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「行き過ぎたマスコミの政治批判」―常識を弁えない愚かな質問と態度― - 屋山太郎

 政界と新聞・テレビなどのマスコミ界は一様に暗く刺々しくなったのではないか。国会では政府を叩くのが仕事と心得て、答弁者の人格など全く無視して悪態をつく。マスコミも政治的主張を表に出して、常時、書き過ぎの状態だ。有本香氏の調査だと朝日新聞は「この1年1ヵ月間に『昭恵』と書いた社説が40本にも上る」という(月刊HANADA5月号)。

 安倍昭恵氏が“大犯罪”を犯したという事実があるなら、何度書かれても仕方がない。しかし昭恵氏がやったことは小学校開校の口利きである。頼んだ側は刑事訴追を受けているが、昭恵氏が訴追されたわけでもない。朝日新聞の“社是”は「安倍潰し」だと言われているが、この昭恵叩きは社是に従って行っているのか。

 先月、参院の財政金融委員会で、麻生太郎財務相がTPPの重要性について述べたあと「みんな、森友(学園)の方がTPPより重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」と述べて袋叩きにあったが、私は麻生説に全く同感だ。世の中の流れが森友だからといって、「それはおかしい」と異を唱えた人を叩くのは、やり過ぎだ。異論が出なくなったら民主主義は終わりだ。日本人は今の中国のような言論空間で生きたいと思ってはいない。

 佐藤内閣当時、椎名悦三郎外相が社会党議員の質問に「米国は日本の番犬のようなものです」と答弁した。当時の政府は何から何まで米国頼みだった。かねてその姿勢に怒っていた議員が「米国を番犬呼ばわりするのは同盟国に失礼ではないか」と突っ込んだところ、再び答弁席に戻った椎名氏は「失礼しました。“番犬様”であります」と答弁。満場大爆笑となって質疑終わり。怒った相手も笑い出すほどのユーモアを最近聞いたことがない。

 菅官房長官の記者会見に出席して多くの政治記者を泣かせて有名なのが、東京新聞社会部の望月衣塑子記者である。内閣の改造を勝手に想定した人事を示して、骨格人事が「代わらないのではいくら大臣を刷新しても何一つ安倍政権の体制は変わらないのではないか」と突っ込む。これに対し菅長官は「憶測による質問には答えない」とピシャリ。

 望月氏が「フジテレビの報道ではトランプ大統領が戦争する気はないが、核・ICBMを放棄して貰いたい。嫌なら迷わず我慢しないと言っている。政府の見解が聞きたい」と問う。菅長官は「テレビ報道に答える場ではない」と答えたが、政府当局者が首脳会議の内容を洩らすはずがないという常識を弁えていないのだ。「北朝鮮のミサイルは首相が公邸に泊まった翌日、発射されている。今後も情報が入れば泊まることになるのか」という質問に菅長官が答えれば、それは明らかな特定秘密保護法違反になる。望月記者は「権力は悪」という前提でものを言っているが、自らが権力を持った時は悪ではないのか。

(平成30年4月11日付静岡新聞『論壇』より転載)

屋山 太郎(ややま たろう)

1932(昭和7)年、福岡県生れ。東北大学文学部仏文科卒業。時事通信社に入社後、政治部記者、ローマ特派員、官邸クラブキャップ、ジュネーブ特派員、解説委員兼編集委員を歴任。1981年より第二次臨時行政調査会(土光臨調)に参画し、国鉄の分割・民営化を推進した。1987年に退社し、現在政治評論家。「教科書改善の会」(改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会)代表世話人。
著書に『安倍外交で日本は強くなる』『安倍晋三興国論』(海竜社)、『私の喧嘩作法』(新潮社)、『官僚亡国論』(新潮社)、『なぜ中韓になめられるのか』(扶桑社)、『立ち直れるか日本の政治』(海竜社)、『JAL再生の嘘』・『日本人としてこれだけは学んでおきたい政治の授業』(PHP研究所)など多数。

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