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防衛省"北朝鮮ドローン対策"放棄したワケ

■中国・北朝鮮に"土下座"するしかない

平昌冬季五輪の開会式は、まさにドローン関連の民生技術の発展を知らしめるものであった。米・インテル社が1218台ものLED搭載のドローンを1人のパイロットが地上から操作し、さまざまな編隊を組んでみせるショーを行った。しかも、このプログラムは最短で1日でつくれるという。

平昌五輪開会式でハートの形をつくるドローン。(時事通信フォト=写真)

いみじくもこの五輪ショーの1カ月前、人類史上の一大転換点が起きた。シリアのロシア軍基地を手づくりドローンの群れが襲撃したのだ。この意義は、(1)手づくりのドローンによる集団攻撃、(2)65年ぶりに大国の軍隊が空爆を受けた、ということに尽きる。

特に前者は深刻だ。この機体は草刈り機のエンジンやガムテープなどで構成され、10発の手りゅう弾を搭載。50~100キロもの彼方から飛んできたのである。要するに民生部品の寄せ集めであり、ホームセンターに行けばロシア軍を爆撃できてしまうのである。

今回は、たまたま被害がほとんどなかったが、それはライト兄弟の機体を見て、航空機の脅威を過小評価するような行為だ。そもそも、ヤマダ電機で販売しているような2万~3万円のドローンによる爆撃がシリアやイラクでは相次いでいる。ウクライナの世界最大の弾薬庫がロシア側の民生ドローン爆撃によって吹き飛んだのも記憶に新しい。モスルに進軍中の米軍部隊もこの手の攻撃を過去に受けている。

これらは、格安・手軽・容易・大量に攻撃できる手段を与えるものであり、しかも、小型ドローンは従来のレーダーでは把握しにくいことが問題となっている。また、ミサイルしか対抗手段がないが、それでは費用対効果が低いという点が問題となっている。「200ドルのドローンを300万ドルのパトリオットミサイルで迎撃する羽目になっているが、これは費用対効果としては問題だ」とデビッド・パーキンス大将が批判する所以である。

■米軍や自衛隊基地にはドローンを飛ばし放題

こうした事態を受けて、米側の取り組みは著しい。米国防総省は、2017年に、米国内の133の軍事施設付近でドローンが飛行していた場合、どのようなものであっても撃墜する権限を付与している。また、装備面でも、(1)イラクやシリアの米軍を中心に対ドローン電子銃を配備、(2)対ドローン専用ショットガン弾頭(通常のショットガンから巨大な網を発射する)を調達、(3)イスラエル製の対ドローン電子兵器、(4)艦載用レーザー兵器を2基調達する等、急ピッチの対応をしている。

また、ドローンの軍事利用も進めており、興味深い例としては、2018年2月に国防総省の研究機関DARPAが発表したものでは、海洋生物の反応や、発する音をデータ収集することで潜水艦を探知するシステムの研究開発にも挑んでいる。なんとウナギの反応を水中ドローンで探知して、潜水艦を見つけるというのだ。

しかし、わが国は残念な状況である。なんと、防衛省は、ドローンを米軍基地に飛ばさないように呼びかけているだけなのである。2月20日、防衛省は、米軍基地周辺でドローンを飛ばさないように呼びかけるポスターやビラを作った。以前、本誌で米軍高官が小野寺五典防衛大臣に米軍基地周辺のドローンに対応するよう異例の申し入れを行ったと紹介したが、その顛末がこれだ。

この報道の意味は3つある。第1に、防衛省自衛隊は、北朝鮮や中国や反対派のドローン攻撃に対して「お願いしかできない」ということだ。第2は、「米軍ヘリの飛行を妨害した場合、法令違反に当たる場合がある」と声明を出しているが、これは法律に違反しない場合もあることを示しているに等しい。第3に、米軍や自衛隊基地にはドローンを飛ばし放題、という本稿での主張が改めて防衛省のお墨付きで証明されたということだ。

世界中でドローンの恐ろしさがあらわになっている中、わが国は米軍基地や自衛隊基地周辺でドローンを飛ばさぬよう、中国・北朝鮮・過激派にお願いする姿勢を示している。これでは、ドローン攻撃を誘っているようなものだ。平昌五輪の開会式だけ見てもドローンの脅威はわかる。東京五輪を前に早急な法整備が望まれる。

(防衛アナリスト 部谷 直亮 写真=時事通信フォト)

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