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【読書感想】小保方晴子日記

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 「科学研究や論文への信頼」を大きく傷つけたという点で、STAP細胞事件の主謀者とされている小保方さんには、大きな「罪」がある。もちろんそれは、「わざとやっていたのならば」という前提なのですが。

 それでも、多くの匿名の人からの激しいバッシングや母校からの博士号取り消しの経緯、マスメディアからの自宅への取材目的での度重なる来訪などを読むと、ここまでの「罰」を彼女ひとりが受けるべきものなのか、と疑問になるんですよ。

 小保方さんは、対人恐怖に怯えつつ、精神科の薬を大量に飲みながらも、自分のよりどころである早稲田大学での卒論を修正し、学位を維持しようと努力するのですが、大学側は、世論を重視して、「いくら修正しても認めるつもりはない」「あなたは信頼できない」という前提で無理難題を押し付けてきます。

 パニックが始まったのは先生たちがお帰りになった後。先生、違います。私はほかの学生と同じように正式に審査を受けて学位を授与されました。何らかの手段を使って強奪したわけではありません。指導して審査して合格を出して学位を授与したのは、ほかならぬ先生方です。今になってその判断を変えようとするのはおかしいと思いませんか。私一人にだけ違う扱いをするのは理不尽だと思いませんか。どうして笑いながらそのようなことをおっしゃるのですか。どうして、どうして、どうして。

「無駄かもしれないけれど博士論文の書き直しを始めるつもりです」と、心配してメールをくれた友人に返信をした。
「人生の焼け野原にぽつんと立っているような気持ち」とノートに書いた。

 この件に関しては、小保方さんが言うことに、一理以上あると僕は思うのです。なぜ、学位審査のときに、その不備を見抜けなかったのか。そのために審査をしたのではないか。「世の中が許さないから、学位は剥奪するし、論文も認めない」というのが既定路線なのに、再審査をするフリをして一個人に期待をもたせるのは、あまりにも残酷なのではないか。

 大学側としても、「学問の場としての建前」を維持しなければならないとはいえ、苦渋の選択ではあったのでしょうし、僕が審査する側だったとしても、「われわれにも責任がある」とは言い出せなかっただろうけど。  

 家に帰った数時間後、インターホンが鳴った。基本的にインターホンには出ない。でも続いてドアをドンドン叩かれたのだった。異変を感じて、インターホンのモニター画面を見ると、見覚えのある週刊誌の記者の顔だった。
 一瞬にして血の気が引き、恐怖が全身に満ちた。
 爪を剥がしながら必死に這い上がってきた崖の上から、足蹴にされて再び地獄に叩き落された気分だ。

 この日記のなかでは、人目を避けるために、ずっとマスクをしていて、ひとりひとり仕切りがあるラーメン屋(一蘭?)でしか外食ができなかったことや、過食や体調の変化などの日常もつづられています。
 日記好きの僕としては、「不謹慎かもしれないが、この人の日記は面白いなあ、よく書けているなあ」と思いながら読んだんですよ。文章も上手い。

 ところどころで、ペットの亀への愛情がつづられていたり、献身的に助けてくれる「親友さん」や研究室の先輩(同僚)の話も出てきます。登場人物の性別が推測できるような「彼」「彼女」という三人称や会話などが、注意深く取り除かれていたことに、読んでいて不思議な感じがしたのです。

 「親友さん」=「恋人」なのだろうか、ここまでのことをしてくれるのだから、というようなゲスな勘繰りもしてしまったのですが、誰のことか濁してないと、その人に迷惑がかかるから、という意図なのかもしれず、これもよくわかりませんでした。でも、親友に「さん」は付けないよね一般的には。浮世離れしたファンタジーの世界のとらわれの姫みたいな日もあれば、淡々とした一日もある。そして、怒りや絶望に支配されていることもある。

 のどが渇いて、お腹が空いてつらい。一人でしゃぶしゃぶをして、焼き菓子を食べて、八宝菜を作って、全部食べた。それから、柿、チョコレート、甘鮭、チャーシュー、マドレーヌ、チーズケーキ、ヨーグルトを食べた。気分が悪くなって、駆け込んだトイレで泣いた。

 朝は食べるのをやめて、お昼にお茶漬けを食べた。午後には調子が悪くなってダウン。かかって来た電話に出られなかった。夜はステーキを3枚焼いて食べた。

 過食と拒食の繰り返しや体重の変化、日々のメニューなども書かれているんですよね。何をどれだけ食べたか、というのは、その人の精神的・身体的コンディションに直結している情報なのだな、とあらためて思います。

 これを読んでいて、僕は壇蜜さんの日記を思い出しました。小保方さんも、「小保方晴子を演じている、あるいは、観察している」時間と、「やっぱり自分が小保方晴子なんだ」と感じている時間が入り混じっているのかもしれません。

 一人だと思って大浴場に入っていると日帰り入浴のお客さんが入ってきた。思わずタオルで顔を隠した。体ではなく顔を隠しているなんて滑稽。頭の3パーセントほどではそう思っているのに残りの97パーセントが恐怖で埋め尽くされてしまう。

 け、けっこう仮面……
 ……というような、不謹慎なことを思いつつ読みました。

 状況は極めてシリアスなのに、けっこうユーモアも交えて書かれていて、面白い人、面白い日記だなあ、というところも多々ありました。被害者意識にとらわれている日もあれば、自分の状況を客観的にみている日もある。どこまで本当のことが書かれているかどうかはわからないけれど、「ハマる」日記ではありましたよ。

fujipon.hatenadiary.com
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あの日 あの日


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