプラットフォーム上で、UberRush(自転車速配便)、UberEats(出前代行)などのサービスを次々と水平展開している。

 これらのプラットフォームは、ハイヤーや自家用車、自宅の部屋、そして人手などの、「埋もれた価値」と「需要」とを、オンデマンドでマッチングさせる。多くのスタートアップが、新たな産業におけるオンデマンド・マッチングサービスを始めようと、「埋もれた価値」の宝探しをしている。


マッチングのプラットフォーム

 あらゆるモノがインターネットにつながる(IoTではなくIoE)ことによって起こる第三の波では、あらゆる産業がソフトウェア化し、物理的なビジネスと電子的なビジネスの境界が曖昧になる。すなわち、すべての既存の産業のビジネスモデルがソフトウェアに呑み込まれる可能性があると考えなければならない。

ハードウェア・アズ・ア・サービスのプラットフォーム

 では、自動車やコンシューマエレクトロニクスなどのハードウェアをつくる日本のメーカーは、この第三の波に呑み込まれてしまうのだろうか。少なくとも、ハードウェアを造って在庫し、需要を喚起して売るという、これまでのようなリニアなビジネスモデルのままで生き残るのは難しいだろう。

 トヨタが年初のCESで発表した、モビリティサービスプラットフォームという構想では、これまでユーザーが購入して所有していたハードウェア(自動車)を、サービスとして利用できるよう(ハードウェア・アズ・ア・サービス)にする。

 それは、一般のユーザー向けのモビリティサービスだけでなく、輸送や配達のための手段も事業者にオンデマンドで提供する。あらゆるサービスを移動可能に(モビリティ化)して、オンデマンドで利用できるようにすることも考えられる。例えば、ピザを配達するのではなく、ピザの店舗がオンデマンドで移動してやってくる。

 トヨタは、あらゆるモビリティサービスや、サービスのモビリティ化にカスタマイズできる、自律走行のEV(電気自動車)e-Palette Conceptも同時に発表している。

 トヨタは、ハードウェアを造って売るというビジネスモデルがソフトウェアに呑み込まれる前に、ハードウェアをサービスとして提供する、ウーバーなどのものとは異なる、メーカーならではの新しいプラットフォームを創り出そうとしているようだ。プラットフォームとは、価値を集めて提供する場であり、どのような価値をどのように集めるかによって、いろいろなモデルを考えることができる。


ハードウェア・アズ・ア・サービスのプラットフォーム

 このプラットフォームで提供する価値は、オンデマンドで利用できる、人や物の移動のための様々なモビリティサービスであり、それらは、トヨタが提供するAPIを使って、それぞれのモビリティサービス事業者が開発する。

 これは、アップルのiPhone(ハードウェア)と、そのアプリ(様々なサービス)の関係に似ている。トヨタはハードウェアの販売や、それぞれのサービスのためのハードウェアのカスタマイズ、運用管理やメンテナンスなどで利益を得ることができるだろう。そして、ユーザーに価値を提供する革新的なサービスは、iPhoneのアプリのようにスタートアップによって次々と生み出される。新しいサービスが生まれれば、それに連れてハードウェアのビジネスが拡大する。

 しかし、そのようなプラットフォームをスタートアップに押さえられてしまえば、トヨタはハードウェアをそのプラットフォームに提供する、競合する他社と横並びのベンダーの一つになってしまう。

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