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仮想通貨のカオスの中で、送金に革新を起こすリップル

本荘 修二 , OFFICIAL COLUMNIST


SLUSH TOKYOのステージに登壇したリップルのステファン・トーマスCTO

リップルというと日本では仮想通貨のイメージが強いが、実は、多くの金融機関と連携して国際送金を実現している企業向けITソリューションが本業だ。

同社は、銀行など金融機関、ペイメント業者、その他事業会社に国際送金をはじめとするペイメント・サービスを提供し、ソフトのライセンス料と利用に応じた課金で売上を得ている。その一部のサービスに、仮想通貨でおなじみの「XRP」が活用されている。

事業会社としての本業とXRPについて、「SLUSH TOKYO」のために来日していた同社CTOのステファン・トーマス氏、チーフ・クリプトグラファーのデビッド・シュワルツ氏の話を紹介したい。

データのようにお金を動かす

リップルのビジョンは、インターネットでデータをやり取りできるように「価値=お金」を動かせるようにすることだ。

「リップルはエンタープライズ・ソリューション企業であり、ペイメントを劇的に改善することが使命である」。2日間にわたるSLUSH TOKYOで3度も登壇した注目の人、トーマス氏は力を込めてそう語る。同社は国の通貨や様々な決済方式をつなぐことで、安全・確実・透明かつ高速・効率的なプロセスを実現しようとしている。

そのペイメントのプロセスの一部に「XRP」が活用されている。例えば米国からメキシコへの送金に、「ドル > XRP > ペソ」とXRPを介することで送金効率を最大化する。

しかし、仮想通貨市場でXRPの存在感が高まる一方で、リップルにとってXRPそのものは「長期的に売上に貢献するかもしれない」という位置づけであり、当面のビジネスモデルには入っていないと言う。

ではリップルは現状のペイメントをどう見ているのか? それについてトーマス氏は「驚くほどひどい状況だ」といくつも事例を挙げる。

「海外送金の12%が失敗している。宛先や名前など間違いがあれば届かないし、電話でやり取りすると間違いは多くなる。数日かかる海外送金でこれだけ失敗率が高いために、ある銀行でプレゼンしたとき、『リアルタイムで残高が分かるだって?』と驚かれた。そこの銀行では、PDFを電子メールして集計するという手作業で残高を計算していた」と話す。

ひどいのは海外送金に限らない。「ウーバーの運転手が『この支払いがまだだ』とクレームを入れると、ウーバー社はその支払いについて調べるよりもコストが低いからという理由で、単にもう一度支払いを実行している」とトーマス氏。

つまり、改善のチャンスだらけだという。確実かつ超効率的に送金でき、さらにリアルタイムに見える化ができるソリューションを提供するリップルは、こうした海外送金以外のペイメントも狙っており、市場のポテンシャルは大きいと確信している。

ビットコインとの比較

他のデジタルアセットとの違いは何か? ビットコインとXRPの比較について、トーマス氏とシュワルツ氏の話から、要点を紹介したい。

トーマス氏は、「ビットコインはコストも効率も問題がある。マイニングに多大な電力とコンピューティング・リソースを費やすから、非常に金がかかる。一方、XRPはペイメントという特定の課題にフォーカスしたシンプルなもので、高速かつ効率的に取引を成立させる」と言う。

シュワルツ氏も、「ビットコインのコミュニティは皆目を覚ますべきだ。電力会社やマイニング用機器メーカーに売上を計上させ過ぎだ。ビットコインに長所はあるが、現実的に考え、課題を直視したほうがいい。私はアンチ・ビットコインではないが、ビットコインが理想的だと誤った主張をするのはやめたほうがいい」と語る。

また、ユーザーとのパートナーシップについての違いも大きい。ビットコインなどデジタルアセットにはユーザーサポートはないが、リップルはユーザーリレーションを重視し、顧客企業を支援している。「リップルは、金融機関が規制に合致し、安全に取引できるようサポートする。そして、顧客企業だけでなく取引所をサポートしている。これは我々の責任だ」とトーマス氏は強調する。

業界と人心を歪ませる投機熱

リップルの今後の課題については、「技術的にはスケーラビリティ。需要に応えるべくシステムを進化させねばならない」とトーマス氏は言う。

しかし、もっと悩ましい問題がある。「もう一つのチャレンジはデジタルアセットの投機が行き過ぎていること」だ。「仕事中に価格をチェックしたくなる社員もいる。投機に目を奪われず、顧客のところに行って役に立て!と、ペイメント事業に集中するよう努めています」と社内で取り組んでいるという。

だからこそ採用では、「Love for Payment」を重視している。「投機熱はブロックチェーン業界に歪んだ見方をつくっている。だから我々はペイメント企業であり、ブロックチェーン企業ではないと伝えています」とトーマス氏。

日常では、リップルのTシャツを着るのをやめたという。「世間はリップルの人は金持ちだと思っており、誘拐のリスクすらある。投機熱を望まないが、我々にはコントロールする術はない」。投機熱が業界と人心を歪ませていることが、大きな問題になっている。

リップルのエコシステム戦略

すでに三桁にのぼる国々の金融機関がリップルのサービス・ネットワークに参加している。日本では、SBIとの合弁会社「SBI Ripple Asia」がマーケティングを担い、61の銀行が参加している。

「リップルは技術を提供するが、ローカルのパートナーはマーケティングを担い、顧客を獲得するために重要だ」とトーマス氏。日本は成功例だと言う。

またリップルは、W3C(World Wide Webで使用される技術の標準化団体)でのオープンソースのイニシアティブであるInterledger(ledger=台帳)をリードし、様々な台帳間をつなぐプロトコルの啓蒙に努めている。この活動は、「システムにエネルギーを加えるため」という。つまり、リップルのビジョン実現に向けたエコシステムの醸成だ。

エンジニアなら誰でも参加できるW3CのInterledgerのオープンなイニシアチブでは、多数の少額課金が必要となるコンテンツなどのウェブサイト用のアプリケーション開発に着手している。

「ペイメントは、国や市場により異なり、摩擦が大きい。アマゾンは300人の技術者で対応しているが、小さな会社には難しい。世界のあらゆるペイメントを高効率にしたい」とトーマス氏は展望を語った。

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