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安倍政権と急速に距離置く公明党(佐藤甲一)

前回の稿で「安倍一強」が崩れていくきっかけになる「針の音」を聞き逃すな、と書いた。それから1カ月、いま安倍政権は発足以来の苦境に立たされている。

森友学園問題の中で極めて重大な意味を持つのは、3月13日の閣議後会見で飛び出た国土交通省の石井啓一大臣の発言である。石井国交相は、財務省が3月12日に公文書の「書き換え」を認めたのを受け、実は書き換え前の原本のコピーを3月5日の段階で財務省に渡していたことを明らかにした。

財務省は3月8日に、国会に対し現在財務省が保有している文書は「書き換え後」の文書しかないとしていた。だが実際には国土交通省から「改ざん」前の文書を渡されており、財務省が保有している文書と内容を比較すれば「改ざん」が行なわれていたことは確認できたはずだった。

つまり、国会に再びウソの回答をしたことになる。しかも、この文書の存在は安倍晋三首相まで報告されていた。政権ぐるみで隠蔽していたことに他ならない。

この石井発言には伏線がある。自民・公明の幹事長は3月7日午前に会談し、調査報告を急ぐよう官邸の西村康稔官房副長官に異例の申し入れをした。これは国交省が3月5日に原本のコピーを財務省に渡したことを知った上での行動だったと考えられる。

なぜなら石井国交相がそのことを公明党本部に伝えていないわけがなく、また自民党の二階俊博幹事長は国交省の前身である運輸大臣も経験し、同省に強い影響力を持つ政治家の一人。つまり自民・公明の幹部は国交省から財務省に原本のコピーが渡っているのを知った上で、調査結果の開示を求めていたのである。

早期に「書き換え」を認めて国会の正常化を図り、結果として財務省の傷をできるだけ少なくする「助け舟」を出していたのだ。ところが財務省、いや政権はこの「船」に乗ることを拒んだ。そして事態は自殺者まで生み出すことになり、財務省そして政権への不信はさらに加速。公明党からすればせっかく差し伸べた救いの手を払いのけられたわけだ。怒りに任せて、事実をばらすのも当然である。

昨年秋の衆議院選挙で公明党は保有議席を6議席減らす「惨敗」を喫した。同党には「共謀罪」法案などに賛成してきたことで、「平和と福祉」の政党という看板が揺らぎ、有権者の支持を失いつつある、という危機感がある。

「公文書改ざん」の解明に熱心でないというレッテルが貼られれば、公明党存立の危機を迎えかねない。ましてや来年春には統一地方選挙、夏には参議院選挙が予定されている。同党は安倍政権との距離を急速に置きつつあると見ていいだろう。

加えて自民党額賀派改め、竹下派の動向も気がかりである。3月14日の派閥パーティで新会長に就任した竹下亘総務会長は、今年秋の自民党総裁選への対応を聞かれ「政局というのは1、2週間でガラッと変わる。秋の予想なんてできない」と答えている。同派は額賀福志郎前会長のもと、安倍首相の三選支持で固まっていただけに、この発言はそれを白紙に戻したことを意味し、「安倍離れ」の第一歩と読み解くことができる。

加えて竹下氏はこの国会中に安倍首相の求心力に大きな変化が起きる可能性をも示唆している。安倍政権崩壊に向けた「針の音」はそこかしこ、中でも与党という政権の足元で響いているのである。

(さとう こういち・ジャーナリスト。2018年3月23日号)

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