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米英仏がシリア攻撃 「第二のキューバ危機」になり得るか

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[写真]英仏とともにシリア攻撃に踏み切ったことを発表するトランプ米大統領(ロイター/アフロ)

 シリアの現地時間で14日午前4時頃、米英仏3か国がアサド政権に対して軍事行動を行った。攻撃に参加した3か国は、アサド政権が現在も保有する首都ダマスカスなどの化学兵器関連施設に対し、空対地ミサイルなどを用いた精密攻撃を実施。シリア軍も地上から応戦したが、攻撃から間もなくして行われた米国防総省(ペンタゴン)の記者会見では、標的となった施設の破壊は完了したと発表されている。シリア国内でアサド政権軍が反体制派を標的にした化学兵器を使用した疑いが浮上したのが今月7日で、そこから僅か1週間で米英仏は攻撃に踏み切ったことになるが、アサド政権はロシアとイランに支援されており、西側諸国とロシアとの関係が一気に悪化する懸念も浮上している。

シリアの化学兵器関連3か所が標的に

[写真]米英仏による攻撃でダマスカスの空を横切るミサイルが見える(SANA/ロイター/アフロ)

 現時点で英米仏による攻撃の規模がどれくらいであったかの詳細は判明していないが、攻撃には巡航ミサイルが使用され、艦船と攻撃機、爆撃機から発射された模様だ。英空軍は地中海のキプロスにある軍事基地から攻撃機を出撃させ、空から巡航ミサイルを標的に向けて発射したと伝えられている。フランス軍はフリゲート艦と戦闘機を作戦に参加させたと伝えられており、アメリカもアフリカ東部とアラビア半島に挟まれた紅海を巡航中の艦船とB-1爆撃機が作戦に参加した模様だ。

 攻撃から1時間後、ペンタゴンでマティス国防長官とともに記者会見を行ったダンフォース米統合参謀本部議長は、軍事攻撃で標的としたのはシリア国内の3か所で、首都ダマスカスにある化学・生物兵器の研究開発施設、中部ホムスにある化学兵器の貯蔵庫と作戦司令部だったことを明らかにしている。

 マティス長官は会見で、攻撃に使用された兵器の規模は「昨年(のシリア攻撃時に使われた巡航ミサイル)と比べて2倍程度になっている」と語っており、少なくとも100発以上のミサイルが使用された可能性を示唆した。あるペンタゴン高官は匿名でワシントンポストに対し、攻撃に使用された兵器のうち、約100発は巡航ミサイル「トマホーク」であったと語っている。昨年4月、米軍はホムス近郊にあるシャイラート空軍基地に向けて59発のトマホークを発射している。

 ペンタゴンは「現時点では今回の攻撃のみ」と限定的な攻撃であったことを強調。しかし、攻撃の規模をめぐって、ホワイトハウスとペンタゴンでコンセンサスが取れていたかに関しては疑問が残る。CNNは絨毯(じゅうたん)爆撃を含む大規模な空爆も視野に入れていたトランプ大統領に対し、ロシアとの本格的な衝突を懸念したマティス国防長官が最後まで抵抗し、化学兵器関連施設への限定的なミサイル攻撃で落ち着いたと報じている。また、アメリカはロシアにシリアへのミサイル攻撃について、2015年に開設した「衝突回避ライン」を用いて事前に通告したが、標的の詳細については情報を流さなかったと、ダンフォース統合参謀本部議長が会見で明らかにしている。

きっかけは東グータでの化学兵器使用疑惑

 今回のシリア攻撃のきっかけとなったのは、今月7日にダマスカス近郊にある東グータ地区のドゥーマで地元住民らに対して行われたアサド政権軍の攻撃であった。化学兵器によるものとの疑いがあり、70人以上が死亡したとされている。シリア国内で内戦の負傷者を救助する活動を行っている民間組織「ホワイト・ヘルメッツ」の関係者は、シリア軍のヘリコプターがドゥーマ上空で複数の爆弾を投下した直後に、周辺の住民らが体調の異変を訴え始めたと証言。爆弾には塩素ガスかサリンが詰められていた可能性があると指摘していた。

 治療を受ける地元住民らの映像が世界中に配信されると、欧米諸国はすぐに反応を見せた。9日になってトランプ大統領がホワイトハウスで報道陣に対し、「軍と協議し、今後24時間から48時間の間に重大な決断をするだろう」と語り、シリアにおける化学兵器使用疑惑を激しく非難した。しかし、アサド政権は化学兵器の使用を否定。シリアを支援するロシアのラブロフ外相は、「(ドゥーマでの化学兵器使用は)仕組まれたものだった」と公言し、欧米諸国による反ロシア政策の一環であると主張した。オランダのハーグに本部を置く化学兵器禁止機関(OPCW)は12日、スタッフが14日からシリアに入り、現地で検証を行うと発表していたが、ミサイル攻撃は検証作業の開始前に実行された。

 ロシアとイランはシリアのアサド政権をさまざまな形で支援しているが、特にシリアとロシアとの蜜月関係は長く、旧ソ連時代から続いている。中東でのプレゼンスを確立したかったソ連は、兵器の売却を通じてシリアやエジプトとの関係を構築。1957年には当時シリア空軍少佐で、後に1970年のクーデターで大統領に就任するハーフィズ・アサド(現シリア大統領バッシャール・アサドの父)が、ミグ17戦闘機の飛行訓練のためにソ連に10か月ほど滞在していたほどだ。このように多くの軍人や学生が50年代からソ連に留学しており、ロシア人女性と結婚したシリア人エリートも少なくなかったのだという。

 シリアでは1963年と1970年にクーデターが発生しているが、シリアは国内の政治事情に関係なく、冷戦時にも外交方針を変えることなく、ソ連を支援し続けた。現大統領のバッシャール・アサド氏が大統領に就任してからも、ロシアとは有効な関係を維持しており、2011年3月から始まったシリア内戦では、アサド政権を支援する目的で最大4000人程度のロシア軍部隊がシリアに駐留している。

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