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首相案件

  東日本大震災では多くの犠牲者を出した一方で、約1万9千人の命が救われました。その7割を救助したのが自衛隊でした。これらの活躍等で、自衛隊に対する信頼と期待は高まりをみせていました。

  ところが、防衛省・自衛隊はせっかく築き上げてきた信頼を、大きく失いかねない事態を招いています。これまで「存在しない」としてきたイラク派遣時の日報(活動報告)が相次いで発見されています。隠蔽なのか凡ミスなのかわかりませんが、お粗末極まりません。

  戦国時代の甲斐の名将・武田信玄の戦功を中心にまとめられた「甲陽軍鑑」(全20巻)は、陣営や諸道具などを詳述し、甲州武士の思考や行動も生々しい迫力で記しています。古代ローマの政治家・カエサルも長期にわたる遠征戦の経緯を「ガリア戦記」(全8巻)としてまとめています。多少事実と異なる点があったり文学的誇張があったとしても、古今東西の別なく真の勇者は歴史の検証に耐える文書を残してきました。

  わが国の自衛隊海外派遣部隊もイラクや南スーダンで、命懸けで任務を遂行してきたはずです。その汗と泥にまみれた活動を記録し、しっかり管理し、求められれば堂々と公開(インテリジェンスに関わる部分を除く)するということがなぜできないのでしょうか。

  防衛大臣は連日謝罪し、頭を下げています。しかし、約25万人の自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣です。残念ながら、安倍総理が「日報問題」を自らの案件だと強く自覚しているようには思えません。

  「加計学園」の獣医学部新設をめぐる疑惑も再燃してきました。愛媛県職員らが2015年4月に当時の柳瀬唯夫総理秘書官と面会した記録が見つかりました。そこには柳瀬氏が、「本件は、首相案件となっており…」と発言したとの記載がありました。柳瀬氏は「自分の記憶の限りでは、お会いしたことはありません」と逃げています。が、記録と記憶とではどちらが説得力があるのか、火を見るよりも明らかでしょう。

  「森友学園」への国有地売却問題にいたっては、公文書改ざんだけでも十分に衝撃的でしたが、口裏合わせやごみ増量依頼など驚天動地の事実が次々と明らかになってきました。もはや焦点は財務省が何をやったのかではなく、どのような理由でこんな信じ難い愚行を積み重ねたのかに移りました。

  事の発端は、総理夫人が森友学園の名誉校長を引き受けたことから始まります。昭恵氏が務めていた名誉職は計55件。その中には、加計学園の認可外保育施設も含まれています。安倍総理は国会で、「妻が名誉校長を務めているところはあまたあるが、行政に影響を及ぼしたことはない」と、答弁しています。果たして真実なのでしょうか。

  突きつめると、今日の政治・行政への国民の不信は、すべて「首相案件」です。

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