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大学合格ランキングの見方


(東京大学駒場キャンパス、著者撮影)

毎年2月から3月にかけて、週刊誌が毎週のように高校別大学合格者数ランキングを掲載します。特に3月10日の東大・京大の合格発表直後には、発売日をずらしてでも速報データを掲載するという気合いの入れよう。それだけ売れるということですし、それだけ日本人は大学合格者数ランキング、特に東大合格者数ランキングが大好きだということです。

今回は大学合格者数ランキングを見るときの注意点を話したいと思うのですが、その前に、なぜ日本人はこれほどまでに東大合格者数を気にするのかについて、軽く触れておきたいと思います。

1877年(明治10年)に原初の東京大学ができました。以来、日本各地から優秀な人物を東大に吸い上げるように全国の学校がネットワーク化され、「優秀な子供は東大に行く」という〝文化〞が日本中に広まりました。どんな子供でも小学校に入ると、一度は東大を頂点とした学校ヒエラルキーの末端にくわえられたのです。それが日本人の無意識に刷り込まれているために、わたしたちはいまでも「東大」を過剰に意識してしまうのでしょう。

さて、東大合格者数には隔年現象というのがあります。現役生がたくさん合格したときには現役・浪人を合わせた合格者数は当然多くなるわけですが、その翌年には浪人生が少ない分、合格者数が減るという現象が、どこの高校でも起こるのです。ですから1年単位で大学合格者数を見て、「勝った」「負けた」といってもあまり意味がありません。何年間か平均で見るべきでしょう。

さらに7年後現象というのもあります。東大合格ランキングの上位の多くは中高一貫校で占められていますが、東大合格者数が多かった中高一貫校の翌年の入試は倍率が上がったり、優秀な受験生が増えたりして、偏差値が上がります。入試が難関化するのです。すると彼らが大学を受験する7年後には、また東大の合格者数が増えるという現象が起きるのです。逆もあります。東大合格者数が著しく減った7年後には、やっぱり東大合格者数が減るということがあります。

今年の東大合格者数ランキングは上位から、開成、筑波大学附属駒場、麻布、灘、栄光学園と続きます。東大のランキングが注目されやすいので、これらの学校が日本のトップ進学校として全国区の知名度を得ているわけですが、東大は東京にあるので、首都圏の高校がランキングの上位に来るのは当然です。

最近は東大一辺倒の価値観にも変化が見られます。もともと関西では「近くに京大があるのになぜわざわざ東大に行くのか」という価値観がありますし、iPS細胞の山中教授の活躍や、ゴリラの研究者として有名な山極総長の就任もあって、京大の人気が高まっています。さらに、昨今は東大よりも医学部という選択も増えています。東大という大学ブランド名よりも、医師免許という資格を取ったほうが、将来食いっぱぐれる心配がないだろうという価値観です。

実際、京大や国公立大医学部の入学に必要とされる偏差値の目安は、東大のそれとほとんど遜色がありません。東大合格者数だけでは、学力最上位層の合格実績の一部にしか過ぎないというわけです。ちなみに、私立大学は1人で複数合格を取れてしまうので、ダブりが多く、合格者数を単純に合計してランキングするのには向きません。

そこで、各種進学情報を扱う大学通信という会社の協力を得て、2013年から2017年の5年間の平均で、東大・京大・国公立大医学部医学科に何人合格しているのかをランキングにしてみました。2018年の最新データは含められていないのですが。すると、普段見慣れている東大合格者数ランキングとは違う学校が上位に躍り出ました。

1位は開成、2位は灘。そこまでは東大ランキングの上位常連です。しかしその下からが違います。3位は愛知県の私立東海。国公立大医学部医学科に平均108人もの合格者を出しているのです。4位が洛南。京大ランキングで上位にある京都の私立高校です。5位が奈良の私立東大寺でした。東京ではあまり知られていないけれど、実はすごい進学校というのがたくさんあるのです。必ずしも東京の私立中高一貫校が最強というわけではありません。

公立高校だけのランキングも作成してみました。3位は熊本の熊本高校ともう1校どこだと思いますか?ヒントは、先日の春の選抜高校野球にも出場した滋賀県の読み方が難しい県立高校です。そう、膳所高校です。2位は大阪の北野高校。1位はどこだと思いますか? 公立高校東大1位の日比谷高校も東大・京大・国公立大医学部総合ランキングではなんと10位でした。正解は愛知県の旭丘高校。

ただし、週刊誌を見ても、個別の大学のランキングばかりで、こういうランキングは見ることができません。実は、このランキングの続きは、4月13日発売の拙著『地方公立名門校』に50位まで掲載されていますので、立ち読みだけでもいいので見てみてください。新たな発見があると思います。

※2018年4月12日JFN「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容を書き起こしています。

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