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朝鮮民族を排斥すること勿れ

本稿では韓国籍・北朝鮮籍・朝鮮籍の総称として朝鮮民族という呼称を用いる。

まず大前提として、旧帝国時代、半島は日本領であった。そして、半島には国民国家の基本たる大日本帝国憲法が適用されることがなく、総督府支配の下におかれ、本土とは一線を画する存在であった。

しかしながら、半島から本土へ移住した朝鮮民族は大和民族同様に選挙権・被選挙権を得、地方議会に籍を置く者もいた。これは法制上在地主義を取っていたからであり、逆に大和民族が半島へ渡れば、その権利は喪失した。

このことの意味をまず考えねばならない。それは、半島からの移住者たる朝鮮民族に対し、必ずしも敵視ばかりをしていたわけではない、という点がまずあげられる。そして一方で、半島全体としてみた場合、いまだ総体としては「国民」に有らざる者として扱っていた、ということでもある。

それに対しては「日本語」という言語障壁が大きく、一方では文化的差異が依然として存在していたことを挙げることができるだろう。半島における日本語教育は、しばしばこれを差別の表れ、弾圧の象徴として挙げる向きもあるが、そういった側面がある一方で、日本語教育それ自体が「大日本帝国」という国民国家における「国民化」であったこともまた、否定し得ない事実であろう。

転機となるのは1938年の特別志願兵制度施行である。ただし、ここで留意しなければならないのは、志願兵が1943年時点で志願者30万人、採用 6,000人強と、実に50倍近い倍率であり、それを以て「強制徴兵ではない」上、「望んで参加したものだ」と安易に即断するのは危険である、という点である。特高関連資料にもあるように、この志願兵を「内地人より優秀」と評価する者もあれば、「警察より半強制的に勧誘」されたとする者もあり、また「将来の半島独立のために兵士としてのノウハウを学ぶ」ことを意図した者もあり、その様相は様々であった、という事実がある。それぞれに事情があり、またそれぞれの思惑によって志願し、また志願を強要された、ということである。

兵卒でこの状況なのであるから、当然のことながら経済面での斡旋事業などにおいても、自発的なものだけではなく、そういった陰陽の強要もあったと推定するのが、妥当な判断だろう。

また、厚労省統計によれば、最終的に朝鮮人軍人・軍属は約24万人にのぼるとされる。そのうち戦没・行方不明者は2万人強である。台湾人軍人・軍属は18 万人弱であり、それを上回る人数である。これらは「大日本帝国」の戦争遂行における、遂行者でもあり、また犠牲者でもあった。

これらは先の大戦において、共に闘い、また斃れていった者たちでもある。これらの戦没者は靖国神社へと合祀されている。靖国神社の抱える問題はそれとして、国家として国のために戦い、斃れた者を、大和民族と隔てることなく慰霊することは、国民国家としての責務でもある。これに対して様々な批判があることは承知しているが、これを分けることが必ずしも良いことかどうか、自分には判断がつかない。また、遺族の希望等で仮に分祀するなどしたとしても、やはりそれに対する慰霊と敬意は忘れてはならないだろう。

靖国神社そのものが、戊辰戦争における新政府側の死者のみを祀っていることから、「あれは新政府側の祭神で、まして皇室とは関係がない」という意見もあることはあるが、現状において、戦後の政・神分離後も、引き続き戦没者の慰霊にあたってきた施設であり、今後別の施設で同様の機能を持つものができない限りにおいては、これは仕方のないことであろう。また遊蹴館の展示内容の問題はあるとしても、慰霊と敬意は怠るべきではないだろう。

また、徴兵制施行に伴い、結果として敗戦により実施されなかったとはいえ、半島にも選挙権・被選挙権の適用が準備され、あのまま戦争が継続し、実施が延期されなかった場合、衆議院において貴族院の勅撰議員とは異なる、まったくの国民国家のそれとしての選挙が行われ、議員が誕生したであろう。

このことは、最終的に名実ともに国民国家としての大日本帝国領域に組み込まれることを意味している。現実としてその手前の段階までは進んでいたのであり、そのことの意味を真に問わなければならないだろう。

それが望むところであったかどうか、については異論を分かつところではあるが、確かに大和民族に加え、朝鮮民族は国民国家としての大日本帝国に、名実ともに組み込まれつつあったのであり、ある側面で見れば確かに「欧米の植民地支配とは異なる」と言えない訳でもないだろう。しかし、その意味するところは「投資もした」「教育も行った」という「良いこともした」論ではなく、「対等の国民として、国家への参画を求めた」ということである。(実態として対等であったかどうか、ではないことは留意しておく必要はある)

また、創氏改名などにおいて、それは「強制ではなかった」という言説は、確かに表面上はそうであったかもしれないが、実態としては志願兵制のところで見たように、半強制が行われていたであろうことは想像するまでもなく、またそれをせず朝鮮名のままで居ることもできたという事実もある(よく引き合いに出されるのは士官学校出の将校である)。

この改名においては、依然として差別が残る朝鮮民族に対して、日本名の方がはるかに社会生活上、特に本土においては融通が利いた、ということはあるだろう。一方で、そもそも日本のように氏姓・苗字が混沌としてしまっていた状態と、半島におけるそれはまったく別の文化であり、また日本と異なり夫婦別姓(日本においては法令上姓ではなく氏である)が基本であったことから、日本の戸籍制度適用は心理的抵抗も大きかったであろう。

よく通名制度が問題視されることがあるが、これらの要因は十分に勘案すべきであるし、日本の議会等においても芸名をそのまま通名として公称で用いたり、また煩雑な旧字が戸籍上の名前であるが、社会生活上新字を用いることも、また通名の一種である。社会生活上、婚姻後も旧姓を用いることも、通名の一種と言えるだろう。「通名を使うな」という言説を行う一方で「朝鮮人は出ていけ」という言説を振るう時、そもそも「社会生活上の障害」を齎しているのは他ならない「出ていけ」という言説であり、そういった状況が通名の使用を半ば促進している、という側面がある。こういった言説は無茶苦茶と言えるだろう。それに、何も通名を使っているのは在日韓国・朝鮮人だけではない、その他の欧米・アジア諸国等の在日外国人全般で行われていることでもある(特に芸能関係では多いだろう)。また、報道における通名・本名の是非については、これはメディアのガイドラインが無いことによるもので、通名使用者には何らの責任もない。

そも八紘一宇を造語した田中智学の意図は、ダッチロールに陥っていた軍拡・拡張主義における自民族至上主義でも何でもなく、「人種も風俗もノベラに一つにするというのではない、白人黒人東風西俗色とりどりの天地の文、それは其儘で、国家も領土も民族も人種も、各々その所を得て、各自の特色特徴を発揮し、燦然たる天地の大文を織り成して、中心の一大生命に趨帰する、それが爰にいう統一である。」ということであって、何らかの排斥を求めるものではない。そして、この言葉はそもそも日本書紀の記載から導かれたものであり、この言葉の意味を間違えてはならない。伝統的文意は「道徳」である、と極東軍事裁判の検察側でさえも、その本来の意味を理解し得たのだから(そしてそれが侵略の象徴として用いられた)、それが理解できない訳が無い。どのような言葉であれ、その用い方を誤れば刃にもなるが、本来の意味を忘れず、他民族尊重の道徳的立場に立てば、排斥など以ての外だろう。

理念を忘れ、王道を忘れ、その末に国を誤った戦前のそれを繰り返すことなく、真に包摂し(同化、ではない)、日本国という一宇の下に人種も風俗も、各自の特色特徴を発揮するこ社会を築くことこそ、道徳的でありまた誇るべき日本国の有り様ではないだろうか。

その時、現在の国家間の摩擦・対立を基点にするのではなく、それ以前にまず共に戦った者としてその功を認め、摩擦・対立を超えて、再び共に手を取る社会を築くべきではないだろうか。

過去百済からの亡命を国家建設の一助とし、遣隋使・遣唐使を通じて文化の深耕を図り、文禄・慶長の役における技術者の流入で各地の窯業が盛んとなり(それ自体は収奪であったが)、明治維新後には日本で学んだ人士が韓国やまた中国における社会の礎ともなったのである。決して不可能なことではないし、困難な時代であればこそ、なおその力を借り、また援け、歩んでいくべきだろう。

犯罪は犯罪として取り締まれば良い。それだけのことで、民族全体を排斥の彼方へ追いやることが、どれほど道徳的行為であるか。よくよく考えるべきであろう。

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