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民主主義と日本の危機 ~民主主義の構造的危機について考える~

森友問題で、永田町が、霞が関が、そして日本が揺れている。 
決裁文書の改ざんは論外だし、過度の忖度その他で、本来の手続きが歪められることはもちろん大問題である。 
  
しかし、正直な気持ちを言えば、この問題をここまでトコトン国会で議論する暇があったら、予算案の中身、北朝鮮への対応、働き方改革のあり方などについて、より突っ込んだ議論をした方がよほどマシだ、とも思う。本件は、必要な処分を粛々と進め、取りうる技術面や運用面での改善をするしかない。 
  
民間企業でもそうだが、組織人による上司への「忖度」(そんたく)を壊滅することは不可能だ。忖度で粉飾まがいの数字を作ったり、事実を隠ぺいしたりして、多くの企業が世間で叩かれているが、淡々と処分をして改善策を練るしかない。忖度やそれに伴う不正を未来永劫なくすことは無理であろう。 
  
更に言えば、「忖度」には、当然ながら良い面もある。上司の意向を自ら考えながら(=忖度)、自発的に動くことで、組織が有機的に機能したり、統一性をもって運営されたりする。 
  
官僚が官邸の顔色を伺うのを止めさせようと、せっかく出来たばかりの「内閣人事局」(各省の審議官級以上の人事を実体的に内閣に一元化させることで、省益争い・縦割りの弊害を取り除こうという仕組み)を廃止すべきだとの議論もあるようだが、それこそ論外だ。 
  
「角を矯(た)めて牛を殺す」(欠点を直そうとして却って全体をダメにする)とは、まさにこのことで、そんなことをしたら、また、TPPも、増税延期も、金融緩和も決められない混乱の政府に逆戻りすることは明白だ。 
  
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私が「良識ある人」と思う方の多くは、ほぼ上記の見解を共有しているのだが、では、それでもなぜ、世の中・国会では、何よりも森友の議論に熱狂し、議論が煮詰まる中で迷走し、人事局を廃止するなどという信じられない話にまで発展するのか。 
  
言うまでもないが、アリストテレスが2300年以上前に既に喝破しているように、民主政は、容易に衆愚政に堕する。即ち、「パンとサーカス」を求める市民の多く、その市民に支えられる国会議員の多くは、1)「パン」が買えないような危機状況(例:リーマンショック時)であればパンを求め、また、腹が多少満たされていれば、2)「サーカス」での興奮(例:郵政解散などの小泉劇場)を求める。この限りにおいては、政策の議論は生じうる。 
  
為政者は、当然ながら、「パンが買えない」経済危機は歓迎しないので、国民の政治への関心をつなぎとめるべく、「サーカス」に走ろうとする。ただ厄介なことに、政治におけるサーカスとは、即ち「VS構造」「二項対立」だ。郵政民営化にしても、TPP参画にしても、憲法改正にしても、それらを旗印とした選挙(=現代の戦争)においても、敵を作り、排除しようとするところに「サーカス」・「劇場」が生まれる。 
  
VS構造の敵方は、昔であれば、負けたら文字通り殺されて終わりだが、最近は、物理的には生きながらえる。恨みを貯め、逆襲の機会をうかがう。当然ながら、最も効果的な逆襲・カウンターパンチが「スキャンダル」だ。むろん、「上げて、落として2度美味しい」という法則のメディアも、登りつめた有力者のスキャンダルに便乗して視聴率を稼ぐ誘惑からは逃れられない。 
  
2012年12月からの復活後の安倍政権も5年を経過し、TPP、増税延期、憲法改正などの様々な政策マターや数々の選挙で、自民党の内外に多くの敵を作ってきた。前二者は既にある程度決着がついているが、憲法改正はこれからだ。改正反対論者は、「これは最後の闘い」と思っていても不思議はない。更には、領土問題その他の張り合いの中で、また、近隣国が強くなることを喜ばない人間の性(さが)から、周辺国も基本的に安倍一強を好まない。 
  
聞くところでは、最近の中国では、トップニュースが、しれっと憲法改正をして国家主席の任期を撤廃するなどした全人代(全国人民代表大会。国会に相当。20日に閉幕)で、その次のニュースが森友問題に揺れる日本の報道だったことがしばしばあったようだ。 
  
いずれにせよ、スキャンダルで安倍政権をつぶしたいと思っている勢力には事欠かないのが現在の状況であると言えよう。先述の中国以外にも、次々に周囲をイエスマンで固めるトランプ政権、18日の選挙で圧勝して約四半世紀にわたる支配を固めたプーチン大統領、圧倒的独裁の北朝鮮の金政権、政敵の元大統領を逮捕し権力掌握を進める韓国の文政権などと対峙しなければならない中、我が国は、「決裁文書の細かな改ざんの指示を誰がしたか」くらいで政権の土台が揺れる。 
  
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上記のような民主主義の構造的な危機の中で、政権はメディアへの反撃とばかりに、放送事業への新規参入を企図してか(将来的な電波オークションなども視野?)、放送法の改正を検討している模様だ。 
  
新興メディアのブライトバートが、極端なトランプ支持をして、同氏の大統領選での勝利をサポートしたことはアメリカでは有名な話だが、放送法改正の帰結として、そんな状況が日本で生まれる可能性もゼロではない。 
  
ただ、このようなカウンターパンチ的な動きだけでは、民主主義の危機は、ますます変な形で深まってしまうだけであろう。分極化著しい米国がその証左だ。なかなか難しいところではあるが、ここは、スキャンダル至上主義者がどう騒ごうとも、国民がそれにどう踊らされようとも、粛々と将来の国民、日本という社会の健全な発展に向けて、予算の中身や各種制度のあり方を真剣に議論し続ける国会及び国会議員に解決策を求めるしかないのではないだろうか。 
  
紙幅も尽きたので詳述はしないが、真に重要な議論がなされるような国会改革、行政をチェックするだけではない議会(提案型の議員・政党)の興隆を各地で促すべく、議員や政党を政策面でサポートする弊社のようなシンクタンクが益々頑張らねばと、早くも散りゆく早咲きの桜を見ながら、強く思う。

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