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なぜ日本は"タバコよりお酒"に寛容なのか

■「適量の飲酒は健康にいい」という根拠

タバコは健康に影響があるといわれる一方、古くから語られてきた「適量のお酒は健康にいい」という考えは、最新の医学では疑問符が付いています。

飲酒の健康への影響を考えるためには、縦軸に健康度(上に行くほど不健康)、横軸に飲酒量(右に行くほど飲酒量が多い)をとったグラフが参考になるはずです。


写真=iStock.com/alejandrophotography

実は、このようにグラフをとると、飲酒量がゼロの人より、少量の飲酒をしている人のほうが健康という「右肩下がり」が最初に生まれます。その後グラフは右に進むにつれ、つまりアルコールの摂取量が増えるほど、不健康の度合いが高まって「右肩上がり」になります。結果として、少量・適量の飲酒が最も健康的というグラフができあがる。これが、「適量の飲酒は健康にいい」という根拠になっています。

しかしながら、このグラフには盲点があります。そもそも、飲酒ゼロの人には、「アルコールの摂取ができない・禁じられているほど不健康な人」が含まれているのです。彼らを含めて考えているために、「適量の飲酒」が一番健康度が高いようになってしまうというわけです。つまり、飲酒しないにこしたことはない、という結論のほうが有力なのです。

■タバコ部屋の会話は、なぜ役に立つのか

どちらも多かれ少なかれ健康に影響があるのに、酒は大目に見られ、タバコが煙たがられるのには、歴史的な背景も考えられます。飲酒の歴史は発酵の歴史であり、古代から長く人類と、日本人とともにありました。対してタバコは、中世にアメリカで発見され、日本に持ち込まれたのも戦国時代頃といわれています。日本人の喫煙率が高かったのは、戦後の高度経済成長期の間。「喫煙文化」は脆弱なものです。

対して、酒は古代から長い時間をかけてマナーや楽しみ方が培われてきました。近代に入り、蒸留酒、工業的な酒を造ることで、アルコール依存症が広まるなどの問題が生まれましたが、それでも、タバコに比べれば、「わきまえ方」「人の守り方」がはっきりとしています。職場で喫煙者が疎まれるのは道理にかなった話といえるでしょう。

「タバコ部屋のコミュニケーションが仕事に役立つ」という方もいますが、それは「部署を超えた交流」がそこで可能だから。そもそも、そのような重要な役目を、一時的に機能しているからとタバコ部屋に任せていたのがおかしいので、企業としてはそのような人材交流の企画はもっと正規に実施すべきでしょう。

■ストレス発散が、できなくなるのでは

時に、「酒やタバコでストレス解消になっている」と言い訳をする人がいます。また「ストレスのほうががんのリスクは高い」という人もいます。しかし、そういった場合の「ストレス」の使われ方には作為的なものを感じざるをえません。ストレス解消の方法は、酒やタバコ以外にもいくらでもあるからです。

心理学を学んでいるのに、「飲酒や喫煙はストレス発散になる」という無責任な人たちもいます。酒やタバコに寛容な日本社会を見るにつけ、我々、心理学者がいかに力不足だったかを痛感します。

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島井哲志
医学博士
指導健康心理士。関西福祉科学大学心理科学科教授。著書に『「やめられない」心理学 不健康な習慣はなぜ心地よいのか』など。

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(医学博士 島井 哲志 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)

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