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加計「首相案件」よりも防衛省日報が問題……絶対平和主義の現実と文民統制

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 財務省による森友学園の文書改ざん、なかったはずの防衛省の日報や加計学園に関する「首相案件」と記した愛媛県の文書が見つかるなど数々の文書問題により、安倍政権に厳しい目が向けられています。
 
 建築家で文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋さんは中でも、防衛省の日報問題は、一政権の話にとどまらない日本の構造的問題と指摘します。この混乱の事態で今、何を考えるべきなのでしょうか。

森友文書問題の根幹は何か…ズサンなデータ管理、情報肥大と日本の中枢劣化

「首相案件」の備忘録より「戦闘地域」の日報

参院決算委員会で陸上自衛隊のイラク派遣時の日報が見つかった問題について安倍首相は陳謝。写真は答弁するため挙手する安倍晋三首相(手前)と小野寺五典防衛相=2018年4月9日(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 南スーダンPKOに続いてイラク派遣における自衛隊の「日報」のあるなしが問題となった。

 今は、森友問題に続いて加計問題も新展開があり、「首相案件」のメモ(備忘録)のあるなしが問題となっている。さかのぼって、財務省の公文書改ざん、厚生労働省のデータのズサンさ、文部科学省のメモのあるなしなど、官僚組織の文書・データの扱いは、前回書いたように日本社会の「中枢劣化」を感じさせる。

 これらを安倍政権の問題とする批判は多いが、自衛隊の「日報」は、一政権の問題を超えて、平和日本の構造的な問題を浮かび上がらせているのではないか。

 防衛省における文書(日報)の扱いは、自衛隊(軍)の「文民統制=シビリアン・コントロール」に関わり安全保障の根幹に触れる。当然ながら、国会、行政、報道における各氏の意見は、今後、組織として文書管理を徹底させるべきであるという結論となる。

 確かにそうなのだろう。

 しかしここでは少し異なる視点、すなわち現代日本における現場の力学とその管理システムの関係から、この「文民統制の現実」を文化論的に考えてみたい。

戦闘地域

 発端は、あるジャーナリストによる日報の情報公開請求であった。

 現場から上がってくる「日報」は、その地域における戦闘的な状況を伝えていたので、防衛省はこれを公開できなかった。憲法の制約もあって従来「自衛隊の派遣地域は戦闘状態にない」としてきたからである。しかし現場は、そのような国内政治にお構いなく、実情を正確に伝える日報を上げてくる。これは正しいことである。

 つまり問題の本質は、憲法の制約下における政治的タテマエと、自衛隊派遣現場の厳しい実態との乖離にあるのだ。

 しかし野党とマスコミの追求は、防衛省の対応の拙劣さに集中し、戦闘地域か否かという問題はどこかへ行ってしまった感がある。

文民統制の根本

 クローズアップされるのは、文民統制(シビリアン・コントロール)である。

 今の自衛隊は、組織も予算も拡大し、行動も自由になる(アメリカの要請による範囲で)なかで、国民のあいだに、果たして文民統制はしっかりと確保されているのか、という疑問が起きるのは当然である。旧日本軍、特に関東軍の独走によって、満洲事変、日中戦争、太平洋戦争と、泥沼に引きずり込まれたトラウマがあるからだ。文書管理をしっかりさせろという声が強くになるのもうなずける。

 しかし筆者は、果たして書類管理の徹底で、文民統制ができるのだろうかという疑問をもっている。

 むしろ逆に、詳細精密な管理システムでガンジガラメにすることが、常に微妙に揺れ動く現場の力学との乖離と齟齬を生み、やがて大きな問題を招くことになるのではないかという危惧を抱いている。

 本来は、背広組も現場の力学を知るべきであり、制服組も一般国民に対するコミュニケーション力をもつべきであり、その相互理解の中で、作戦が立てられ、議論され、最終的には文民たる総理と国会の決断をまつのが、シビリアン・コントロールではないか。

 戦前、文民統制が不可能だったのは天皇の統帥権の問題が大きい(司馬遼太郎はそう考えていた)。家族的な情緒同一性が、神がかり的な精神主義に陥りやすい国民でもあった。文化というものだ。

 戦後、絶対平和のタテマエが続く中で、背広組にも制服組にも、非常時における対応能力と管理能力が育っていない。すべての政治、行政、教育、研究、報道が、戦争や戦闘を前提とすることなく、前提があったとしても米軍の指揮下で動く以外に選択肢がなかったからである。その意味で、現在の日本における文民統制の最大の問題点は、絶対平和主義と、米軍との関係にあるといわざるをえないのだ。

スペシャリストとジェネラリスト

 筆者の友人は技術屋だらけである。高度成長期に「ものづくり技術」の現場すなわち工場なり工事所なり研究所なりではたらき、多少なりとも世界一の技術立国に貢献し、今は引退している者が多い。そうした連中との会話は、いかに企業の管理部門が現場を知らないか、今のマスコミが専門技術に関してマトハズレなことを伝えているか、という話題になりがちだ。

 特に日本は、大学入試のときから、文系と理系にハッキリと分かれ、中国の科挙の制度の影響もあって旧帝国大学法学部や旧高等文官試験の力が残っている。江戸時代的にいえば、文系のエリートが士で、専門職は農工商といった感覚だ。ものづくりによる経済の復興と成長に頼った戦後は理系ブームが続いたが、いつのまにか元に戻ってしまった。

 この溝を埋めるには、スペシャリストがジェネラルなスキルを、ジェネラリストがスペシャルな知識を養う必要がある。自衛隊の制服組と背広組のあいだにも、同じことがいえるのではないか。

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