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プライバシーか、安心安全か。街中にカメラを設置した先進事例より<韓国視察>

 街中にある監視カメラはプライバシー侵害か。それても安全なまちづくりになるのか。古くからある論争へのひとつの答えが韓国にあった。



■常時、カメラでモニターをおこなう

 電子政府の現状について、仁川(インチョン)スマートシティ(IFEZ)、ソウル市芦原(ノウォン)区を視察してきた。



 仁川スマートシティは、仁川市の埋立地に建設されている松島(ソンド)という新たな都市のことで上下水道、交通網、通信網などのインフラを街の建設と同時に整備している新都市だ。

 芦原区は、ソウル市にある25の行政区のうちのひとつで人口は約55万人の都市。いわば東京23区の中のひとつの区で、生活保護者数が最も多い区といわれ、いわば下町ともいえる都市だ。

 そのどちらにも共通していたのは、ICTを積極的に活用していることだった。多方面で活用し先進事例が数多くあったのだが、その中でも驚かされたのは、CCTV(監視カメラ)を街中に設置し、役所の中の総合管制センターで常時その映像をモニターしていることだった。





■犯罪の抑止にも

 CCTVによるモニターの対象は、犯罪や道路の交通の状況だけでなく駐車違反の取締りや火災の検知(仁川では熱センサーが組み込まれていた)も可能で街の安全を守る役目を果たしている。また、道路の破損状況を知ることや公園での不法投棄の監視、池などへ人が転倒しないかなどの保安対応も可能となっていた。



 さらに、CCTVが設置してある柱には、スピーカーが取り付けられており、センターから警告のメッセージを発することができることや非常ボタンが取り付けてあり、ここを押すことでボタンの周囲の状況が映し出され、周囲の状況をセンターで瞬時に把握することができるようにもなっていた。

 芦原区は東西6km、南北9km、面積は35.44k㎡。ここに1,752台のCCTVが設置されている。仁川は"企業秘密"のようで管制センターの写真撮影が不可だったように詳細の説明はなかった。

■センターには警察官が常駐

 センターには警察官が常駐しており、駐車違反や犯罪が分かると、その場で警察官を急行させることで犯罪への対応ができる仕組みだ。当然ながら画像は記録されているので証拠ともなる。

 また、画像認識ソフトが導入されてあり、CCTVの映像から犯罪パターンを認識するとセンターのモニター画面に注意マークがポップアップ表示され、職員が目で確認し状況を把握できるシステムも導入されていた。実際の画像を見るとかなり鮮明に映し出され、地図ソフトとも連携できるので、どこで何が起きているのか瞬時に分かり、危険なことがあれば、センターの後方に控えている警察官に情報を伝え、即座に対応ができるようにもなっていた。これはセンターの職員(仁川の場合は市の外郭団体職員)には警察権がないので警察官が指示できるようにしているためだ。

■日本でも可能では

 このようなシステムを導入するには、仁川のように街全体を新たなに建設するのであれば導入しやすいように思えるが芦原区のように旧市街地が多い街では難しいように思えてしまう。ところが、警察や行政、商店街などが別々に導入していたCCTVを一括して管理できるようにしただけで、多額の費用はかかっていないとの説明だった。

 携帯電話回線を使えばケーブルを設置しなくても可能なのは日本でも同じだ。考え方によっては日本でも同じようなシステムの導入は可能だろう。

 実際に街中にあるカメラは、撮影した画像をカメラの中で収録し、何かあった場合に画像を再生して確認するケースが多い。この画像を携帯電話回線で飛ばせば同じようなことが可能になるからだ。

 とはいえ、考え方次第だ。

 カメラが増えればプライバシー侵害を思う人が増え、そう簡単に日本ではできそうにないと思えるからだ。

■プライバシーか、安心安全か

 このことを聞くと、韓国でも当初はプライバシーを問題視し、苦情があったそうだ。しかし、検挙実績があがり、高齢者が転んでも分かるので安心につながっていることで市民評価はあがり、今では、なぜ自宅近くにもつけてくれないのか、といった"苦情"が来るほどとなったという。日本でおこなうのなら実績を上げることが必要です、とは視察対応してくださった担当者の意見だった。

 CCTVによるモニターは、仁川スマートシティでは大きなセールスポイントにもなっている。経済特区でもあり新たな住民を呼び込まなくてはならいのだが、そこには、安心安全な街といったイメージが必要だからだ。芦原区でも同様に街のイメージアップを狙っている。そのことが新住民を呼び込むことにもつながるからだ。



 さて、このようなモニターシステム、どう思うだろうか。プライバシーが心配だから嫌だ、との気持ちは分かる。一方で、後ろめたいことはしていないのだから、安心できるほうがいい。いわば、街中にCCTVという警察官の立ち番をしているようなものだ、との考えも分かる。

 答えは簡単ではないが、韓国でのこの取組は、監視カメラによるプライバシーvs安心安全論争へ、大きな一石となりそうだ。



※写真上から
・仁川スマートシティに設置されているCCTV。LEDランプもあり夜間でもモニターが可能
・仁川スマートシティ
・芦原区の総合管制センター
・モニター画面
・非常ボタン(画像下側)とスピーカーも設置されているCCTVのサンプル
・総合管制センターの大画面には注意対象となる画像を大きく写すことが可能。鮮明だ
・街中にCCTVでモニターしているとの表示があふれていた。

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