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ネット時代の医療情報との付き合い方

■健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方

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私は「WELQ問題」にぜんぜん気づいていなかった。WELQ問題とは、「一部上場企業のディー・エヌ・エーが、グーグルなどの検索エンジンを攻略し、ウソや不正確な情報を、検索結果上位に大量に表示させていたことが発覚したもの」(P11)だ。

私は日常的に医学用語で検索しており、WELQが上位に表示された検索結果もきっと目にしていたはずなのだが、おそらく意識せずに無視していたのであろう。ネット上の医学情報は玉石混交だが、慣れると検索結果を一瞥すれば、信頼できそうかある程度は判断できる。しかし、必ずしも患者さんも同じように判断できると限らない。

WELQは長文の記事を大量に公開する方法で検索上位を獲得していた。検索上位に不正確な情報が大量に表示されていれば、それを信用してしまう患者さんもいるだろう。このWELQ問題を最初に指摘した*1のが、本書『健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方』の著者である朽木誠一郎さんだ。

『WELQ問題を指摘するためには、「健康についての情報がウソや不正確なものであること」と「その情報を上位に表示させるテクニックに問題があること」の両方を理解している必要』がある(P11)。著書の朽木さんは、医学部を卒業後、医師にはならずにネットメディアのライターになられた。その経験がWELQ問題にいち早く気づき、指摘することにつながったのであろう。複数の分野をつなぐ、ある意味学際的な役割を果たしたのだと言える。

朽木さんの指摘の後のネットメディアの反応は早かった。私もささやかながら■ネットの“ニセ医学”に要注意! 自衛手段を現役の医師に聞いてみた - トゥギャッチという記事に協力させていただいた。近藤誠氏のような問題のある医師を批判することがあまりない医療業界とはえらい違いである。

WELQ運営は「自分たちはプラットフォームである」「情報発信はユーザーが勝手にやったものである」として批判をかわそうとしたが、外部ライターに記事の書き方を支持するマニュアルもあったことがバズフィード・ジャパンのスクープで明らかになった(P79-80)。これらの指摘をうけて2016年末にディー・エヌ・エーはWELQの全記事を非公開とし、責任者が会見で謝罪するに至った。朽木さんの指摘からほんの3ヶ月間程度である。詳しくは本書を参照していただきたい。

もちろん、WELQが閉鎖したからといってネット上の医療情報の問題が解決したわけではない。「本当の戦いはWELQの後」(P92)である。WELQ後にも不正確な医療情報を含むページが上位に表示されていた。しかし、グーグルのアップデートによってそうしたページは順位を落とすなど、少しずつ改善はしている。インターネットの自浄作用は確かにあると感じる。

とはいえ、ネット上から不正確な医療情報を撲滅することはできない。また、仮に可能だとしても撲滅すべきではない。多様な情報にアクセスできることもネットの価値の一つであるからだ。そのネット上の多様な医療情報のうち、信頼性のあるものの見分け方、声の上げ方の提案も本書でなされている。まさしく副題にあるように「ネット時代の医療情報との付き合い方」についての本である。

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