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ビジネスのパフォーマンスを最大化する「ご機嫌力」の正体

辻 秀一 , Official Columnist

marino bocelli / Shutterstock.com

ビジネスでもスポーツでも求められるものは目標達成、すなわち結果である。結果はもちろん多因子かつ他因子だが、その中でも最もコントロール可能な因子こそ、個人や組織・チームのパフォーマンスそのものだ。

さて、このパフォーマンスの構成要素は一体何なのか?そう問われれば、どう答えるだろう。スポーツの世界ではこうだ。パフォーマンスはたった2つの要素、つまり内容と質で構成されているのだと。

パフォーマンスとは、何を、どんな心の状態でやるのか。心の状態はあらゆる瞬間、すべての人のパフォーマンスの質を決定している。ところが、「何を」の部分、つまり内容や戦略には興味があるが、その「質」までを責任をもって揃えようとしている人は少ない。そのような考えのもとに生じるパフォーマンスレベルでは、スポーツの世界においては間違いなく勝てないだろう。

平昌オリンピックで、見事金メダルを獲得した羽生結弦選手も小平奈緒選手も、トレーニングの質を重んじて結果を手に入れている。ハッピープロジェクトなるスローガンで、箱根駅伝を4連覇した青学はなぜ強いのか、それはすべての人や選手に平等に与えられている時間とは別に、質の差で勝負しているからである。だからこそ、質を決定する心の状態を重んじているのだ。平昌で金メダルに輝いた上述の2名も、個別にスポーツ心理学のメンタルトレーナーをつけて心のトレーニングに熱心に取り組んでいると聞く。

これはスポーツだけでなく、ビジネスの世界でも同様のことが言える。結局は人の営みである以上、仕事にも質があり、心の状態が関与する。それにも関わらず、多くのビジネスシーンでは質はないがしろにされ「とにかく頑張る」だけ。日本のビジネス界は、量勝負でこれまで突っ走ってきてしまったのだ。

それでは当然パフォーマンスの質は低くなり、結果を得られないばかりか、イノベーションもクリエイティビティも育まれることはなく、時代の進歩についていけない企業が増え始めている。グーグルをはじめ世界のトップ企業が心を整えるためマインドフルネスのトレーニングなどを導入しているのは、そういうわけである。

スポーツドクターとして、様々なアスリートや企業の経営者・ビジネスマンのトレーニングをしている私は、パフォーマンスの質の高い状態を「機嫌がよい」と言語化し、現場にわかりやすく伝えている。アメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイ博士が提唱する「フロー状態」を、もっと現場に即し日本流にアレンジした表現だ。

ビジネスもスポ―ツも、するべきことを機嫌よく実行すべきである。機嫌の悪い状態は心が揺らぎ、とらわれ、パフォーマンスの質は確実に下がる。私は、自分の機嫌を自分で取る「ご機嫌力」を「ライフスキル」と呼称している。それは、応用スポーツ心理学では心のセルフマネジメント力、すなわち社会的心理スキルと言われ、生き抜くために大切な能力だとされている。面倒なものから逃げて楽(らく)を装うのではなく、すべきことに向き合い、自身の心をセルフマネジメントとする自己責任能力である。スポーツだけでなく、ビジネスの世界でもこれから必要とされていくのは、ライフスキルのような「非認知的能力」だ。

では「ご機嫌力」、つまり「ライフスキル」はいかにして磨かれるのか。まず大切なことは、「機嫌がよいことの価値を考える」思考習慣を持つことである。

通常の認知脳は、機嫌が悪いことの理由を考え、分析し、解決していこうとする習性がある。その習性によって、心にはストレスが生み出されるわけだが、一方で自分で自分の機嫌を取れる人は、「機嫌がよいことの価値を考える」という脳の思考スキルを持つ。

機嫌が悪いよりも、機嫌がよい方がアイディアが出やすくなる、人にやさしくなる、視野が広がる、風邪をひきにくくなる、目覚めがよくなる、切り替えが早くなる、人間関係がよくなる、変革に強くなるなど、常に機嫌よくいることへの価値を思考することに余念がない。自分自身にとって価値化されていない状態がよりよく働くはずもなく、どんどん機嫌のよさは手放されてしまい、不機嫌の海で溺れていくことになる。

認知的脳でするべきことに向き合いながらも、ライフスキル脳で自らの機嫌をマネジメントしながら質高く生きて仕事をする。これこそ、いまの時代を生き抜くためのビジネススキルの1つなのである。

次回以降は、実際の事例を交えながら「機嫌がよいこと」の重要性と、それをマネジメントするためのライフスキルについて述べていく。

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